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10年前の自分を振り返りながら、これまでの軌跡を確かめるようにたどり、今の自分を見つめて。35歳から36歳へ向かう坂口健太郎の、思いを言葉に紡ぐ。
周りから見える自分を受け入れて
変化を許容する大人になりたい
2017年、25歳から、26歳へと移ろう自身を記録に収めた『坂口健太郎写真集 25.6』の撮影が約1年かけて行われた。あれから約10年。この7月に彼は35歳になった。メンズノンノモデルの肩書がなくなり、俳優となった坂口健太郎は、あっという間に過ぎた10年間で何を考え、そして未来を思うのか。

春は金髪。ドラマ『東京タラレバ娘』(17年)のKEY役を演じ、9回のブリーチを経験。25歳の顔が凛々しく変わっていく。
――あれから10年がたちましたね。
大人になりましたかね、僕。自分で感じた変化といえば「俳優」という言葉に枕詞がつかなくなったかも。昔は「若手人気」とか「塩顔」とかね(笑)。今はよくも悪くも、何もつかない、ただの俳優になりました。
35歳って純粋な役もできるし、ある程度のことをわかった渋さも演じられる。若さと年齢を重ねることの魅力が混在する絶妙な年齢だと思います。8月に公開された映画『私はあなたを知らない、』は純粋さゆえの狂気性が求められるときがあったし、10月に始まるドラマ『kiDnap GAME』(フジテレビ系で放送中)ではいろいろな人をまとめる中間管理職みたいな役だし。そう考えると僕自身というよりは周りの人の僕を見る目が変わったんだろうなって思います。
――変わりたかったですか? それとも変わりたくなかったですか?
変化を許容できない大人になるよりは、年齢を重ねても、その瞬間、瞬間を新しく受け入れられる大人になりたい。
ドラマ『kiDnap GAME』は経験豊富な一流の監督でも初めての規模感でした。撮影が長期すぎて制作スタッフが途中で代わったりすると現場の呼吸が合わなくなってしまう可能性があるから、主演という立場でも、役を離れたところでも現場が円滑になる努力はしていたかもしれない。僕は7都市で起きた同時多発的な誘拐事件の犯人を追う刑事役。ケガをしたり、汚れたり、緊張感のあるシーンが多いんです。だからこそ現場では自分の中の空気を適度に抜きながら、自由をつくる努力をしていました。
台本を読んで「なんで彼はこんなことを言うんだろう」って思う気持ちを、ポジティブに感じられなくなったら成長もストップしちゃうと思っています。読み込んで、役に思い入れが強くなるほど、表現の衝突は生まれるけど、それはいいことだと思います。大切なのは、もめ事をなかったことにしないで、前に進んでいくこと。そのために動く自分が、嫌いじゃなかったりするんですよね。


夏生まれだけど、夏っぽいことは苦手。大きな打ち上げ花火より小さな線香花火が好き。でも、スイカの早食いには挑戦。
――『25.6』では、うまく生きていくには曖昧さが必要だって話していました。10年前はなぜそう思っていたのですか?
人から自分を決めつけられることに怖さを感じていたときがありました。「坂口くんって穏やかで優しそう」みたいに思ってくれるのはうれしいけど、自分の本当の気持ちや声を外に出しちゃいけないんじゃないか。パブリックイメージに沿った性格でいなきゃいけないのかって。昔の僕は、ぐつぐつとした感情をゼロかイチかでしか表現できなかった。つまり曖昧であることは、不器用ゆえのスタンスというか意思表示なんです。でもあれから10年たって、その「間」の部分で僕は自分のことを表現できるようになったから、少しは器用になったかな。
――また「等身大」という言葉も何度も使っていました。そうありたい自分の気持ちの表れ、そうできない自分へのフラストレーションだったのでしょうか?
確かに。自分が見えていなかった頃だったかな。仕事が忙しすぎるときに、きっと大丈夫、って周りに言っているときほど大丈夫じゃなくて、無意識に自分にそう言い聞かせていることって、誰にでもありますよね。
どれだけ時代が変化していても
目の前の小さな世界を幸せに

秋は地元。1年半ぶりの実家とその近郊で撮影。常連だった近所の飲み屋に行ったり、小学校時代の親友を呼んだり。
――改めて25.6歳の専属モデル時代を振り返ってみてください。
僕と対照的な道を進んでいた、栁俊太郎っていう存在が強かった。栁が東コレのショーを歩いたり、エッジのきいたブランドの特集ページに呼ばれているのが、すごく羨ましかったんです。僕はどちらかというと、読者に寄り添うページが多かったから。正直言うと『25.6』のお話をいただいたときは、男の人の写真集をいったい誰が買うんだろう?ってネガティブに考えていたし。でも、栁もそんな僕を羨ましいと思っていたんです。お互いが選ばれることのない場所を、楽しそうに見えていて、いい刺激を与え合っていて。そんな頃、よっしー(髙橋義明)もまた「僕たちモデルはこのままでいいのか」みたいな反骨心を抱えていたりして。そのときは、メンズのモデルはこうあるべき、みたいな変な矜持があって。今考えると大したことでもないし、僕が表立って何か言葉にすることはなかったけど、モデル同士の距離感が近くて、熱い話ができた時間は大切でした。仕事という僕の年表の中で、人格形成にもっとも影響を与えたのはやっぱりメンズノンノモデル時代です。そのかけがえのない時間はもう二度とつくれない、っていう気持ちはあります。

冬は秋田へ。雪に感動し、おいしいご飯に笑みがこぼれる瞬間を追った。衣装もすべて私服のプライベートな旅の撮影。
――当時の自分にかける言葉があるとしたら、どんな言葉ですか?
ちょっと気恥ずかしいけど、「いい顔しているね」って。本当に何も考えずに「雪つめて〜」って言っている、普段のなんでもないリアルを撮ってもらえた、貴重な本だなって思います。こうして写真を一枚一枚見返しても、いろいろな話をしながら撮ってもらっている感じがしますよね。こういう何も演じていない自分の素の写真集ってもう二度とつくれないだろうから、この時期に1年間も記録してもらえたことは、ありがたかったな。
でも、直接会って話したくはないかも。何か言ってしまった瞬間に、あの頃の僕はきっと今の僕につくられたものになってしまうから。頑張れよ、とも、これからくる大きな仕事のことも伝えたくない。25歳の僕を、どこかで他人のように思っているのかもしれない。
――最後に、この先の坂口健太郎はどんな人間でありたいと思っていますか?
世界はどんどん広がっているけど、やっぱり役者である僕は、カメラの目の前を一生懸命に生きて、自分と向き合ってくれる人を大切にしたい。どれだけ未来になっても、自分に一番近い部分は、そんなに変わりようがない気がしていて。だから現場が幸せになる環境をつくること、なのかな。身のまわりの小さな世界でしか頑張ることができないけど、時代が進めば、外に届くと信じているので。
Photos:Go Tanabe

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