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Podcast好きなら知らない人はいない人気番組、『朝井リョウ・加藤千恵 信頼できない語り手』と『ゆる言語学ラジオ』。過去にもPodcast上で対談するなど、親交の深い朝井リョウと水野太貴による特別対談が実現。多弁な2人は、何を語る?
Podcastでしか生まれない、
意外な出会いがある

『朝井リョウ・加藤千恵 信頼できない語り手』
2015年4月から1年間放送されたニッポン放送『朝井リョウ・加藤千恵のオールナイトニッポン0(ZERO)』のコンビがPodcastで復活! 小説家の朝井リョウと歌人・小説家の加藤千恵のユーモアあふれる軽妙なトークが話題に。
しゃべるトピックは、密度が十分に
高まってから出荷しています

『ゆる言語学ラジオ』
第7回「JAPAN PODCAST AWARDS」一般クリエイター部門で大賞を受賞。パーソナリティは水野太貴と堀元見。「springはなぜ春もバネも意味するの?」など、身近な疑問を入り口に、言葉の奥深さに触れられる内容が人気。
予備校講師の語りを
内面化している
(水野)
あんまり決め込んで
いかなくていいかな
(朝井)
『朝井リョウ・加藤千恵 信頼できない語り手』と『ゆる言語学ラジオ』でそれぞれパーソナリティを務める2人。前者は独断と偏見に基づくユーモラスな会話の応酬が、後者はゆるく楽しめて学べる言語学トークが支持され、多くのリスナーを抱える人気番組となっている。果たして2人は、どんな準備をして、何を考えてしゃべっているのだろうか。その語りの魅力の秘密に迫る。

朝井 申し訳ないんですけど、私は特別な準備は何もなしでやっています。台本も毎回ほとんど同じ。第何回という回数が変わっているくらいで。
水野 何分間フリートークみたいなことが書いてあるだけですか?
朝井 スポンサーがついたときは言わなきゃいけない文言が書かれているんですけど、それ以外はタイトルコールとか投稿募集の定型文が書いてあるだけです。私、普段は小説家として推敲した言葉を世の中に出す仕事をしていて、そういうときはできれば何十年も残るものであってほしいと思いつつ文章を磨く作業にいそしんでいるんですね。Podcastはその反動というか、消えていく言葉というとちょっと悲しいかもしれないですけど、消えものとして、あまり決め込んでいかなくてもいいかなと思ってしまっています。
水野 そうなんですね。ちなみに、『信頼できない語り手』で話している言葉を磨いていったら、ちゃんと書き物の言葉になるんですか?
朝井 ならない気がする。全然違う感覚です。私、小説を書いているときは主題について外で話さないようにするタイプで、途中でしゃべってしまうと外気にさらすべきものでないものをさらしちゃう感じがするんです。真空パックで保存すべき食べ物を開封しちゃった、みたいな。
水野 外気にさらすと劣化してしまうという感覚ですか?
朝井 そうです、腐り始める気がするんです。
水野 ゲームクリエイターの桜井政博さんが、アイデアを思いついたときは人に話すなと言っていて。内圧を高めてパンパンになったときに世に出せ、みたいな。
朝井 めっちゃわかる!
水野 僕は、本で書くようなことも『ゆる言語学ラジオ』で部分的にしゃべっちゃうので、全然内圧が高まらないんですけどね。
朝井 いやいや、『ゆる言語学ラジオ』は番組の内圧が高いから! ほかのPodcastに比べるとやっていることの密度がパンパンじゃないですか。
水野 たしかにそれはそうかも。そのときどきで調べていることがパンパンになると『ゆる言語学ラジオ』でしゃべるので。
朝井 ちゃんと世の中に提出できます、という強度のものを高頻度でガンガン放っていますよね。どれくらいストックがあるんですか?
水野 (スマホを見せて)これが『ゆる言語学ラジオ』の台本のネタメモで、今の時点でこれだけありますね。今度収録しようと思っているのが、情報の縄張り理論という話なんですけど、こういう感じでまとめています。
朝井 えっ、これで1回分? 嘘でしょ? すごい量だよ。
水野 これは2回分になります。かなり調べて、内圧がパンパンの状態になっているものですね。こんな感じで、リサーチができて、構成できたらやろうと思っている言語ネタは現状で193あります。
朝井 え⁉
水野 そうやってパンパンになったやつから順番に出荷していく感じです。
朝井 「やばい、今日収録なのに何もない」がないんだ...。
水野 一応、急ごしらえでできるタイプの企画は6~7個ぐらい用意しています。リスナーからの投稿でクイズをするとか、方言を教えてもらうとか、そういうのもあるので、どうしても思いつかないときはそれをやりますね。
朝井 この濃密なネタメモはもうPodcast特集というより仕事術特集とかの域ですよ。
水野 こういうふうにデータベースにするのが昔から好きなんです。僕、国語辞典を頭から最後まで読んだことがあるんですけど、その記録もここに全部入れているんですよ。『新明解国語辞典 第八版』を読んで思ったことのメモとか。
朝井 読書メモの話で国語辞典出てくること、ないですよ。
水野 もともと僕は予備校講師になりたかったんです。しゃべることが好きだったし、予備校講師として人を引きつける話し方みたいなことにも興味があって。学生時代は塾バイトにめちゃくちゃ傾斜して、カリスマ講師といわれる人の授業もひととおり聴きました。
朝井 たしかに超人気講師っていますよね。
水野 はい。Podcastって、このようにめざしていくといいよ、みたいな型がいくつかあると思っていて。そのひとつに予備校講師的な語り方があると思うんです。やっぱり話が面白くないと生徒は聴いてくれないから、人気講師は必然的に人を引きつけることに特化した話し方になる。僕はそれを内面化してやっているところはあります。

