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作品を目にして、「どうしたらこんなものが生み出せるのだろう」と思ったことはないだろうか。当然だが、どんな異才も、脈絡なく〝今〟があるわけではない。その根っこをたどることで見えてくる、初期衝動=原点とは。
あなたの原点は?


小1で初めてウケたときの高揚感を、
ずっと求めている

「初めてここに立ったのは、養成所の卒業前かな。心の中の天使と悪魔がどっちも法律に詳しい、というネタをやりましたね。結構ウケたんですよ」
ライブスペース『表参道GROUND』にて、そう話すのはこたけ正義感だ。弁護士兼芸人という肩書を生かした芸風で、賞レース「R‒1グランプリ2023」では決勝戦に進出し、2024年に始めたスタンダップコメディショー「弁論」も話題。そんな彼の幼少期をひと言で表すなら、〝負けず嫌い〟だ。
「スポーツが好きで、剣道に始まり、野球やバスケ、陸上もやりました。負けるのが本当に嫌で、剣道の試合で一本取られただけで泣いたことがあるんですよ。ストレート勝ち以外、意味がなかった」
その一方で、得意な勉強は、勝ち負けを意識せずに臨めた。文系・理系問わず、貪欲に学んだ先にたどり着いたのは、弁護士という目標だった。
「8人の司法修習生が主役のドラマ『ビギナー』を観て、カッコいいなと。それに、進学校ならまだしも僕の学校で弁護士をめざす人はほとんどおらず、その中で目立ちたい気持ちもあったかもしれません」

大学進学後は机に向かう日々。特にロースクールへの進学後は、一日の大半を勉強に費やした。
「周囲にしがみつくので精いっぱいでしたから。勉強が得意だったのは、高校の頃までの話。自分に自信はなかったですね。だから、司法試験の結果発表で自分の番号を発見したときは、『うれしい』よりも先に『意味がわからない』と思いました(笑)」
弁護士になるという夢は叶えたが、心に引っかかる思い出があった。それは、小学生の頃に浴びた〝人生最初のウケ〟だ。
「1年生のとき、国語の授業で音読したんです。『クラムボンはかぷかぷ笑ったよ』という一節を、爆笑しながら言うみたいなボケをしたら、めっちゃウケた。アドレナリンが出ましたね」
人を笑わせる快感が、脳に刻み込まれた。高校1年生の頃にはクラスメートと漫才コンビを結成し、スキー合宿の余興で披露。小学校以来2度目の大ウケを獲得するが、芸人の道を選ぼうとは微塵も思わなかった。冷静に自己分析をする自分がいたからだ。
「『内輪ウケだろうな』と思っている自分がいて。テレビで見る芸人へのリスペクトが強すぎたんです。彼らは自分とは違うひと握りの天才だと」
転機が訪れたのは、弁護士になってからだった。自身のエピソードにもたびたび登場する妻が、あるとき、こんなひと言を放ったのだ。
「『そんなにお笑いが好きならやってみたら?』と。それで吹っ切れたんですよね。好きなことなら、やらない理由がないじゃないか。もしダメだったら、そのときは諦めればいいと」

〝ひと握りの天才〟との勝負に勝てるかはわからないが、芸人の道をめざしてみたくなった。吹っ切れた彼は、2017年にワタナベエンターテインメントの養成所に入学。数回のコンビ結成を経て、「ひとりで戦うほうが向いている」と気づいた。卒業後の2019年には、ピン芸人へ転向。ネタ作りの強みになったのが、弁護士としての経験だ。日本の法律のツッコミどころを紹介しながら「ギルティー!(有罪)」と叫ぶ持ちネタを披露した。
「弁護士バッジをつけて、衣装は〝いかにも〟なスタイリングに。僕の経歴をフリにして、最大限変なことをやってみようと思ったんです」
〝面白い〟の解釈は主に「おかしい」と「興味深い」の2つに分けられるが、自身の持ち味である後者の要素を強く打ち出したのが、冒頭でも述べた単独ライブ「弁論」。くすりと笑えるトークとともに、冤罪事件として有名な「袴田事件」の話題もわかりやすく盛り込む。身ひとつで作る、濃密な時間だ。
「落語なんかを見ていると、興味深い話は飽きが来ないことに気づくんです。僕も判例などをテーマにしたネタの内容的に、長尺のほうが自分の強みを生かせるのかなと思って。そういえば学生時代に陸上をやったときも、長距離走が得意でした。身体感覚的に、時間が長いほうが合っているのかな」
チケットが即完売するなど、「弁論」は今や自身のキャリアを代表するコンテンツになった。今年も年末の公演に向けてネタを調整中。「ただの講演会になったら意味がないですよね。どう笑いを取るかを、やっぱり大事にしたい」と意気込む。冷静だ。そしてずっと、笑いに貪欲だ。
「小学生の自分にひと言言うとしたら、ですか? 『そのまま勘違いしててくれ』ですかね。あそこでウケて気持ちよくなれたから、今の僕がいるので」
ジャケット(ヘリル)¥66,000 /にしのや シャツ(トゥモローランド)¥29,700・ネクタイ(エリコ フォルミコラ)¥22,000・靴(ソロヴィエール×トゥモローランド)¥80,300/トゥモローランド パンツ(フミヤ ヒラノ ザ トラウザーズ)¥50,600/ノウン ベルト/スタイリスト私物
Photos:SAKAI DE JUN Hair&Make-up:Narumi Tsukuba Stylist:Yasuki Nakamichi Interview&Text:Koki Yamanashi
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