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“一歩先をゆく”ロンドンのランニング界隈。スタイリッシュで、走ることに真剣に向き合う。この街は、そんなランナーであふれていた。
ロンドナーたちのランニング事情

SATISFYのソーシャルランのペーサー、ダミアン(左)とイアン(右)。
4月上旬に訪れたロンドン。せっかくなら、オフの日は地元のソーシャルラン(※)に参加して、ランニングスポットも見たい。日頃の情報収集の甲斐もあり、行き先はすぐ決まった。
※仲間やコミュニティと共に楽しみながら走る、交流を目的としたランニングスタイル。
まずは、ロンドン東部のハックニーにある「KNEES UP(以下、KU)」。店名を直訳すると〝膝上げ〟だが、イギリス英語では「みんなで楽しく集まること」を意味するスラングだ。カフェとショップを併設したコミュニティスペースで、とにかく広い。

ベーカリーの様子。
開店する朝8時前には、方々から〝クリエイティブ・ランナー(※)〟と思しき人々が自然とここをめざして集まってくる。ハックニーは、クリエイターたちが多く居を構える、いわゆる〝イケてる〟エリア。彼らの装いは、ランニングシューズに短めのショーツ、全体のバランスを決定づける絶妙な丈のソックス。膝からももにかけて入ったタトゥーにシャープなサングラスで、黒を基調にしたスタイルの人が多い。すぐに走り出せる日常着といった感じだ。
※走ることを通じて表現やクリエイティブなプロジェクトを行う人を指す。
ショップには、地元ハックニー発祥のSOAR Runningをはじめ、EC販売のため日本で実物を見る機会が少ないAlex ZonoやUNNA。Raide Researchに、Portalなど、独立系ランニングブランドのアイテムが並ぶ。KUのオリジナルTシャツも、グラフィックデザインやボディ選びまで抜かりない。店内にはランニングにまつわる雑誌やアートブックも陳列され、洗練された空間づくりと、そのカルチャーに対する解像度の高さがうかがえる。スポーツメーカーやブランド、アーティストと組んだイベント(インスタグラムでチェックを!)も頻繁に開催され、まさに〝来れば何か新しいものごとに出会える場所〟といった感じ。
週末はKUで行われたランブランドSATISFY主催のソーシャルランに参加した。大半はローカルで、私のような短期滞在者も若干名。ランナーたちを牽引するペーサー(※)のダミアンはいう。「KUはランナーやハックニーの地元民にはおなじみの場所で、イベント向きの空間設計。みんな来るのを楽しみにしています。日中はコワーキングスペースとして使用するクリエイティブ職の人も。ファッションや建築、出版やイベント関係者が多いですね」
※設定した速度を維持する伴走者のこと。

完走後にサーブされたチェリーエイド。チェリー味のシロップを炭酸水で割ったドリンクで、英国では19世紀から存在する伝統的なもの。美味。
この日のコースは、川沿いを北上して折り返し、テート・モダンやオリンピック・パークを通過しながら走る約15㎞。驚いたのは、ロンドンの公園は広大で、街中に信号が少ないこと。東京だと数分ごとに信号で足止めになることが多いが、通しで走り切れたことにびっくり。さらに印象的だったのは、ペースに対する意識の高さだ。1㎞あたり6分の設定ペースを決して乱さない。ファッションを楽しみつつ、〝モノ〟より〝コト〟が重視されたイベントで、とても好感を持った。走り終え、KUへ戻ると、ペーサーたちが出迎え、完走を労ってくれる。店内で振る舞われたのはドリンクとバナナブレッド、クッキーなど。趣向を凝らしたメニューに、スタッフのホスピタリティと、彼らも楽しんでいることが伝わってくる。おいしいコーヒーに加え、ベーカリーも充実。朝ご飯や軽いランチにありつける。昼過ぎに聞こえてくるのは、テラス席で談笑する人々の声。日照時間が短いロンドンでは、日光浴は大切な時間。彼らの会話や交流から、きっと新たなプロジェクト、SOAR RunningやUVUのような新しいブランドが生まれ、それが新たな文化になっていく予感がする。

UVUのヘッドオフィスへ。少数精鋭の若いデザイナーたちが新コレクションを準備していた。
何を選び、誰と走るか
KU以外にも、ロンドン市内にはProgress RunningやRun Limitedなど、ランニングのショップが点在している。前者は、90年代UKやフットボールカルチャーを感じる、ややストイックでメンズ色の強い雰囲気。一方の後者は、ウェルネス志向の強い、モダンでハイエンドなムードが特徴だ。KUは、ファッション性が高く、カウンターカルチャー的な姿勢が感じられる。ただ、どのショップにも共通しているのは、関わる人たち自身がランナーであり、人とのつながりや文化を何より大切にしていることだ。競技性を追求するのではなく、〝どう走るか〟〝誰と走るか〟を重視する。ショップもイベント(予約制が多い)も誰に対してもオープンで、旅行者でもローカルの輪を体感でき、運がよければつかの間の交流ができるはず。
私の滞在期間は、ロンドン・マラソンの約2週間前。大会本番は日本から見守ったが、出走する・しないにかかわらず、多くのロンドナーたちがそれぞれの表現方法で大会に関わり、熱狂していた。背景には、地域密着型のランコミュニティの存在と、走ることが本質的に生活や文化として深く根づいている土壌が、そうさせるのだと思う。
KNEES UP
住所:455 Hackney Rd., London E29DY, United Kingdom
Instagram:@kneesupspace
www.kneesupspace.com

英国発の新興ランニングブランドR.A.D。UFOというシューズをランニングショップProgress Runningで発見。

Running Late Coffeeは朝型のランクラブ兼小さなカフェ。走った後はコーヒーと朝ご飯(サブスクだった)を楽しむ地元っ子が集う。

絶対的アイドルであり、ランナーでもあるハリー・スタイルズが表紙の専門誌『RUNNER’S WORLD』。村上春樹との対談が話題に。英語圏のみの販売につき、購入。

ランニングショップやスーパーなど、どこでも売っている濃縮ジュース・ジンジャーショットを飲み比べ。運動前後のリフレッシュにいい。
Photos:Kae Homma(top,no.2) Composition&Text:Aika Kawada

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