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【青森県・大鰐町】二つの屋号の物語。大鰐温泉もやしとともに、次代に受け継がれてほしい「朝日屋 日景食堂」【100年食堂】

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「佐々木」の姓と
2つの屋号をめぐる物語

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』外観

青森県の南西部、阿闍羅山が見守る南津軽郡大鰐町。

800年の歴史を持つ温泉地の一角にあるのが、阿弥陀如来が祀られ「津軽の大日様」として親しまれる大円寺。その2分ほどの場所で店を構えるのが「朝日屋 日景食堂」です。

お店の創業は明治30年。食堂の初代となる佐々木治助さんが、当時、仲のよかった住職に声をかけられ、甘酒といなりずしのお店を寺の前で開いたのが始まりです。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』近くにある大円寺の現在の様子

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』大正3年当時の大円寺
同じ境内の入口を撮った現在の大円寺と大正3年当時の写真を並べて見ると、当時の住職からもらった「朝日屋」の屋号が掲げられています。

ところが、現在の食堂の看板には朝日屋の文字に並んで「日景食堂」の屋号が。

元々は畠山性だった治助さん。青森と秋田の県境で日景の性を持つ家に婿入りをしたものの、奥様が他界されたことをきっかけに馬喰としての生活を始め、出会ったのが佐々木姓を持つ奥様でした。

その一方、治助さんは出身の大館の人から「佐々木」ではなく、「日景のオヤジ」と呼ばれており、それがいつしかアダ名となって二つ目の屋号が生まれたのです。


危機を乗り越えた暖簾の系譜と
メニューの進化。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』三代目の佐々木清志さん

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』四代目の仁志さん

「あまり朝日屋の屋号を使わなかったこともあるが、やっぱりこの屋号も大切にしていきたいんです」

当時の写真や看板と共にお話しいただいたのは、三代目の佐々木清志さんと、四代目の仁志さん。明治、大正と時代にまたがって町に愛されてきた食堂ですが、実は第一次世界大戦に端を発した恐慌で一度は危機状態に。しかし、無事に乗り越えると昭和27年に店舗を改装します。

この頃には、軍隊の部隊長付き調理人として戦地に赴いていた清助さんが、二代目としてお店を手伝うようになり、食堂の忙しい日々を過ごす中で5人の子宝に恵まれました。

その長男である清志さん。高校を卒業してすぐにお店に入りましたが、実は「菓子職人になりたかった」とのこと。

そして、四代目として後を継いだ仁志さんは、「別に誰かに継げと言われるわけでもなく、自然の流れで」高校卒業後に栄養士の専門学校を経て県内のお店で研鑽を積まれた後、厨房に入りました。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』お品書き1

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』お品書き2

こうして四代に渡って継がれている二つの屋号。時代と共にメニューも近代化していきましたが、その中でも目を惹くのがカツカレーやオムライスといった洋食の数々。

「三代目から始めたメニューを発展させながら、今の形になっている」とのことです。


野趣に富んだもやしがたっぷり!
「大鰐温泉もやしラーメン」

そんな食堂の名物メニューは「基本的なところは、昔からの作り方を受け継いで作っている」という中華そば。イワシの焼き干しと日高の根昆布に、鰹節や鯖節も使った出汁。そこに地元大鰐の醸造元「マルシチ」の醤油を使ったタレを効かせた一品です。

そして、ここ数年ですっかり人気が定着したのが「大鰐温泉もやしラーメン」。

主役は350年の歴史を持つ町の特産品「大鰐温泉もやし」。在来種の「小八豆」を温泉熱と温泉水で育んだもので、その特長は、野趣あふれる風味と独特のシャキシャキした食感。

他のもやしには見られない個性を引き出すため、四代目の仁志さんが昔からのお店の名物と組み合わせたラーメンは、「もやしとの相性がよかった」ということで塩味なのがポイント。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』器について語る店主

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』、仕上げにコショウをパラリとふれば完成

昔から使われてきた市外局番のない丼が見守る厨房の中、温泉もやしを筆頭に、にんじん、ねぎ、キクラゲといった具材をしっかり炒めて、熱々のラーメンの上に盛り込んで、仕上げにコショウをパラリとふれば完成です。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』ラーメン

湯気と共に立ち上る、力強いもやしの香りに食欲を刺激されつつ一口。

麺をズズッとすすれば、もやしのシャキシャキとした食感と麺のモチモチした歯ざわりが、口の中で手を取り合って踊りだします。

ここに絡むスープからは、塩味がしっかり効いた濃厚な魚の旨みがじんわりと広がって、夢中になってスープを飲めば、まるで温泉に浸かっているかのように全身に染み渡る感覚に包まれます。

ゴマの香ばしさやコショウの刺激がアクセントとなった美味しさが、大鰐温泉もやしの歴史への想いを一層膨らませます。


青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』商売道具の天秤を支える初代の治助さんのお写真
商売道具の天秤を支える初代の治助さん。甘酒売りをしていた創業当時の看板には「三国一」を謳う文字と、「佐々木」の名前が描かれています。


賑わいに静かに寄り添う
小さなテーブル

そんなラーメンをもっと美味しく味わえる席が、店の壁沿いに配置されたケヤキのテーブルと椅子。

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』席の様子

二代目から使われ続けて、修理を重ねた今もなお現役です。


青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』創業当時の様子

かつての日本人の胴長体型に合わせ、椅子の高さが少し低めに作られた、昔からの常連さんが愛してやまない特等席。二つの屋号の物語と大鰐温泉もやしと共に、ぜひ次代に受け継がれてほしいものです。


店舗情報

朝日屋 日景食堂

創業年:1897年(明治30年)
住所:〒038-0211 青森県南津軽郡大鰐町大字大鰐字大鰐55-2
電話番号:0172-48-3430
営業時間:11:30~15:00
定休日:不定休
主なメニュー:大鰐温泉もやしラーメン(800円)/中華そば(650円)/津軽そば(550円)/オムライス(スープ・サラダ付 920円)
※店舗取材2016年1月28日/店舗情報は2025年12月1日時点のもの。料金には消費税が含まれています。

 

店主

青森県大鰐町『朝日屋 日景食堂』四代目の仁志さん

四代目店主

佐々木仁志 さん

高校卒業後に栄養士の専門学校を経て、県内のお店で修行を重ねて四代目として厨房に。「別に誰かに継げと言われるわけでもなく、自然の流れで」この道を歩むことを決断。

 

Text by 百年食堂応援団/坂本貴秀

※この記事はウェブサイト「100年食堂」にて2016/02/29に公開された記事を、サイト終了にともない、メンズノンノウェブへ移行したものです。

坂本 貴秀

坂本 貴秀

フォトライター/伝承料理研究家/百年食堂応援団

取材を通じて感じた飲食店や地域の「まだ伝わりきれていない魅力」を、撮影と執筆でお伝えしています。伝承料理研究家として、地域に残る食文化の調査・記録や、コンテンツ・商品化を通じた次世代への継承活動にも取り組んでいます。100年続いてきた、続けんと奮闘する飲食店を応援しています!

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