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俳句とイラストで綴る恋の風景【フルーツポンチ村上健志の17音のラブストーリーズ】Vol.35

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お笑い芸人としてだけでなく、独特の視点とセンスで詠む短歌と俳句が話題の、フルーツポンチの村上健志さんの連載。メンズノンノWEBでしか読めない、季節感あふれる“恋”にまつわる俳句とエッセイ、そしてイラストを隔週でお届けします! 第35回は、カラオケで歌うあの子のセーターについて。


春はあけぼの。夏は夜。秋は夕暮れ。冬はつとめて改め冬はカラオケだと思う。もちろん一年中カラオケは楽しいのだが、忘年会などの二次会で行く機会が多いせいもあるのだろうか、カラオケの景色を思い返すといつも冬だ。リンダリンダで飛び跳ねたせいで次々に落ちるハンガーのコート。眠った人に掛けてあげるジャンパー。歌って熱くなりTシャツになり、そのままの格好でトイレに行くと廊下がやたら寒い。「夜空ノムコウ」は取り合いで、イントロで口笛を吹く。そして、カラオケにはセーターがよく似合う。

セーターは可愛い。目のやり場に困るぴったりめのセーター。なんか生き物みたいに可愛いボリューミーなセーター。あったまりたいのかあったまりたくないのかわからないスカート丈の短いニットワンピ。どれも良い。

無駄なくエコーや音量を調整した黒のセーターの子は腕まくりをし「天城越え」を歌い上げる。ソファに浅く座るあの子は、「下手なんで」と歌おうとしなかったが、皆に促され「あんまり知ってる曲ないですけど、これなら」と曲を入れる。そのタイミングが絶妙に良く、これ以上断るとちょっとノリ悪いなとなる少し手前。苦手なのにありがとねと感謝が芽生える。自分の歌う曲を選んだりせず、この子の歌っている姿をきちんと見たいと思った。萌袖の両手でマイクを持ち、白いセーターのたわみを揺らしながら歌う姿が実に好感を持てる。赤いセーターの子がいて、赤から連想してクリスマスの話に持ち込み、恋人がいるかどうかを確認する。白いセーターの子だけはいるらしい。ピアスは彼からもらったものらしい。ふーん。

オール明けの早朝の冬。寒くてまだ暗い。なんか主人公にしてくれる寒さだ。 


★Profile/1980年生まれ。茨城県出身。お笑いコンビ”フルーツポンチ”のボケ担当。TV『プレバト!!』(MBS系・毎週木19:00~)での大健闘が話題に。また、情報サイト『好書好日』の連載をまとめた『フルーツポンチ村上健志の俳句修業』(春陽堂書店)も好評発売中。インスタのアカウントは@mura_kami_kenji,
だが、センスが炸裂するイラストのアカウント@kenji_mura_oekaki,@birthdaychairもぜひフォローを。自身のYouTubeチャンネル『フルーツポンチ村上の俳句の部屋』での俳句実況もチェック!

Haiku & text & illustration : Kenji Murakami

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