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ブルーはまたアーティストの心を惹きつけてやまない色でもある。多彩な表情を持つ色の魅力を、ファッション&アートシーンで活躍するクリエイター一人ひとりが独自の解釈を加え、描き出した。
童心に帰ることができる、
フレッシュなコバルトブルー
スタイリスト 池田尚輝
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NOAHのTシャツ

「青いTシャツが好きなんですよね。白でも黒でもなくて、ブルー。ヴィンテージでも新品でも気に入ったものはつい購入してしまいます。僕にとってこのTシャツの青って、純粋な子どものような色なんです。外を自由奔放に駆けずり回っているようなわんぱくでアクティブなイメージ。スポーツブランドや、ストリートブランド特有のカジュアルで強い青が好き。ファッションの観点から考えると、ブルーはベーシックだけど差し色としても有効。無彩色のアイテムを選びがちな大人こそ、こんなブルーのTシャツを手に取ってほしいと思います」(池田)
[下]N.Y.ストリート界の重鎮ブレンドン・バベンジンとエステル・ベイリー・バベンジンが手がけるノアのTシャツ。フロントに配されたポケットにはブランドを象徴するクロスロゴがオン。鮮やかなブルーは今季登場した新色。
Tシャツ(ノア)¥9,900/ノア クラブハウス その他/スタイリスト私物
柔らかなベビーブルーを生ける
いけばなアーティスト 廣内翔真
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NICENESSのシャツ
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勿忘草

「いけばなの材料として使える青い花って少ないんです。人工的につくる方法はあるので、全くないわけではないのですが。僕が好きなのは静謐でニュアンスっぽいブルー。まさに今回使った勿忘草のような感じ。この花、春になると公園とか道端に普通に生えているので、よく目にするんですけど主張が控えめなので気づきづらい。ソロで戦う花というより、群れで意思表示をする花って感じ。一見すると弱々しいけど、強い種でもあるので本当は逞しいんですよね。この花弁のようなシアーなテクスチャーと、淡いブルーの色にリンクするコットンシャツと一緒にいけてリンクさせてみました」(廣内)
透明感のある青のシャツは、イタリアの老舗機屋のデッドストックファブリックを採用したもの。縫製は日本のシャツ専業工場で行っており、1940年代のドレスシャツに着想を得た端正なボックス型のデザインが特徴。なめらかな肌触りで季節問わずまとうことができる名品。ゆとりのあるシルエットなので羽織りとしても。
シャツ(ナイスネス)¥59,400/イーライト
時間の経過を感じる“茄子紺”
スタイリスト 松川 総
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STUDIO NICHOLSONのセットアップ

「ここ数年、濃いネイビーに惹かれているんです。日本の伝統色に“茄子紺”や“紺青”って名前の色があるのですが、その色に近いかな。ただ濃いだけでなくて、長く身につけていたから褪せてしまったような色。薄いトーンで出せばいいってわけではなくて、時間をかけてそこにたどり着いたようなブルーが好きです。僕的にメンズノンノって白×ネイビーの色合わせが似合うと思うんです。クリーンな印象だけど一本筋が通っている人物像というか。今回選んだスタジオ ニコルソンのセットアップの装いはそのイメージに寄せる感じで組んでみました。暮らしの手触りを感じられるけど、知的で品がいい人物像。ほんのり文化的な気配も感じるいい色です」(松川)
初夏も涼しくまとえる軽やかなコットンリネンのセットアップ。洗いをかけたような手触りが心地いい。
ジャケット¥78,100・パンツ¥81,400/スタジオ ニコルソン 青山 中に着たシャツ(サンモント)¥29,700/サンルーム カットソー(ヤエカ)¥13,200/ヤエカ アパートメント ストア メガネ(キュービッツ)¥29,700/ブリンク外苑前 その他/スタイリスト私物
ソリッドな佇まいのゲームシャツ
小説家 安堂ホセ
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P.A.M.のゲームシャツ

フットボールのユニフォームから着想を得たゲームシャツは、オーストラリア・メルボルン発祥のライフスタイルファッションブランドP.A.M.のもの。ミーシャ・ホレンバックとショーナ・トゥーヘイのデザイナーデュオが手がけている。光沢のある生地と、メッシュパネルの切り替えがソリッドな佇まいを叶える1着。袖にはアイコニックなフラワーモチーフのアップリケが配され、ポップな印象に。
ゲームシャツ/安堂さん私物
「ブルーは男性のための罠」
青はファッションにおいて、男性のコードとして親しまれてきた。ジャケット、ネクタイ、帽子、スニーカー。どのアイテムを選ぶときも、僕たちはごく自然に青いものを手にとる。青色にはそういう「好き」以前の親しみがある。
メンズブランドのお店には、やっぱりほとんどの商品にブルー系の展開があって、僕たちは無意識にそれを、誰かべつの男の子が置いていった遺失物として認識しているふしがある。そして手にとる。試着して、気に入る。男性であることを、しばらくのあいだ引き受ける。
だからどんな街のどんな年齢でも、男性たちのシルエットは青い。まるでトイレの標識みたいに。もちろん頭から靴まで全身ブルーの男の子なんてそういないけど、どこかに差し色された、あるいは生地に織り込まれた青が、全体のトーンを統合する。それ以外の色―白や黒やグレーや、肌色までもを、男性として統合してくれる。
オーストラリアのブランドP.A.M.のユニフォームを見つけたのは二年ぐらい前。胸に大きなナンバーが記されたデザインも、なめらかに発光する生地も、全体的にスポーツチームのユニフォームそのものなのだけど、なぜか一般的な男らしさとは真逆の印象をこちらにあたえる。
色はもちろんブルー。それも晴れた青空のように明るい。いや、むしろ明るすぎる。生地が反射光をたくさん蓄えるせいで、ホログラムのように嘘っぽく、物質感がない。影が軽い。半袖のファンシーなパイル刺繍も含めて、ユニフォームというより、ユニフォームを着られなかった人間の描いたファンタジーという方が正確かもしれない。
さっき、僕たちは無意識下で青い服をべつの男の子の遺失物として認識すると書いた。けれどこのユニフォームを着ていたのは本物の青年ではなく、彼らに扮したべつの何かだろう。かの有名な殺人鬼が、ピエロの仮装をして少年たちの警戒を解いたように。男の子をおびきよせる罠。不気味なほど爽やかなブルー。
四角く畳まれたユニフォームは、誰も写っていない写真のように飾られている。男の子はみつからない。
Photos:Ryosuke Hoshina Hair&Make-up:Ryoki Shimonagata Stylist:Naoki Ikeda Masashi Sho So Matsukawa Models:Sotaro Komiya[MEN’S NON-NO model] Flower stylist:Shoma Hirouchi

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