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マンガ『あかね噺』の監修を務める落語家の林家木久彦さんに、落語の基礎知識や初心者にオススメの演目を教えてもらいました。
PROFILE
Q 落語ってどんな噺をしているの?
A ざっくり分けるのなら、滑稽噺(コメディ)、人情噺(ヒューマンドラマ)、廓噺という吉原など遊郭を舞台とするお話、そして夏場にぞくっとする怪談噺の4つに分類することができます。古典落語と言われているものの多くは、江戸の終わりから明治の初めに作られたものが多いのですが、古くさくて理解できない話というわけではありません。昔も今も変わらない人間の行いを描いているので、予備知識がなくても大丈夫です。
Q 伝統芸能というだけでハードルが高い気が。初心者でも楽しめる?
A 落語家が着物を着ているということもあり、日常と遠く感じるかもしれませんが、問題なく楽しめます。歌舞伎や狂言などと異なり、現代語に近い言葉で話しているので、初めて聴いた人も大枠を理解しやすいんです。コントをひとりでやっているような感じと思ってもらうとラクな気持ちで観られるかもしれません。

Q 映画やドラマ、アニメなどでは体験できない落語にしかない魅力とは?
A 映画やドラマ、アニメなどでは通常一人一役、多くても二役くらいを演じるのが普通ですが、落語ではひとりで何人もの役を演じます。声色を大きく変えるわけではなく、音の高低・強弱・抑揚を操り、語り口のニュアンスで演じ分けるのも落語ならではの特徴。例えば、僕がお内儀さんのセリフを言うときは、女性っぽい声色をつくって出すのではなく、僕のフィルターを通してお内儀さんがどう見えているかを表現することで、お内儀さんの雰囲気を出すんです。お客様それぞれに自分の頭の中でイメージを想像しながら聴いていただけるのも映像作品にはない楽しみですよね。
Q 落語はどこで観ることができるの?
A 寄席が行われている演芸場、ホール、喫茶店など、様々な場所で観ることができますが、個人的には演芸場で観ることをおすすめします。落語を中心に漫才、講談、浪曲、マジック、奇術などの大衆演劇を観ることができる場所でひとりの持ち時間は10〜15分くらい。フェスのような感覚で楽しめるので、お気に入りを見つけるのにうってつけです。ホールでの落語は、独演会や二人会など少数精鋭でやることが多いので、お目当ての落語家さんの噺をたっぷり聴きたい方にオススメです。そして意外と多く行われているのが喫茶店や蕎麦屋、ギャラリーなど小規模な会場での落語。都内だけでも月800公演ほど行われています!

Q 寄席は、昼の部と夜の部に分かれていますが、両方観ると料金が違うの?
A 客出しのない新宿末廣亭と浅草演芸ホールは、昼の部に入れば、そのまま夜の部まで滞在できます。演目の合間であれば途中の出入りも自由で、お目当ての演目だけを観に行く、といった楽しみ方も可能。チケットは当日券のみで、前売り券の販売はありません。人気の落語家が出演する日は長蛇の列ができることもあるため、時間に余裕をもって訪れましょう。演芸場によってシステムも違うので、訪れる前に確認をお忘れなく!
Q 落語を観に行くときのマナーを教えて。
A 落語は歌舞伎などと違い大衆演芸なので、服装や髪型などは普段どおりで問題ありません。昼間に寄席でスーツ姿の人を見ると、仕事をサボってるのかな?って思ってしまうくらい(笑)。演芸場での座る位置も特に決まりはありません。お茶子さんと呼ばれるスタッフの方が見やすい席に案内してくれるので初めてでも安心です。飲食をしてもOKだし、映画館で映画を観るときのマナーくらいの意識があれば大丈夫かと思います。

