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東出昌大、久しぶりのメンズノンノ。落語家・柳亭小痴楽と落語と人生をめぐる特別対談が実現!「幸せに生きていける答えの一端は落語の中にあるのかもしれない」

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実は同い年の二人。出会いは、NHKで放送されていた『落語ディーパー!〜東出・一之輔の噺のはなし〜』(2017〜20年)。落語愛あふれる東出さんが春風亭一之輔さんたち落語家と、毎回ひとつの演目を取り上げ、深く語り合うこの番組に、小痴楽さんもレギュラー出演していた縁で仲よくなった。いろいろあって、今回は久しぶりの再会。場所は東出さんが暮らす山の家。落語と人生をめぐる対談のはじまり、はじまり。

落語を聴きながら渓流釣りしたりね(東出)
粋ですねぇ(小痴楽)

東出昌大と柳亭小痴楽

同い年でこんな芸事に
邁進している人がいるんだって
(東出)

落語が好きってのはわかるけど、
気味悪いなって
(小痴楽)

小痴楽 『落語ディーパー!』ですよね。懐かしいな。東出さんと一之輔兄さんで落語を深掘るという番組があって、そこでご一緒したのが初めてですね。

東出 落語通の方が発起人になって立ち上がった番組なんですけど、師匠方だけではなく、勢いのある若手も入れようということで、そのひとりが小痴楽くんだったんです。会ってみて、同い年でこんな芸事に邁進している人がいるんだって衝撃と喜びを受けましたね。普段はすごくおしゃれな兄さんなので、私服と着物のギャップも何か次世代だなって。

小痴楽 いやいや。それでいったら、東出さんには驚かされましたよ。『落語ディーパー!』で、先代の金原亭馬生師匠が色紙に書いた言葉を話していて、あれ何でしたっけ? サンマより何とかって。

東出 「メザシにもタイに勝れる味があり」ね。

小痴楽 そうだ、サンマじゃなくて、メザシだ。そんな色紙に書いてある言葉まで知っていて、それを「ご存じですよね」みたいな感じで話してたんですよ。落語家は誰も知らなくて。一之輔兄さんは知っていたのかな。まぁ、落語が好きってのはわかるけど、詳しすぎて気味悪いなって(笑)。

東出 収録終わりで飲みに行って、私が落語愛を語ると、みんな引いていたからね。

小痴楽 上っ面の愛じゃなくて、本当に落語の奥深くまで知っていて、そのうえで今の時代のこととかもくっつけて語るから、話の広がり方がすごくて。こっちのほうがただの落語好きって感じでしたよ。何で落語が好きになったんでしたっけ?


東出昌大

東出 10代後半のときに父が大病を患って、そこで自分は父のことを何も知らないなと思って、父が落語を好きだと言っていたから、なら聴いてみようと。古今亭志ん朝師匠と桂枝雀師匠から始まって、幸いにも音源がいっぱい出ているので、本を読む気力もないときに電車に揺られながら聴いていたんです。最初は何を言っているかわからないんですよ。ひとりの声音だし、八っつぁんとか熊さんとか聞き慣れない人が出てくるし、長屋文化もわからない。けど、だんだんとわかるようになってきて、「欲深き人の心と降る雪は積もるにつれて道を忘れる」とか「人の女房と枯れ木の枝は登り詰めたら命がけ」とか、昔の人がまたうまいこと言ってるんですよ。そういうところも面白くてハマっていきましたね。

小痴楽 何でもない出来事だったり、日常をこんなに面白くこの人たちは生きているんだというのが感じられて、そこが面白いですよね。

人間のおかしさや面白さ
といったものを教えてくれる

東出昌大と柳亭小痴楽が対談している様子

小痴楽 今ってどういうときに落語を聴いているんですか。

東出 時間が空いていたら寄席にも行くんですけど、東京に行く頻度が極端に減っているので、最近はもっぱらYouTube。オフラインに落として、山奥の電波が届かないところで落語を聴きながら渓流釣りしているときがめちゃめちゃ楽しいです。

小痴楽 粋なことをしてますね。

東出 落語を聴いていてよかったなって思うのは、落語って有象無象がいるんですよ。今でいう多様性ですね。こんなバカげていてもいいんだ、しょせん人なんてそんなものだ、ということを教えてくれるじゃないですか。

