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世間で注目を集める「モキュメンタリー」。フェイクドキュメンタリーとも呼ばれるように、リアルとフェイクの境界線を巧みに操り生まれた作品には独特の魅力と説得力がある。
作家の背筋さんに、その奥深さと、「物語」のこれからを聞いた。
「得体の知れなさ」を残したい
恐怖は日常と地続きがいい
作家になる前から、映画であれば『ノロイ』、小説なら『』などが好きでした。自分の作品でも、モキュメンタリーの手法を使うことがあります。リアリティという面で意識しているのは、物語の世界と読者の日常との接続点をつくること。怪談の舞台に多い旧日本家屋にも確かに不気味さがありますが、現代の読者の生活からは少し距離がある。では、単身者用のワンルームマンションだとどうでしょう。実体験と結びつきやすくなるはずです。自分の記憶や感覚と重なったときにこそ、物語は生々しさを帯び、怖さが増す。他にも、人物や場所のディテールの描写もリアリティに欠かせません。

例えば、今インタビューを行っているこの部屋の向かいのビルの一室から、知らない人が手を振っているとします。それだけだと、そこまで怖さはない。でも、「銀座にある築50年のビルの11階の会議室で取材を受けている。すると、大通りを挟んだ向かいのオフィスビルの10階の部屋から、知らない誰かが手を振ってきた」と書くと、状況の異常さが際立ってくる。一方で、怪異そのものはクリアにしすぎないようにしています。今の例でも「40代後半のスーツを着た男性が手を振っている」と書いてしまうと、途端に怖さが減ってしまう。恐怖には「得体の知れなさ」が必須。没入させるための精緻な描写と、あえてカメラのピントをぼかすように、わからないままにしておくこと。モキュメンタリーの形式ではなおさらそのバランスが重要になると考えます。こうして言葉にすると、計算ずくで書いているかのようですが、作中のすべてに意味を持たせているわけではありません。コンビニで明太子のおにぎりを選ぶときに、強い意志がある人は少ないですよね。無意識の選択や、説明しきれない行為の積み重ねが、人間らしさをつくっている。作中にも特に理由もない、展開とも直接関わらないような描写が入っているほうが、リアリティにつながる。その対比に「怖い」を感じてもらえるとうれしいです。
背筋さんの作品
『口に関するアンケート』

とある心霊スポットを巡る証言をたどっていくホラー小説。実写映画版も現在公開中。¥605/ポプラ社
『目が』

『口に関するアンケート』に続く、手のひらサイズホラー最新作。¥715/ポプラ社
Photos:Haruto Inomata Interview&Text:Sho Iwata[Sea LLC.]

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