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TaiTanの骨染漫画読破録　第８回『僕が死ぬだけの百物語』的野アンジ

2023.10.03

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骨染ほねじみ　第８回
『僕が死ぬだけの百物語』

©的野アンジ／小学館

的野アンジ　小学館／既刊６巻　（各）￥715

令和のホラー漫画界を牽引（けんいん）する新鋭・的野アンジによる、WEBにて話題の正統派オムニバス・ホラー漫画。小学生の少年・ユウマが語る百の怪談。動機は不明。心臓を握りつぶされるような恐怖アリ、度肝抜かれるどんでん返しアリ、そしてなんと感動もアリ…。「サンデーうぇぶり」（小学館）にて隔週金曜日に連載されており、現在単行本が６巻まで販売中。

ホラーすらも“エモく”なる
TikTok世代の異質な感覚

今回取り上げるのは、『僕が死ぬだけの百物語』という１話完結型のオムニバス・ホラー漫画です。全編を通じての主人公はユウマという小学生の男の子で、彼は何らかの目的を達成するために百物語を始めます。毎晩ひとつずつ語られる怪談はどれも恐ろしく、残酷な描写や読めない展開に心を乱されます。また、ユウマの口から語られる怪談もさることながら、話の前後に短く挿入される彼の境遇にも最悪な想像を働かせてしまうんです。

連載が始まったときに話題になったので僕も読んでいたのですが、思いもしないところでこの作品が盛り上がっていることを知りました。それがTikTokです。何げなくTikTokを眺めていたところ、この作品を編集したショート動画が流れてきて衝撃を受けました。

使用されていた短編は漫画で読んでいたので、話の展開に驚くはずはありません。それにもかかわらず面食らってしまったのは、その動画のBGMにエモい楽曲が使われていたからだったんです。ホラー調のピアノの曲とかだったら理解できるんですが、エモい曲を重ねる感覚があまりにも理解できなかったんですよね。

僕はそのことから、TikTokのメインユーザーである若い世代の中で、ホラー作品の受容のされ方が変わってきているのではないかと考えるようになりました。これは仮説ですが、ホラーが“エモいもの”として認知され始めているのではないかと思ったんです。

ホラーの魅力のひとつに、「解釈のできなさ」があります。目の前で不思議な現象が起こっているのに、何も説明されずに終わってしまう。当然、モヤッとした感情だけが残されるわけです。しかし「エモい」という新たな概念を手に入れた若者たちは、落としどころのない感情をとりあえず「エモい」に分類することができます。なかでも『僕が死ぬだけの百物語』は、短編かつ説明が少ない理論の飛躍した話が多いので、TikTok、さらには「エモい」との親和性が高いのだろうという結論に至りました。90年代生まれの自分とはかけ離れた感覚なので、そこに新鮮さと同時に妙な異質さを感じたんです。

作品自体もめちゃくちゃ怖くて面白いのでおすすめです。僕が特に怖かったのは「喧嘩（けんか）」という話。前日に友達と喧嘩してしまった主人公の学生が、一緒に登校しようと相手の家を訪れます。しかし、友達は家の扉から顔だけを出し、主人公を辛辣（しんらつ）な言葉で追い返します。不審に思いつつもひとりで学校に向かう主人公。そこには恐ろしい事実が隠されていたのでした。続きはぜひ漫画をチェックしてください。もちろん、TikTokに無断転載されたものだけを楽しむのはダメですよ！