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【青森県・平川市】やっぱり食堂はラーメンが美味しくなくちゃ。先代の背中から学んだ味。「大十食堂」【100年食堂】

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「大」の屋号を受け継ぐ。

青森県平川市『大十食堂』外観

青森県の南東部、旧尾上町の中心街・十文字。かつて人を運ぶ馬車が往来していた交差点。この停車場の前に初代の西谷重助(にしやじゅうすけ)さんが、そばとうどんのお店を始めたのは明治33年のこと。

西谷家の屋号である「大」の文字がついた食堂、大十食堂が歴史を刻み続けて120年近くになります。

青森県平川市『大十食堂』四代目の豊さん

「飲む打つ買う」が三拍子揃った二代目の実さん、真面目で実直な方だった三代目の芳雄さん。真逆な性格の二人が守ってきた暖簾を、四代目の豊さんが受け継いだのは25歳のときでした。

豪快な二代目と真面目な三代目の血を引いた四代目。人を惹きつける柔らかな雰囲気で自身や料理について話す姿に、それぞれの長所を引き継いだ印象を受けます。


食堂のラーメン。
だからのこその「手作り焼き干し」

そばとうどんから始まったお店のメニューに、「当時の流行で」ラーメンが加わったのは昭和23年のこと。一つ一つ手揉みを欠かさない麺はもちろんですが、スープへのこだわりも並大抵のものではありません。

ラーメンを始めた当時、出汁に使っていたのは焼き干しと煮干し。しかし、四代目の頃には焼き干しは既に高級品。そこで、考え抜いた四代目が編み出した結論が「煮干しを自分で焼く」というものでした!


青森県平川市『大十食堂』マイワシ(ヒラコ)の煮干しを焼いたもの

「マイワシ(ヒラコ)の煮干しを焼いたものを臼で細かく挽いて、それを更に乾煎りするんです。」

庶民の生活に寄り添う食堂という商売ゆえ、なかなか値上げはしづらいもの。この心意気に感服です!

他にも「髄の旨みを溶けこませるように、とんこつはしっかり割ったり、そこに昆布や削り節を加えて味を整えて、魚臭くないまろやかな出汁を作っている」とのこと。そこまでこだわる理由を伺うと、

それを更に乾煎りしたもの

「やっぱり食堂はラーメンが美味しくなくちゃ。じゃないと、お客さんもこの店には来たくないと思うでしょう。今は親父の時と素材が違うので、自分なりに考えて塩辛くなくすっきりと飲める味に仕立てるんです。」

美味しさの源はご主人の強い想いでした。



最強の炭水化物トリオ・
Aセットが生まれた日

青森県平川市『大十食堂』メニュー表

そして、ラーメンと並ぶもう一つの名物が「昭和33年に始めた」という焼きそば。こうなると、お店の両巨頭を一緒に食べたくなるもの。そこで、今から20年前にも同じことを考えた常連さん。

「ラーメンも焼きそばもおにぎりも食べたい!」

四代目への小さなお願いは、焼きそばとラーメンのハーフセットに、おにぎりがついたAセットを生み出しました。

青森県平川市『大十食堂』厨房に立つ店主

青森県平川市『大十食堂』タマネギと豚肉をソースで味付けている様子

フライパンで炒めたタマネギと豚肉をソースで味付けて、茹でた後に水で引き締めた麺を絡める。そこに仕上げとして焼き干しの出汁を纏わせる。

器にスープを注いでいる様子

海とソースの香りが広がる厨房の傍らで、動物と魚の旨みがたっぷり詰まったスープが作られ、茹で上がった麺が丼にしゅるんと収まります。



ラーメンのおかずに焼きそばをすすり
仕上げにおにぎりを頬張る

青森県平川市『大十食堂』Aセット

目の前に運ばれてきたAセット、その迫力に圧倒されます。

とんこつなのに濁りなく琥珀色に染まったスープは、驚くほどに口当たりが滑らか。臭みを微塵も感じさせない髄のエキスが、隅々まで溶け込んでいます。口の中で肉の旨みを堪能していると、少しずつ顔をのぞかせる魚出汁。ふわっと広がる上品な旨みが、肉から魚へと綺麗に受け継がれます。

そんなスープが絡んだ手揉みの麺。食感勢いよくすすればモチモチの食感がたまりません。あとは、最後の一滴まで残さず食べるという簡単な仕事をするだけです。

一方の焼きそばは、口の中でラードでコーティングされた麺がしなやかに踊りだし、しっかり目のソースの味に、お出汁のほんのりやさしい風味が混ざり合っています。

玉ねぎと豚肉が心地良いアクセントとなって、一口ごとに食べるのが更に楽しくなります。

そして、おにぎり。仕上げに食べるか途中で食べるか。タイミングは人それぞれですが、個人的には、ラーメンのスープと共に最後に楽しむことをオススメします。

青森県平川市『大十食堂』Bセット

こちらがBセット。焼きそばのフルボリュームに、半ラーメン。麺志向が強い方に食べてほしいセットです。

※この取材から数年後、別の組み合わせでもBセットを食べてきました!



背中で覚えてきた技だからこそ

青森県平川市『大十食堂』カウンター席の上に飾られている当時のおかもちの蓋
カウンター席の上に飾られている当時のおかもちの蓋が、その歴史を物語っています。

「今の食堂の生活があるのは、先代のおかげ」

背中越しに三代目から色々なものを学んだ豊さんは、今日も先代への感謝の気持ちを込めて厨房に立っています。

―――――

2021年6月、色々な事情によって大十食堂は一旦幕を下ろしましたが、地元のお客さんからの声に応えて、現在はお隣・青森県黒石市にある「焼肉逢春」のランチタイムに中華そばや焼きそばといった大十の味を提供。多くの方に親しまれた味を絶やさぬよう、今なお腕を振るい続けています。

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店舗情報

大十食堂

創業年:1900年(明治33年)
住所:〒036-0377 青森県黒石市中町25-1
電話番号:0172-55-9614
営業時間:11:00~14:00(平日)/11:00〜15:00(土日祝)
定休日:水曜日(祭日の場合は翌日休)
主なメニュー:中華そば(並・650円)/焼きそば(並・750円)/ミニ3点セット(1,050円・記事中のAセット相当、現在はおにぎりが牛すじ入りカレーに変更)/セットメニュー(麺類+350円・記事中のBセット相当)
※店舗取材2016年1月29日/店舗情報は2025年12月1日時点のもの。料金には消費税が含まれています。

 

店主

青森県平川市『大十食堂』四代目の豊さん

四代目店主

西谷 豊 さん

豪快な二代目と真面目な三代目の血を引いた四代目。人を惹きつける柔らかな雰囲気。

 

Text by 百年食堂応援団/坂本貴秀

※この記事はウェブサイト「100年食堂」にて2016/02/29に公開された記事を、サイト終了にともない、加筆してメンズノンノウェブへ移行したものです。

坂本 貴秀

坂本 貴秀

フォトライター/伝承料理研究家/百年食堂応援団

取材を通じて感じた飲食店や地域の「まだ伝わりきれていない魅力」を、撮影と執筆でお伝えしています。伝承料理研究家として、地域に残る食文化の調査・記録や、コンテンツ・商品化を通じた次世代への継承活動にも取り組んでいます。100年続いてきた、続けんと奮闘する飲食店を応援しています!

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