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1987年に戒厳令が解除されて以来、同性婚の合法化を求める運動が活発に行われ、2019年5月にアジアで初めて同性婚が法認された台湾。近隣他国と比較して同性愛にオープンな国として知られ、古くより同性愛をテーマにした作品が数多く生み出されてきた。
BLドラマと台湾
世界的な注目を集めるきっかけとなったのが、1993年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされたアン・リー監督の映画『ウエディング・バンケット』。同作を皮切りに、『藍色夏恋』(2002年)や、『花蓮の夏』(2006年)、『阿莉芙』(2017年)といった名作が続々と誕生している。
2017年にはBLドラマ『HIStory』シリーズの第一作が国内外で大ヒットを記録したことを機に、BLドラマの制作が盛んに。『We Best Love』シリーズなどのヒット作が続き、“台湾BL”は世界を魅了する一大コンテンツへと成長する。

今や台湾BLドラマの金字塔とも呼ばれる『HIStory』シリーズの脚本を手掛けた作家、リン・ペイユーの最新作『看見愛(カンジエンアイ)~See Your Love』が昨年配信され、日本でも多くのファンを獲得。今年4月に東京でファンミーティングが開催され、主要キャスト4名のインタビューが実現した!
第一弾は、メインペアを演じた ジン・ユン(金雲)& ライデン・リン(林宇)。今作でドラマ初主演を果たした二人のキャリアや、今作に出演して得た学びなどをじっくり聞いたインタビューを、メンズノンノだけのオリジナルスタイリングに身を包んだ撮り下ろしショットとともにお届けする。
大ヒットドラマ『看見愛』
メインペアを演じたジン・ユン&
ライデン・リンにインタビュー!

――メンズノンノ初登場ということで、まずはお二人が俳優を目指したきっかけと、これまでのキャリアを教えてください。
ジン・ユン 俳優という職業に興味を抱いたのは、小学生の時。韓国ドラマが好きなお母さんと一緒に『相続者たち』を観て、主演のイ・ミンホさんの演技に感銘を受けたことがきっかけです。19歳の時にサバイバルオーディション番組「原子少年」に参加して、ボーイズグループ「天王星」のメンバーとして1年ほど活動し、俳優の道に進みました。
ライデン・リン 子どもの時にバットマンシリーズの『ダークナイト』を観て、めちゃめちゃカッコイイな!と感動したことが最初の動機です。学業に専念する中で言語学に興味を持ち、海外留学から帰国後は外資系企業で働いていたのですが、ある日たまたまスカウトされて。勇気を出して芸能界に飛び込みました。
――初対面では、ジン・ユンさんはライデンさんを「静かな人」、ライデンさんはジン・ユンさんを「近寄り難い人」だと感じたとか。お互いの理解が深まった今、相手の人柄や見た目とのギャップなどを紹介し合って下さい。
ライデン・リン ジン・ユンの性格は、僕とは真逆。僕はおしゃべりで落ち着きがないのですが、彼は常に落ち着いています。彼の方が年下だけど、僕よりも大人っぽいです。
ジン・ユン 仲良くなってからのライデンは、たまに「ちょっと静かにしてくれないかな?」と思うほど、よくしゃべります。彼を静かにさせるために、食べ物を与えたり、手で彼の口を塞ぐことも(笑)。


――それぞれオーディションを通じて本作の出演を勝ち取ったそうですね。本作のどのような点に惹かれて、オーディションを受けたのでしょうか。
ジン・ユン マネージャーさんに、こういう作品のオーディションがあるよ、と教えてもらいました。ライデンが演じたズーシアン役の方が自分に合いそうだと思っていたのですが、シャオポン役も魅力的だったので、どちらの役も演じられるように準備して臨みました。
ライデン・リン オーディションの段階では、ズーシアン役は背が高くてクールな男性として描かれていて、ジン・ユンの外見と完璧に一致していました。僕は、逆にシャオポンを狙っていたんですよ。ズーシアンを演じるのには、身長が足りないと思ったので。
ジン・ユン シャオポンもズーシアンも、当初のキャラクター設定からだいぶ変わったよね。
ライデン・リン そうだね! 実は、僕もジン・ユンも今作と同じ制作チームによるBLドラマ『奇蹟』(2023)のオーディションを受けていたんですけど、落ちてしまって。その後、僕は別のBL作品の脇役を演じて、ますます主演カップルへの憧れが強くなりました。今作のオーディションがあると聞いた時は興奮して、マネージャーさんに「絶対に出演したい!!」と宣言した記憶があります。
聴覚障害を持つシャオポンと
自由を手に入れたいズーシアン。
『看見愛』で演じた役との共通点

