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密輸のために訪れた「2.0」星人たちに飛びかかる、「0.01」軍団。
0.01軍団「ワーー!」
2.0星人「フッ。(シュン)」
簡単にかわされてしまう「0.01」。
ドミノのように倒れていく「0.01」。
がんばれ「0.01」。
敗色濃厚な中、「0.01」星の英雄的軍師・ミスターブラインドが妙案を閃く。
ミスターブラインド「諸君! 宇宙を渡る覚悟はできているか!」
0.01軍団「はい!(なんか哲学的なことを言ってるけど、今はそんな余裕はないから適当に流そう)」
ミスターブラインド「諸君! 靴を脱げ!」
0.01軍団「はい!(悠長なことを言ってないで、あなたも闘ってくださいね。血だらけな僕たちが見えませんか? 見えないですよねー、視力悪いですもんねー)」
ミスターブラインド「諸君らの流した血は、我らが0.01星の最後の光明である!」
0.01軍団「(うるせーハゲ、一人で頭を光らせてろ)」
ミスターブラインド「その高潔な血を手繰り寄せ、自らの足に塗りつけるのだ!」
0.01軍団「(血を足に塗れ? この期に及んで! バカか!)」
しかし他にすべき事も無く、言われるがまま自分たちの足に血を塗り始める0.01軍団。
こんな事態は末代までの恥… と、ミスターブラインド以外の誰もが思いながら。
「2.0」星人は、ロケットを発射させようとしていた。
「2.0」星へと逃げ帰る準備だ! まずい。
戦いを放棄して足に血を塗るなどという奇行が、他の星々に伝わってしまったら…。
0.01軍団の胸中に、焦りが駆け巡る。
次の瞬間。
「諸君! 赤に掴まれ!!!」
ミスターブラインドの雄叫びが、
高すぎる春の空に、
広すぎるあの宇宙に、
隙間だらけの彼らの胸に、
響き渡った。
0.01軍団「ワーーー!」
彼らは一斉に、目の前の赤、すなわち血で赤く光る味方の足へと飛びかかった。
赤は視力の悪い彼らにとって最も見分けやすい色であり、また、0.01軍団の生存本能に火をつける色でもあった。
これは、紛うことなき名案であったのだ。
「2.0」星人のロケットに掴まるミスターブラインド。その彼の足に掴まる「0.01」人。その足に掴まる「0.01」人。またその足に…。
離陸したロケットの後部から「0.01」軍団員が、長い長い鉄道のように連なっていた。
宇宙を駆けるその姿は、「銀河鉄道」として後世に伝説を残すこととなる。
視力星「2.0」に到着すると、かの星の大統領は「0.01」の勇敢な姿を讃え、また自らの様々な悪行を懺悔した。
視力的平等社会を目指すべく、あらゆる視力の人々が、あらゆる星へ均等に居住することに改められた。
ミスターブラインドが宇宙連合総長に任命されたのはまた別のお話であるが、のちに眼鏡やコンタクトレンズの開発が進められたことも、彼の功績だ。
そうして、視力による差別が行われる社会は、なくなっていったんだ。
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2015年。
ミスターブラインドの末裔
「コンタクト目ーかゆ。」
兒玉太智
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