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前回の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』に続き、偶然にも、僕と同じ2000年生まれの映画を選びました。本作が僕にとってエドワード・ヤン監督との「初めまして」ですが、ずっと勧められていた作品でもあって。
4K版として再上映された時(2025年12月)に共演していた方からも「劇場でやってるよ!」と薦められたり、それ以前から僕がウォン・カーウァイ作品や、4月に紹介した『小さな私』(※東京国際映画祭上映時のタイトル。改題し『ちっぽけな僕と大きな夢』として11月に劇場公開決定)などを観ていたからか、動画配信サイトを開くと必ずお薦めに挙がってきて。多分、僕が“夏の思い出系映画”も好きだから、余計なんでしょうね。

『ヤンヤン 夏の想い出』

2000
Real Lars von trier
Bjork
Catherine Deneuve
David Morse
Peter Stormare
Jean Marc Barr.
Collection Christophel © Zentropa Entertainments / Koskas
『ヤンヤン 夏の想い出 4Kレストア版』(2000年/台湾・日本合作/157分)デジタル配信中 提供:ポニーキャニオン
©1+2 Seisaku Iinkai
小学生のヤンヤンは、会社役員の父NJと母ミンミン、高校生の姉ティンティン、優しい祖母と一緒に豪奢なマンションで暮らしている。しかし母の弟アディの結婚式を境に、さまざまなトラブルに見舞われ......。祖母は脳卒中で昏睡状態に陥り、父は初恋の人に再会して心が揺らぎ、母は宗教にすがり、ティンティンは友達の元カレといい雰囲気になるが――。『牯嶺街少年殺人事件』(91)、『カップルズ』(96)などの台湾の名匠エドワード・ヤンによる遺作。2000年の第53回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
タイトルで勘違いしますが、
家族全員が主人公の群像劇です!
そうして観たら、「うわぁ、これか。すごく考えさせる映画だな」となりました。面白いし、グッときて。本当にいろんなものが詰まっていて、それなのに余白も大きくて、至るところで深掘れる。
タイトルとメインビジュアルから、“ヤンヤン”という少年が主人公だと思う人が多いと思いますが、実はそうでもなくて少し驚くかもしれません。もちろんヤンヤンも主要登場人物の一人ですが、お父さん、お母さん、お姉さん、そしてヤンヤンと、家族全員が主人公で、それぞれの物語が別々に繰り広げられていく群像劇です。

ヤンヤンの叔父アディの結婚式で始まり、ある人のお葬式で終わります。アディは若い妊婦さんと結婚するのですが、式には元カノのユンユンが乗り込んで来て。そんな騒動を嫌って、途中でお祖母ちゃんが帰ってしまうのですが、その晩、お祖母ちゃんが脳卒中で倒れてしまう。
意識が戻らないお祖母ちゃんに、みんなで毎日、話しかけることになるのですが、ヤンヤンは「眠っている人に話しかけて何の意味が?」と言ってお母さんに叱られたり(笑)。

そこから、家族それぞれにいろんなことが起きていくんです。お父さんのNJは偶然、昔つきあっていた女性と再会して、出張先の東京で落ち合ったり。お母さんのミンミンは変な宗教みたいなのにすがって山に行ったり。姉のティンティンは隣に引っ越してきたリーリーの元カレに相談を受けて好意を抱いたり。幼いヤンヤンは、そんなみんなをじっと見ている――。一部を除いて大多数の人の名前が“繰り返し”っていうのも、なんか可愛いですよね。
「人は自分の後ろ姿を見られない。
だから人は人の半分しか見ていない」

僕自身が写真を撮るからかもしれないけれど、ヤンヤンが劇中でよく写真を撮っている関連シーンがすべて興味深くて大好きでした。例えばヤンヤンがすれ違った人の顔をいきなり覗き込んで、お父さんに「なぜ、そんなことをしたの?」と聞かれたとき、「後ろからだと何を悲しんでいるのか分からなかったから」って答える。ヤンヤンが「人は自分の後ろ姿を見られない。だから人は人の半分しか見ていない」と言って、それから後ろ姿ばかり撮っていて。「真実の半分しか見えていないのに、人はどうやって(真実を)教え合うの?」みたいなことをNJに聞くんですが、「めっちゃ、そうだよな」と共感して。ヤンヤンとお父さんが話すシーンが、最高でした。

そういうことを踏まえると、冒頭の結婚式のシーンでヤンヤンが親戚の女の子たちからちょっかいを出されるシーンも意味があるように思えてきました。左をツンツンされてそっちを向いて、次は右をツンツンされてそっちを向いても、誰がやったのか分からない悪戯。そこでも真実とは違う半分しか見えないなって僕の中で繋がって。そんな何気ない小さなシーンから既に伏線が敷かれていたのか、意味があるのかと思いました。それこそ原題の『A One and a Two』にも、いろんな意味が含まれていますよね。
父、母、姉、父の取引先...。
登場人物の何気ないセリフに名言多し
NJと日本の取引相手・大田が話すシーンも、どれも良くて。大田をイッセー尾形さんが演じているのですが、そのセリフが本当に良いんですよ。例えば、大田の案が斬新すぎるとNJの会社は契約を見送ろうとしていると気づいた大田が、NJに「なぜ私たちは“初めて”を恐れるのか。毎朝が新しいだろ」と言ったり。何気ないセリフが、すべて深いんですよ。