――ジン・ユンさん演じるシャオポンは、幼少期にかかった病気で耳が聞こえなくなってしまい、聴覚障害を持つ青年。就職先がなかなか見つからないことなど、あらゆる不安を抱えながらも両親を心配させないために、常に明るく振る舞っています。対して、ライデン・リンさん演じるズーシアンは、大企業を経営する名家の後継。父親にコントロールされる人生から逃げ出して、自由を手に入れようとします。
演じた役とご自身に共通点はありますか? それぞれの役を通じて、新たな発見や学びはありましたか?
ライデン・リン 僕はズーシアン役を経て、性格がかなり変わりました。もともと僕は内気というか、自分の意見を言わないタイプ。自分が望む生き方を手に入れるために、積極的に周囲にアプローチできるズーシアンが羨ましかったし、演じながら「こういう表現いいな」「こんな人間関係は素敵だな」と感じることがたくさんありました。そういったズーシアンの良いところを見習うようにしたら、性格が明るくなり、自分に自信が持てるようにもなったんです。
ジン・ユン (何度も頷きながら)うん、うん。
ライデン・リン ただしズーシアンは、自己中心的な一面もある。そういうところは良くないと思うので、彼の長所だけを真似するようにしました。
ジン・ユン 僕とシャオポンは、性格も人との接し方も似ていると感じます。ドラマの終盤ではシャオポンが衝動的に行動したり、感情を爆発させたりする場面が増えますが、僕自身そういった経験はほとんどない。ライデンと同じように、僕も自分の思いや感情をもう少し表現してもいいかもな、と感じて少しずつ実践しているところです。
ライデン・リン そう自分で気づいて変化しようとするところも、シャオポンと似ているね!
ジン・ユン 確かに!

――誰にも話せなかった苦悩を打ち明け合うことを機に、一気に距離が縮まるシャオポンとズーシアン。お互いにだけ素直になれた理由を、どのように理解して演じましたか?
ライデン・リン ズーシアンは、かなり早い段階からシャオポンに心を許していたと思います。具体的なシーンを例に挙げるならば、ズーシアンが崖から落ちてしまい、シャオポンに救出される場面。心配して探しにきてくれたシャオポンの優しさが、信頼につながったんじゃないかな。
ジン・ユン シャオポンは、徐々に心を開いていく性質。9話だったかな……お母さんが病院に運ばれて、シャオポンがネガティブな気持ちをぶち撒けるシーンがあるんですけど。ズーシアンが全て受け止めてくれたことで、この人だ!と確信したのだと思います。
――お二人は、悩みや不安を抱えている時、どのように向き合って解決していますか?
ライデン・リン 基本的には、誰かに打ち明けて発散するタイプ。でも相手は誰でもいい訳ではなくて、心から信頼できる人にだけ話します。僕は心の壁が厚くて、本当に仲良くなるまでにすごく時間がかかるんです。ジン・ユンは、全てを話せる友人の一人!
ジン・ユン 僕は、悩みや不安を人に話すのが苦手。不安になった時は一人で自然豊かな場所に行き、のんびり海を見たり、山を散策したりするのが好きです。忙しい時は、遠出する代わりに動物の動画を見て癒されます。(日本語で)猫が好き!
ジン・ユン&ライデン・リンが
“愛の威力”を実感するとき