朝井 予備校講師の内面化って初めて聞いた。他にはどんなタイプがあるんですか?
水野 落語がありますよね。以前、春とヒコーキのぐんぴぃさんと対談させてもらったとき、落語の語りが理想だとおっしゃっていて。ぐんぴぃさんは、伊集院光さんのラジオがお好きで、伊集院さんも落語がルーツじゃないですか。
朝井 なるほど!
水野 朝井さんはどの型なのかなと考えたんですけど、あてはまるものが思い当たらず...。何か理想としている語りってあるんですか?
朝井 考えたことがないかもしれない。
水野 そうなんですか。でも、朝井さんの話し方って、ある方向性の型にすごくきれいに成形されているようには感じるんですよ。影響を受けた人とかいないんですか?
朝井 あ! 藤井隆さんですね。
水野 ああ、なるほど。
朝井 藤井さんって登場時の期待値がすごくないですか? 次に何をするのか予想できないのに品がある雰囲気が大好きで。『徹子の部屋』にマシュー南(テレビ朝日系で放送された『Best Hit TV』シリーズで藤井隆の親友であるイギリス人のキャラクター)として出演した回が大好きなんです。人生でいちばん観た映像と言っても過言ではない。「トゥールル、トゥルル、トゥールル」と音楽が流れて、そのときに黒柳さんがマシュー南の紹介をするんですけど、藤井さんはずっとカメラ目線で、「ご期待ください」と自信満々に宣言するんですよ。ああいうことをしたい気持ちはすごくあるので、内面化されているとしたら藤井隆さんかも。恐れ多い話ですが。
水野 Podcastをやることの意味や楽しさはどこに感じていますか?
朝井 作家のときは「絶対にこれを守らなきゃいけない」と思っていることとか、「これの優先順位は絶対に落としちゃいけない」と決めていることがあって、でもそれを守り続けていたら到達できない場所があることもわかっているんです。Podcastはそのあたりの約束事が全部なくなる。約束事の多い小説の仕事を気張って続けていくためにも、私にはPodcastのような解放区がときには必要みたいです。
水野 Podcastをやっていることで、本業に何かしらのフィードバックはあったりするんですか?
朝井 ちょっと角が立つ話になっちゃうかもしれませんが、本ってほんとに反応が少ない。特に文芸の単行本は、深い井戸に石を投げているような気持ちになります。一方で、Podcastは配信したらすぐコメントがついたりして、ある程度の反応や刺激がすぐにもらえるから、その刺激を餌にしながら書く仕事に臨んでいるところがあると思います。私の場合、静けさとにぎやかさ、どっちかだけだとダメになるんだと思います。別の種類の仕事として受け止めています。
水野 そうか。職業的な相性は実はよくないのか。
朝井 言葉を使うという意味では相性はいいんでしょうけどね。Podcastをやっていると、反応もあるし、こうやって雑誌の企画に呼んでいただけたりして“何となくうまくいっている感じ”を得られる。私の場合、その間に小説の種はあまり育ってなかったりもする。ずっとアンビバレントな気持ちです。小説をガッツリ書く期間は、Podcastとの両立は厳しいかもしれない。『信頼できない語り手』も最初は期間限定という話で、今は延長状態が続いていますが、今後のことは何とも言えないです。
水野 いやあ、トークも聴きたいけど、本も読みたいから、そこは難しいところですね。
朝井 リスナーも無料で聴いているわけですし、どうなっても許してねって思っているところがあります(笑)。私は今日水野さんにストックが193あると知ってすごくうれしかったです。『ゆる言語学ラジオ』、当分楽しめるぞ〜!
水野太貴のおすすめPodcast
自宅に3か月居候していた(笑)、muroさんの番組。面白くて、今配信されているものはあらかた聴きました。おすすめ回は『主体性のなさがある』(水野)

『のらじお』
人類学研究者・室越龍之介(muro)と学生時代の後輩・かえがする四方山話。
Photos:Karin Noguchi Composition&Text:Masayuki Sawada
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