東京で昔の恋人と落ち合ったNJが、熱海に行く不倫っぽい行動もあっったりして。彼女が一人で泣いているシーンも、2人が楽しそうにしているシーンも、何を求めているんだろうなって、僕には2人の関係が今ひとつ理解できませんでしたが、そんな一連のシーンもすごく良いんですよ。それこそ『Tシャツが乾くまで』と同じように、シチュエーション的には「不倫」と括られるかもしれないけれど、そういう関係ではないというか。2人の関係や決断にも「どういうこと?」って余白があって、それを読むのも楽しかったです。

お母さんは山のお寺にこもっちゃうから比重的には出番が少ないけれど、「私には(倒れた母親に)話すことが何もない」とか「私は空っぽなの」と涙ながらに言う姿にハッとさせられました。僕らからしたら、わが子が成長していく姿を見ながら日常生活を送っているお母さんは、全然空っぽな人生じゃないのになって感じましたが、代わり映えのしない毎日に疲れているんでしょうね。
でも逆に、「それでいいじゃん」って気づかせてもくれました。なぜ山に行ったのかNJに告白するシーンの、それまで内に溜めてたものを吐き出すようなお芝居も、すごかったです。孤独や心が疲れた時って人間どこかにすがりたくなるのかな、でも宗教じゃ何も解決しなかったんだなと、素晴らしい芝居と共にそのシーンも心に残っています。

姉ティンティンのパートは一番激しかったですね。っていうか、もう完全に巻き込まれちゃっただけじゃん、可愛そうって思って。ティンティンがお祖母ちゃんに「なぜ夢の世界はこんなに美しいのに、現実は汚いの?」みたいなことを訴えるシーンも印象的でした。折り紙で折った蝶が手のひらに残っているくだりにも、かの“胡蝶の夢”という有名な話が重ねられているのかなって思って。
まるで“隠れミッキー”のよう。
いたるところに意味や示唆がある

ヤンヤンのパートはもう、何とも言えないくらい可愛かったです。可愛いし、ピュアだし、でも言うことは深いし。観ながら「ヤンヤン、次はどんな言葉をくれるの?」って気持ちになっていました(笑)。
そんな彼にも、思春期が到来するんですよ。初恋を経験するヤンヤンの言動も、すべて可愛かったです。でも同時にヤンヤンって、かなりヤンチャ。先生の頭上に友達と水風船を落としたり、授業を抜け出して写真の現像に町へ行ったり。結構、大胆なことを普通にしているのも面白かったです。

お騒がせな叔父のアディも含めて、語り尽くせないくらい小さなエピソードが盛りだくさんで、すべてに意味があって、見応えもあって、157分という長尺なのに無駄なカットが1つもない! それこそ“隠れミッキー”みたいに、至る所に意味や示唆がちりばめられているんですよ。
でも観る年代年代で受け取るものが違うと思います。誰の目線で観るかによっても、年齢や性別や人生経験によっても、大きく変わってくるだろうな。だから僕も、もう少し年齢を重ねてまた観たい、そんな映画です。

いろんなものを巡り巡って収まるところに収まっていく、ホッと息がつけて希望を感じさせてくれる映画。家族や普通の生活が、いかに大事なものかを改めて気づかせてくれて、良いものをたくさん貰えた気がします。「これは絶対に見た方がいいよ」って、無責任に勧めたい(笑)。単にヤンヤンを愛でるだけでもいいから、ぜひ観てください。
『ヤンヤン 夏の想い出』
鈴鹿央士的視点 “わしのツボ”

素敵なセリフがたくさんありましたが、映像も本当に奇麗でメチャクチャ好きな画やカットがいっぱいでした。例えばベランダの外から内側を見る視点。あるいは、部屋の窓に反射する映り込みを通して、家の内側の動きを見せたり。街の赤いネオンも美しいし、窓の外で車のライトが流れていたり、人の顔に差す影の作り方も相当こだわってますよね。

さらに実は僕、都市伝説好きなんですが、その界隈では「左は過去で、右が未来」なんですよ。だから昔の彼女と熱海に行ったNJが、ひとり桟橋でボーッと海を眺めているシーンで左を向いている姿を見て、彼は過去を見ているんだなって。同時に海は「なにかの終わり」も意味するので、NJの姿を「過去との決別と解釈できるな」なんて観ながら思いました。「もしかして監督、都市伝説好きなの?」なんて思ったりしていました(笑)。

鈴鹿央士 “わしの近況”


レゴにハマっていて、新しく発売された商品を少しずつ作っていたのですが、遂に完成しました!
手先を使うレゴって、自律神経が整うと聞いたことがあって。確かに台本を読んだり覚える時も休憩で、レゴを作るとメチャクチャ没頭できる。いい頭の切り替えになっています。完成品を壁掛けにするか、床置きにするか検討中です(笑)。
そして今は秋冬物の服をちょこちょこ買っています。先日もクリスタセヤというブランドのVネックカシミアニットを買いました。着心地が最高で、いま一番のお気に入り。おかげで、この秋冬はいい感じで過ごせそうです。
Text:Chizuko Orita

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