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世間で注目を集める「モキュメンタリー」。フェイクドキュメンタリーとも呼ばれるように、リアルとフェイクの境界線を巧みに操り生まれた作品には独特の魅力と説得力がある。
テレビ東京プロデューサーの大森時生さんに、その奥深さと、「物語」のこれからを聞いた。
みんなもう騙されたくない

物語として面白いものをつくる
モキュメンタリーの盛り上がりを考えたとき、間違いなく雨穴さんと背筋さんの存在が大きかったと思います。お二人の作品が爆発的にヒットしたことで多くの人に届いた。ただ、そこにつけ加えるならば、「オモコロ」というウェブメディアの存在もめちゃめちゃ大きかったと個人的には思っていて。というのも、雨穴さんが『変な家』を最初に発表したのは「オモコロ」で、ナンセンスギャグ的なコンテンツが多い「オモコロ」の中でめちゃめちゃ綿密なミステリーがアップされて、しかもそれがめちゃめちゃウェルメイドで面白かった。ハイパークオリティなモキュメンタリー作品を無料で多くの人が目にすることができたという点で、「オモコロ」の果たした役割は相当大きかったと思います。
僕がいわゆるモキュメンタリーとして最初に手がけたのは『Aマッソのがんばれ奥様ッソ!』(BSテレビ東京/2021年)になります。ただ、当時は僕の中でモキュメンタリーをつくろうという意識はなくて、バラエティかと思ったらバラエティじゃなかったという、ある種の騙し討ち的な構造がウケると思ってやったのがたまたまモキュメンタリーだったという感じです。
確かにフィクションを描くひとつの表現手法としてモキュメンタリーは面白いと思うのですが、騙し討ち的な構造でやることには正直限界を感じていて、逆に言うと、モキュメンタリーの手法を使っただけで、ちゃんとストーリーとしての面白さがないと相手にされない時代になっているなというのは最近特に感じています。

今はフェイクニュースとかAI映像があふれ返っているから、みんなもう騙されたくないんでしょうね。例えば、動物映像とかでかわいいなと思っても、全然フェイクということがめちゃめちゃある。2分見続けた動物映像がフェイクだったことがわかった瞬間のイヤさって、けっこうすごいじゃないですか。日々フェイクなものに触れているから、フィクションと明示されたものだったら楽しめるけど、ドキュメンタリーだと思っていたら実はフェイクでした、というものは僕の感覚としてはどんどん受け入れられなくなってきているなと思います。
なので、『TXQ FICTION』シリーズを始めるときも、タイトルにフィクションと入れることにしましたし、ちゃんと物語として面白いものをつくることを大前提にしています。これまでに5シリーズつくってきて、最新作の『神木隆之介』では神木さんが出てきて、神木さん本人の役をやっているというトリッキーな設定に挑戦しました。ちょっと専門的な話をすると、リアルとフェイクをぼかすやり方にレイヤーを増やして複雑化するというのがあって、『神木隆之介』はモキュメンタリーの世界とそれを見ている外側の世界を基本構造としたうえで、最後のシーンでさらに外側の世界が出てくるというつくりにして、本当の出来事に見えるようにしています。
他の例で言うと、バラエティ番組とかでよく芸能人がエピソードトークを繰り広げるといったものがありますが、そこで披露される話はそれこそ仲間内ではできていることがゴールデン番組に行くとウケないみたいな、裏側の部分をメタ視点から語るという構造のものが多いんですね。べつにそういったところで話されていることがウソだとは思いません。だけど、バラエティである以上、盛ったエピソードトークもあるわけで、それがメタ視点になった瞬間、妙に真実味をもって伝わる。レイヤーの外側であればあるほど本当に見えるんです。とはいえ、レイヤーを複雑にするのは、モキュメンタリーをあまり見たことがない人にとっては難しいつくりになるので、そこは絶賛悩み中です。
今のモキュメンタリーは、ちっちゃな疑問やちっちゃな怖いことが起こって、それを掘っていくという展開の話が多いような気がしています。今後は例えば戦争をテーマにするとか、裁判をテーマにするとか、大きな物語を中心に据えたモキュメンタリーがウケるんじゃないかなと思っています。あくまでも僕の勝手な意見ですが、そういったものをつくっていけたらいいですね。
『TXQ FICTION』
シリーズ作品
『イシナガキクエを探しています』

©テレビ東京
2024年よりスタートした『TXQ FICTION』シリーズの第1弾。失踪した女性「イシナガキクエ」を探し続けていた高齢男性の遺志を継いで制作された公開捜査番組という設定。
『神木隆之介』

©テレビ東京
『TXQ FICTION』シリーズ最新作。神木隆之介が本人役で出演し、自身が開催したイベントで流した映像をきっかけに、10歳で姿を消した子役の“てるちゃん”を追う。
Photos:Haruto Inomata Interview&Text:Masayuki Sawada

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