Q 寄席の番組表(スケジュール)の見方を教えてください。

A 寄席では、1か月を上席・中席・下席の3つに区切っていて、その期間ごとに演目が変わるのが特徴。番組表には出演者名と芸の種類が登場順に記載されます。番組表に書かれた時刻は、芸人の出演時間を事前に確認しやすくするための目安。時間ごとに起承転結のまとまりがあるわけではないので、どのタイミングから見始めても楽しめます。最後に出てくる人は「主任」と書かれていますが、これはトリを指す言葉。番組表は各演芸場のWEBサイトで確認できるので、目当ての芸人が多く出ている日を選んで訪れてみて。
Q 初心者におすすめの演芸場はありますか?
A おすすめは新宿末廣亭。創業自体は明治30年なのですが、戦火で焼失してしまい、現在の建物は昭和21年に宮大工によって再建されたものです。都内に複数ある演芸場の中で唯一の木造建築で、桟敷席があるのも魅力的。新宿三丁目の飲み屋街の中に、突然タイムスリップしたかのような風情ある建物が現れるのもいいですよね。中に入ればさらに古きよき時代の日本を感じることができます。

『あかね噺』でも大人気。
初心者向けの“やさしい演目”
まんじゅうこわい
飲んで友達をイジるノリに近い(木久彦さん、以下同)

Ⓒ末永裕樹・馬上鷹将/集英社
暇をもてあます長屋の若者たちが嫌いなものや怖いものを言い合う中、それぞれが挙げる怖いものに対して「大したことがない」とうそぶく男がひとり。問い詰められ、「まんじゅう」が怖いと告白した男を怖がらせようと仲間たちは悪だくみを始め......。若手が鍛錬のために演じる「前座噺」のひとつとして知られ、落語家になる前の主人公・あかねも落語カフェで披露。(1巻収録)
初天神
ファミレスのレジ前でおもちゃをねだる子ども、的な

1月25日の初天神の日、男が天満宮に行こうとすると妻から息子も連れていくように頼まれる。あれこれねだられることを見越し、何もねだらないと約束させるが、息子はどうにかして父親に何かを買わせたい。お互いがむちゃな理屈を通そうとする、親子の軽快なやりとりが楽しい一席。あかねが師匠・阿良川志ぐまの独演会で、志ぐまとの思い出をリンクさせ、見事に演じ切った。(14巻収録)
お茶汲み
江戸時代の“夜遊び”の空気をのぞき見るような感覚に

遊郭に行こうと盛り上がるも、遊ぶ金のない若者たち。そこへ、昨夜吉原で大モテだったと自慢する半公が現れる。紫という花魁に悲しい身の上話を語られ、一度は心を動かされたものの、あるきっかけで嘘だと見抜いたという。その話を聞いた熊さんは、今度は自分が紫に同じ手口で身の上話をしようと画策。あかねの芸の幅を広げるきっかけにもなった、『廓噺』に分類される一席。(6巻収録)
お菊の皿
怖い話だけどキャッチーなので入り込みやすい!

怖いもの見たさで、怪談噺「皿屋敷」の舞台である井戸に集まった男たち。夜が更けると、お菊の幽霊が現れ、伝承のとおり「一枚、二枚」と皿を数え始める。恐ろしさに震えつつ、美しさに見とれてしまう一同。お菊の美しさは評判となり、多くの見物客が次々と廃屋敷を訪れて......。若手落語家が芸を競う瑞雲大賞で、あかねのライバル・阿良川ひかるが披露した十八番の一席。(19巻収録)
元犬
設定は童話なのに、世界観は落語の不思議な一席

信心すれば来世には人間に生まれ変われるという話を聞き、蔵前の八幡さまに「現世で人間になりたい」と願う白犬。ある日、念願が叶い人間となった白犬は奉公を始めるものの、犬時代の習性や癖は簡単には抜けない。人間らしく振る舞おうとするほど騒動を巻き起こしていく姿をコミカルに描く。あかねと同じ阿良川一門の阿良川ぜんまいが瑞雲大賞のトップバッターで披露。(19巻収録)
Photos:wacci Hair&Make-up:Yumiko Chugun Composition&Text:Misato Kikuchi
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