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お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、季節感あふれる“恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします! 最終回となる第37回のテーマは肉まん。2つもらったうちの1つを彼女に渡したら…。
店員さんから肉まんを二つもらい一つを彼女に渡す。手にはまだ肉まんを持っていた時の丸みと温もりが残っている。残っているのはあったからだ。
あるもの、なくなったものも良いが、その狭間の『残っているもの展』があったら行きたい。
結局、送れずにメールは消したけど送ろうとした時の指の震え。二口で食べるから半分になったショートケーキのいちご。作り過ぎたカレー。炭酸だった水。別れてしまったけど、家にまだある彼女のパジャマやら化粧道具。それを送るのか取りに来るのか捨ててしまっていいのかを確認しなければいけない煩わしさ。いつか気が変わるかもしれないという期待(残っているというか残している)。星を数えた夜、君のいないいつもの君の席、、、
切なさは残っているものを美しくしてくれる。
肉まんを両手で持ち、ハフハフと頬張る。手の温もりは、先ほど持っていた君の肉まんの温かさかどうかはもう分からない。おいしいねー、熱すぎるけどと新しい会話がある。肉まんを食べ終え手を繋いで歩く、手はずっと暖かい。実に平凡で展覧会には出せなそうで最高だ。
★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での大健闘が話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。インスタのアカウントは@mura_kami_kenji,
だが、センスが炸裂するイラストのアカウント@kenji_mura_oekaki,@birthdaychairもぜひフォローを。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェック!
Haiku & text & illustration : Kenji Murakami
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