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新しい潮流を生み出し続けるファッションデザイナーたち。“トレンド不在”と言われて久しい今、彼らは服づくりとどう向き合っているのか。今回は国内外で注目を集めるNO MAINTENANCE デザイナーのRoe Hodgsonに語ってもらった。
BRAND:NO MAINTENANCE
アーカイブスとヴィンテージの知見を背景に、L.A.カルチャーの空気感と日本の職人技が交差するプロダクトを展開する。

ヴィンテージの魅力を現代に
伝えるストーリーテラー
「僕は自分独自の声を探したかったんです。言いたいことを言葉にするのが苦手な僕にとって、ファッションこそは自分の想いを伝達する手段だったんですよね」。ファッションにのめり込んだ理由をそう説明するロー・ホジソンは、2020年に誕生したロサンゼルスを拠点とするブランド、ノーメンテナンスのデザイナーだ。日本でも1年前に正式にローンチされ、「控えめで主張しすぎない僕たちの服は日本人にアピールできるのではないかと予感していた」と話すとおり大きな反響を得ているが、デザインの専門教育を受けていない彼に服づくりの知識を与えてくれたのは、ヴィンテージだった。若い頃から、コム デ ギャルソンやラフ・シモンズなど日本とヨーロッパのデザイナーウェアから、リーバイス®をはじめとするアメリカの伝統ブランドまで、ヴィンテージの買い付けで審美眼を養い、やがてオリジナルのデザインを手がけるようになった。
「以前から自分の服を作ったりしていたんですが、僕は完璧主義者で、自分の中に確固とした見解が確立されて環境が整ってから、オリジナルに取り組みたかったんです。だからここにたどり着くまでに長い時間を要しました。やっぱりヴィンテージを扱うだけでは自分の想いを伝え切れないし、混じり気のないフィーリングを服に変換する作業を掘り下げてみたかったんですよね。それにデザインを学んでいないからこそ僕には限りなくピュアな自由があって、自分の直感にのっとったブランドをつくり上げることができたと思います」

そんなローはロサンゼルスで、あるいは日本各地で出会った職人の協力のもと、毎シーズンこだわり抜いた独自の素材を用意。ヴィンテージの質感を再現し、古いワークウェアやミリタリーウェアをアップデートして、歴史や物語性を感じさせるタイムレスなルックを提示してきた。来たる26年秋冬コレクションもしかりで、テーマを尋ねると「長い間留守にした後、家に帰ってきて鍵でドアを開ける感覚を表現したかった」と説明する。
「例えば、長い間不在にしていたという設定なので、そこには不確かな部分がある。それを象徴するのが、コレクションのキーカラーと呼べるバーガンディです。他方で、僕の子ども時代の記憶とつながって、心地よさを醸し出してくれるアーガイルのパターンを取り入れていたり、多彩な形でテーマを反映させています」

また、ヴィンテージにインスピレーションを得ているブランドだという性質上、トレンドとは距離を置いている彼。情報にあふれ、テクノロジーに翻弄される時代だからこそ、目で見て、手で触れることができるものにこだわって、「人々がブランドと関わり合えるフィジカルな体験をできる限り提供したい」と言う。
「今の時代、あまりにも目まぐるしくトレンドが変わっていきます。でも僕のゴールは、そういう雑音を遮断し、毎日仕事場に行ってすばらしい服を作って、自分の価値観に忠実であり続けること。ひとりのデザイナーとしても、ひとりの洋服を愛する人間としても、自分にのしかかる情報の重みを振り切って、日々何かしら新しいものを見つけたい。そして優しさをもって洋服を作り、一緒に働く人たちとも優しさをもって接する――それだけで十分なのではないでしょうか」
Photos:Yu Fujiwara Composition&Text:Mami Osugi[W]

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