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芥川賞受賞の21歳、宇佐見りんインタビュー。「書きたいものが作品の芯にはまるとき」

芥川賞受賞の21歳、宇佐見りんインタビュー。「書きたいものが作品の芯にはまるとき」

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2019年、20歳のとき、デビュー作『かか』で第56回文藝賞を受賞した。痛切な愛と自立を圧倒的な筆力で描き切った同作は翌年、史上最年少で第33回三島由紀夫賞にも輝いた。そして、2021年、第2作『推し、燃ゆ』で第164回芥川賞を受賞。デビューから約1年4か月、まだ21歳。恐るべき才能である。新しい純文学の書き手として注目を浴びているこの若き作家にインタビュー。

宇佐見りんさん

WRITER / RIN USAMI

1999年、静岡県生まれ。神奈川県育ち。現在、大学生。2019年、デビュー作『かか』で第56回文藝賞を受賞し、翌20年に同作で第33回三島由紀夫賞を史上最年少で受賞。21年、『推し、燃ゆ』で第164回芥川賞を受賞。同作は第18回本屋大賞(4月14日発表)の候補にも選ばれている。現在、3作目を鋭意執筆中。好きなことは寝ること、散歩すること、旅をすること。コロナが収束したら、シンガポール、アメリカ、韓国に行ってみたいという。

デビュー作で文藝賞&三島賞、続く2作目で芥川賞を受賞!

――まずは芥川賞の受賞、おめでとうございます!

ありがとうございます。

――受賞会見では「胸いっぱいで、まだ頭が追いついていない」といった発言をされていましたが、あれから少したって、今はどんな気持ちですか?

そうですね。ようやく落ち着いてきたかなという感じです。もちろんとてもうれしいんですけど、時間がたつごとに自分ひとりで取ったものでは絶対にないんだということをすごく実感していて。今まで私を支えてくれた人もそうですし、出版に携わっている方々とかに対して裏切らないように頑張りたいなという思いと、文章や言葉に対して今まで以上に気を引き締めてちゃんと向き合っていかないといけないなという思いを強くしています。

――それにしても、デビュー作『かか』で文藝賞と三島由紀夫賞をダブル受賞し、続く2作目『推し、燃ゆ』で芥川賞受賞ですから、本当にものすごい才能だと思います。物語を書くようになったきっかけは何だったのですか?

小学3年のときにお話をつくる授業があって、内容もほとんど指定されていたので全然大したものではなかったんですけど、そこで初めてお話を書く面白さを知りました。はっきりと作家になりたいと思うようになったのは高校生のときです。いわゆる純文学といわれる作品に書かれていることが、それまでは難しかったり、遠いものというふうに思っていたのに、何となくわかってくるような状況になってきて。何が書かれているのかとか、何のためにこういう文学が存在しているのかといったことがちょっと腑(ふ)に落ちたような時期があり、そのときに「なるほど、じゃあ、私もちゃんと書いてみよう」と思ったのがきっかけですね。

――ちなみに、小学3年のときに書いたお話はどんな内容だったんですか?

宝探しというテーマが共通で決められていて、私が書いたのはただ宝を探して夢オチで終わるといった内容です。書いていて楽しかったけど、決して面白いといえるものではなかったですし、才能のかけらもない話だったと思います(笑)。

――作家になろうと決めて、最初からいきなりすらすら書けたんですか?

いや、数年はまったく形にならなくて、いろいろ迷いつつ、迷って改善を繰り返しながら、気づいたらここにいたみたいな感じです。自分の中にはたくさん課題があって、まだめざすものに到達することができない。頑張らないと、と思っています。

――才能という部分についてどう思っているんですか。自分には才能はあるなって思いますか?

思わないですね。才能ある人って、普段から面白いことばかり考えて、文章も流れるように出てきて、というイメージがあるので。自分は、そういう力はないです。ただ、高校生のときに「これしかない」と覚悟を決めたから今があるので、諦めなかったというのは自分でも褒めていいかなと。あと、これも才能といえるものではないですが、私、けっこう怒りっぽかったり、そうかと思えば泣き上戸だったり、感情の振れ幅が大きいので、そこは物語を書くうえでの特徴になっているのかなと思っています。

――こんな才能が欲しいなと思うことはないんですか?

うーん。でも、すごい才能があったらあったで別の苦しさもあるような気がするから、むやみやたらに欲しがったりするものじゃないのかなと思います。だから、今のままで進んでいければ十分です(笑)。


体と向き合ってしか出会えないことがある

――夢をかなえて作家になり、すばらしい結果も残しました。今は何が書くことの原動力になっているのですか?

まだ2作しか書いていなくて、書きたいものをちゃんと全部書けてないという思いですね。毎回書き切ろうとしているんですけど、やっぱり今の自分の限界というのがあって。だから、書くものがなくなっちゃったみたいな感覚もなくて、テーマとかアイデアとか話の構造とか、いろいろちょっとずつ浮かんでいる状態なので、それを完成させられたらたぶん楽しいだろうと思いながら今は書いています。

――ちなみに、差し支えない範囲でいいのですが、3作目ってどんな話を考えているんですか?