小痴楽 ヘンなやつでも仲間はずれにしない。バカとかマヌケを見捨てないこの世界っていいなというのをすごく感じますよね。

東出 だから、若いときに落語に触れるのはいいと思う。まず手頃だし、いろいろな人たちの人生訓みたいなのが語られているからタメにもなる。年を重ねるとわかってきますけど、結局、人って一概に学歴じゃないし、着ているものじゃないんですよね。「この人と一緒にいる時間が楽しいから、もっと仕事をしたいな」とか、そういうところで人間関係が形成されていったりする。人間のおかしさとか面白さといったものを教えてくれる落語から得られるものって本当に多いなって思う。

小痴楽 うん。すごく財産になると思います。

東出 人っていびつだから面白いんですよ。私も完璧を求められる芸能界にいたこともあって、でも人生で完璧ってあり得るのかなとか、いろいろ考えて。立川談志師匠が「落語は人間の業の肯定だ」と言っていましたけど、その言葉が最近はすごくしっくりくるんですよね。「正論なんて求めて生きてねぇんだ、人間は」ってことですよ。


柳亭小痴楽

小痴楽 落語にはつくづく人間が描かれているなって思いますね。まぁ、最近はいろいろなことが窮屈になってきてますから、余計にそれを感じるってのはあります。落語って、いびつな人がたくさん出てくるけど、個性にあふれていて、なんだかんだでみんな楽しそうってところがいいんですよ。

東出 幸せに生きていける答えの一端は落語の中にあるのかもしれないなって思いますよね。僕自身いろいろな時期を過ごしたし、自分が何になるんだろうって、いろいろ紆余曲折あって今ここにいる。運よく役者になれたし、なんだかんだ38年生きてきたなと思うんです。有名な話で、古今亭志ん朝師匠は当初は落語家になるつもりはなくて役者志望だったのが、父親の志ん生師匠に「噺家になれ。噺家だったらどこ行ったって扇子1本と手ぬぐい1枚あれば仕事ができるんだから」って言われたというのがあるじゃないですか。

小痴楽 ありますね。

東出 落語家ってその強さがあるなって思います。役者はないんですよ。役者は舞台道具とか台本とか照明とか撮影機材とかがないと話にならない。純粋に芸に生きるかっこよさというのが、落語家にはあるなと思いますね。

小痴楽 たしかに扇子と手ぬぐいがあればどこでもできますからね。

東出 昭和の大名人と言われた桂文楽師匠って、すごいすごいと言われたけど、本当の贔屓筋は「文楽の面白さはお座敷にあった」と言っていたみたいで。いい季節になってきたし、小痴楽くんがそのあたりの木の下で何か一席やってくれたら、これ以上エモいことないですよ。

小痴楽 いいですよ。やれと言ったらやりますよ(笑)。

東出 かっこいいなぁ。やっぱり芸があるって強いですよね。

小痴楽 そんな立派なもんじゃないですけどね。

東出 こうやって山暮らしをしていて思うのが、今はチェーンソーがあって、耕運機もあるけど、昔は鍬1本、鋸1本でやっていた人もいたわけです。そういう人たちの仕事ぶりとかがどんどん忘れ去られていっている。猟師とかマタギの文化もそう。すごくもったいないと思うんですよね。一度なくなってしまうと、復活させることが難しい。なので、少しでもそういう技術や知恵みたいなものを残そうとして、自分なりに楽しんで山の暮らしをしているけど、落語は今後も絶対なくならないだろうし、むしろ生のライブで観たいという人が増えるんじゃないかな。生であの寄席の空間で観ると全然違う。ほかに代替できない面白さがありますよね。

小痴楽 寄席はやっぱりいいですよ。頑張ってしゃかりきになって空回っているぐらいの若手から、すっかり角が取れて落ち着いた芸を見せるベテランまで見られるのは寄席ぐらいですからね。あの空間で落語を聴くっていうのは本当にいい経験だと思います。

東出 落語家が生でやっているのを目の当たりにすると、本物の粋のよさがわかる。そういうものは実際に観に行かないとわからないですよね。

幸せに生きていける答えの一端は
落語の中にあるのかもしれない

東出昌大のプロフィール画像

俳優

東出昌大

1988年、埼玉県生まれ。2004年、第19回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得。モデルとして活躍後、12年に映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。近年は山で狩猟生活を送りながら俳優業を続けている。

 

落語にはつくづく人間が
描かれているなって思いますね

柳亭小痴楽のプロフィール画像

落語家

柳亭小痴楽

1988年、東京都生まれ。五代目柳亭痴楽の次男として生まれ、16歳で落語家の道に入る。2009年、 二ツ目昇進を機に「三代目 柳亭小痴楽」襲名。2019年に30歳の若さで真打昇進。華もあれば実もある、落語界を牽引する実力派として人気。

Photos:Naoya Matsumoto Hair&Make-up:AMANO Composition&Text:Masayuki Sawada

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