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『第四境界』総監督の藤澤 仁さんに聞く、「モキュメンタリー」の奥深さとこれから。

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世間で注目を集める「モキュメンタリー」。フェイクドキュメンタリーとも呼ばれるように、リアルとフェイクの境界線を巧みに操り生まれた作品には独特の魅力と説得力がある。

『第四境界』総監督の藤澤 仁さんに、その奥深さと、「物語」のこれからを聞いた。

  

「物語に入る」のではなく
「物語がこちら側へやってくる」

『第四境界』総監督

藤澤 仁 さん

ゲームクリエイター/脚本家。1997年より『ドラゴンクエスト』シリーズのシナリオ制作に参加し、『VIII』から『X』ではディレクターを務める。2018年に物語制作会社ストーリーノートを設立し、2024年にはARGブランド『第四境界』を立ち上げる。現在は総監督として、『人の財布』など日常と物語の境界を揺さぶるARG作品を多数手がけている。

 

「ARG」とモキュメンタリー

『第四境界』総監督の藤澤 仁さん 1

アニメや映画では、私たちが物語の中に入っていきますよね。一方ARGはその逆で、物語のほうを私たちの世界に連れてくる。いわば、物語を現実世界に擬態させるような表現です。そこでは、作品の舞台は画面や本の中だけにとどまりません。WEBサイトやSNS、メール、電話、実在する場所など、私たちが普段使っているメディアや日常の風景そのものが、物語の入り口になっていきます。自分は長いことゲーム業界に携わってきましたが、昔からゲームの世界では、「リアルだね」という言葉が褒め言葉として使われてきました。キャラクターの動きや世界のつくり込みなど、いかにリアリティを追求するかが、ゲーム制作における大きな目標のひとつだったわけです。対して、ARGにおいて私たちが重視しているのは、リアリティよりも「ビリーバビリティ」です。つまり、信ぴょう性の有無。ゲーム内で起きている出来事を、参加者が現実世界に起きていることのように感じられるかどうかです。参加者の現実と仮想の境界を曖昧にし、どこか足もとがふわふわするような感覚を味わってもらうのが、ARGのめざすユーザー体験だと思っています。その意味で、モキュメンタリーとARGは非常に相性のいい表現です。『第四境界』でも、映画『近畿地方のある場所について』とのコラボレーションなどを通して、モキュメンタリー的な信ぴょう性とARGならではの参加体験を接続する試みを行ってきました。

「ARG」とは?

Alternate Reality Game(代替現実ゲーム)の略で、現実世界そのものを舞台にした参加型のゲームのこと。映画や小説のように一方的に観賞するのではなく、参加者がWEBサイト、SNS、メール、電話、実在する場所やもの、映像などに散らばった手がかりを探しながら、物語の真相に近づいていく。『第四境界』は、ARGの手法を用いて、数々のヒット作を生み出してきたクリエイター集団。

 

『人の財布』の成功

あまり知られていませんが、ARGは2000年代頃、欧米で爆発的に広がっていたんです。その火つけ役となったのが、2001年公開のスピルバーグが監督を務めた映画『A.I.』のプロモーションとして制作された『The Beast』です。映画ポスターのスタッフクレジットに記されたある名前を検索することでゲームの世界へと入り込み、やがて映画の物語へと接続していくという仕掛けでした。そこからARGはプロモーション手法として注目されていきましたが、多くはマネタイズがうまくいかず、徐々に勢いを失っていきました。実際、私たちの最初の作品である『Project:;COLD』も、ありがたいことに多くの方々にプレーしていただけた一方で、収益化はできなかったんです。その悔しさから、どうにかARGをマネタイズできないかと考え、2024年にリリースしたのが『人の財布』。他人の財布をオンラインで購入し、それが実際に自宅へ届くところからゲームが始まる。お金を払うという行為そのものを物語の内側に組み込むことで、収益化への活路を見いだしました。面白い仕掛けをつくるだけではなく、その表現を続けていくための仕組みまで設計することが、私たちにとって大きなテーマ。ARGをマネタイズし、持続可能性のあるモデルとして継続している世界最初のチームが、『第四境界』だと考えています。

 


創作には越えるべきじゃないカベがある

PC面に映る『第四境界』総監督の藤澤 仁さん

ARGには、越えてはいけない壁があると思っています。私はそれを「第5のカベ」と呼んでいます。これは造語ですが、もとは演劇用語の「第4のカベ」から着想を得たものです。第4のカベとは、ステージ上で展開される物語の世界と現実世界を隔てる、客席側にある見えない壁のこと。演者が観客に語りかけるような行為を「第4のカベを破る」と言いますが、ゲームに置き換えると、ARGはまさにその壁を越え、物語を現実へと侵入させる表現だと言えます。ただし、現実と虚構の境界を揺さぶる面白さの裏には、参加者に不安や不快感を与えてしまう危うさも同時に存在します。その境目が、第5のカベです。以前『Project:;COLD』で、SNS上にゲーム内の登場人物の訃報を流す仕掛けを行った際、一部から不謹慎だという声をいただきました。私たちはあくまで物語内の出来事として設計していたのですが、受け取られ方は必ずしもそうではなかった。第5のカベは、時代の空気や社会の受け止め方によって変化していくため、見極めるのが非常に難しい。けれど、人の不安をあおってしまっては、炎上狙いのフェイクニュースと変わらなくなってしまいます。私たちは、あくまで人を楽しませるために物語をつくっている。その前提だけは絶対に忘れてはいけないと思っています。

 

『人の財布』

『人の財布』

レシートやカードなど、財布の中に残された痕跡を手がかりに、持ち主の人生や背景にある物語を読み解いていくARG。

 


『幽拐エレベーター』

『幽拐エレベーター』

呪われたエレベーターに閉じ込められた少女・橘つむぎとメッセージアプリでやりとりをしながら、彼女の救出をめざすチャット型ARG。

 

Photos:Haruto Inomata Interview&Text:Sho Iwata[Sea LLC.]

  

メンズノンノ編集部

メンズノンノ編集部

集英社の男性ファッション誌『メンズノンノ』の公式サイト。20代の男性に向けて最新のファッション、美容、ライフスタイル、カルチャー情報などを毎日お届けします。

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