テーマはまだ言えないんですけど、三人称で書きます。今まで書いてきたSNSとかそういうものはなくなると思いますし、現代的というよりは、自分の中の言葉や景色を掘り下げて、神経がちゃんと一つ一つ行き渡った文章を書きたいなと思っています。本来ならもっと早く終わるつもりだったんですけど、書いていくと難しくて、自分の見通しと違うんですよね。毎回書く前は「全然書けるぞ」と思うのに、なかなかうまくいきません。

――書いていて喜びを感じるときってどういうときなんですか?

何だろう。自分が予定していたのよりも下回ると悲しいし、上回るとうれしいですね。書きたいことが作品の芯として着実にはまっていくときがあって、ひとつの作品で1回ぐらいしかなかったりもするんですけど、ちゃんと誠実に書いていったらちょっと超えたなみたいなシーンができるとすごくうれしいです。

――アイデアというのは、どういうときに浮かぶんですか?

場面から思い浮かべることが多いです。2作目の『推し、燃ゆ』は今までにはない特殊な書き方だったんですが、1作目の『かか』は宗教的な場所に参拝しに行くモチーフと、SNSにすごく居場所を求めている主人公がケータイの充電が切れそうになって情けない感じになっているシーンが初めに浮かんで、それを前々からあったものとかとつなぎ合わせて書きました。私は普段から「これは面白いから、小説になるかも」と思ったら一応書いてみて、ひと塊の文章を残しておくんです。そこからつなぎ合わせていく感じで書いています。

――2作目は違う書き方だったそうですが、どんな感じだったんですか?

2作目は「推し」について書こうと思ったので、今までみたいに文章をつなぎ合わせていく書き方ができなくて、そこが難しかったです。

――推し活の話は、わりと自分の経験が入ってきているんですか?

そのまま書こうと思っているわけじゃなくて。でも、やっぱり自分の中の小さな気づき、例えば「メッセージの通知が、待ち受けにした推しの目許を犯罪者のように覆った」みたいな文章があるんですけど、そういうのは自分が生活していないと出てこない言葉ですし、自分から出てくる言葉しか本物じゃないから、自分のほうを広げなきゃいけないなと思っていろいろやっています。

「自分から出てくる
言葉しか本物じゃない」

――自分を広げるというのは、例えばどういうようなことなんですか?

バイトなどもそうです。小説なので、登場人物を自分の考えで動かせちゃうんですけど、それはしたくなくて。ずっと一緒のところにとどまっていても出てこない言葉とかがありますし、体と向き合ってしか出会えないことがあると思うので、できるだけ外の世界に出ていくように心がけています。


本ってこんな自由なんだな、ということは知ってほしい

――宇佐見さんは、小さい頃から本が好きだったんですか?

多読ではなかったんですけど、中学受験をしたので、文章読解とかで気になった本を読んだりしていました。

――作家になった今、本を読んだほうがいいよと思いますか?

今はたくさん娯楽もあるし、面白い本があれば読んでほしいと思いますけど、絶対に読んだほうがいいよとは思わないです。でも、ひとりでいる人とか、何か苦しいなというときとかに純文学を読んでみたらいいんじゃないかなと思うことはあります。すごく面白いですよ。そういう意味では、本に対して固定的なイメージを持っている人は、むしろこんなに自由なんだな、いろいろあるんだなということは知ってほしいなと思います。

――宇佐見さんは中上健次が大好きと公言していますが、同年代でもあるメンズノンノ読者に「これは面白いよ」という本があれば教えてください。

中上さんの本は本当にいいので、早く読んでほしいなという気持ちはありますが、同年代にすすめるんだとしたら、中村文則さんの『銃』などはどうでしょう。文学性もエンターテインメント性もどっちもすごくあって、一度読んだらずっと読み進められる引きがあるので、読書の醍醐味(だいごみ)みたいなものも味わえると思います。

――自分の本はどうですか?

自分の本ですか。読んでもらえたらうれしいですけど、本って合う合わないがあって、それは決して本が悪いわけじゃなくて、相性だと思うんです。だから、試し読みをして、合うなと思ったら読んでみてください(笑)。


『推し、燃ゆ』

宇佐見りん[著]
¥1,540/河出書房新社

家庭にも学校にもなじめず、勉強もアルバイトも家族関係も普通にちゃんとできない高校生のあかり。唯一の生きがいは、アイドルグループ「まざま座」のメンバー上野真幸を推し、彼を“解釈”することだった。そんなある日、推しがファンを殴って炎上してしまう――。圧巻の第2作にして、第164回芥川龍之介賞受賞作。

『かか』

宇佐見りん[著]
¥1,430/河出書房新社

離婚を機に徐々に心を病み、酒を飲んでは暴れることを繰り返すようになった母(かか)。脆(もろ)い母、身勝手な父、女性に生まれたこと、血縁でつながる家族という単位…。自分を縛るすべてが恨めしい19歳の浪人生うーちゃんは、ある無謀な祈りを抱え、熊野へと旅立つ――。第56回文藝賞&第33回三島由紀夫賞をW受賞したデビュー作。

Photo:Takahiro Idenoshita(still) Composition & Text:Masayuki Sawada

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