――チーププロデューサーのアニタ・ソンさんは、聴覚障害のある青年を主人公にしたことの理由の一つに、「聴こえないという要素があるからこそ、余計に登場人物はコミュニケーションを重ねる必要がある。そういった部分が話に深みを与えるのではないか」と考えたとおっしゃっていました。お二人は、普段親しい人とコミュニケーションを取る際に気を付けていること、心がけていることはありますか?
ライデン・リン ズーシアンと同じように、僕も家族とのコミュニケーションで悩んでいた時期がありました。イギリスに留学していた時、僕は現地に残りたかったのに、両親に反対されて仕方なく帰国したんです。両親を説得するのは無理だと感じて話し合いを諦めてしまったんですけど、その後もずっと心にしこりが残った。その経験から、逃げても何も解決しないし、お互いに納得するまで話し合い続けることが大切だと学びました。
ジン・ユン 僕も家族とのコミュニケーションは、特に気をつけています。僕はシャオポンと同じく一人っ子で、親の関心が僕に集中してしまうんです。同じことを繰り返し聞かれたりするからイライラするし、反発することもあった。でも大人になって働き始めると、親のありがたみを実感する機会が増えました。親以上に僕を理解して、応援してくれる人はいない。そう気づいて、親に思いやりを持って接することを意識するようになりました。

――プロデューサーのリン・ペイユーさんは、本作に関するインタビューで、「私たちが常に念頭に置いているのは、“愛があればどんな障害も超えられる”ということ。障害と言っても肉体的なものから社会的、精神的なものまで様々です」とおっしゃっていました。お二人が、愛が持つ威力を実感するのは、どんな時ですか?
ジン・ユン 僕にとって家族の愛は一番パワフルで、僕の原動力にもなっています。ボーイズグループのオーディション番組に参加していた時、ライバルのファンから過激な言葉で批判されることがありまして。僕自身はあまり気にしていなかったけれど、親は傷ついていたし、僕をとても心配してくれた。家族の愛を実感する機会になりました。
ライデン・リン 僕も愛と聞いて連想するのは、家族。実は俳優を目指すと決めた時、家族は反対していたんです。芸能の仕事は安定していないから、将来的に苦労するんじゃないか?って。でも続けるうちに僕の成長を感じて、応援してくれるようになりました。今作の記者会見にも足を運んでくれたんですよ。遠くに住むおばあちゃんは来れなかったんですけど、僕とジン・ユンが載った新聞を切り抜いて、テーブルに飾ってくれていて。それを見た時、今までにないくらい胸が熱くなりました。

――メンズノンノ読者に注目してほしい、今作の魅力を教えて下さい!
ジン・ユン お話ししていて改めて感じたことですが、今作は深いコミュニケーションによって育まれる愛の物語。近年、まるでネットが世界の中心になっているような感覚がありますよね。1日のうちの一瞬でいいので、スマホを手放して大切な人とコミュニケーションをとるだけで、何かが変わるんじゃないかな。そういった点にも着目して、このドラマを見てほしいです。
ライデン・リン そうだね。ラブストーリーだけど、家族関係も描かれているし、笑えるコメディ要素もある。全ての世代に楽しんでいただけるドラマだと思います!
――台湾は、アジアで初めて同性婚が認められた国。同性婚が認められた前後で、街の雰囲気や人々の意識の変化を体感することはありますか?
ライデン・リン 個人的な体感になりますが、特に若い世代の意識が変化していると感じます。LGBTQ+のサポーターには若い世代が多いし、勇気を出して、ありのままの自分を表現して生きている若者も増えている印象。それによって、今後さらなる変化が生まれる気がします。
ジン・ユン そうですね。僕も同感です。

――最近ハマっているファッションアイテムやスタイルを教えてください。
ジン・ユン 昨日、東京に着いてから買い物に行ったんです。オニツカタイガーのスニーカーが欲しかったんだけど、お店にあった一番大きなサイズは29cm。とりあえず履いてみたんだけど、僕は30cmだからやっぱり小さくて……断念しました。
ライデン・リン オニツカタイガーの店内がすごく混んでいたので、僕は離れて、別行動していました。
ジン・ユン 再び合流したら、彼が靴を買っていたんです。僕は買えなかったのに!
ライデン・リン はははは。僕はサロモンのスニーカーを買いました。そういえば二人とも、スニーカーが好きだね。
ジン・ユン 僕はなかなか合うサイズがないから、買い物をするのも一苦労。選択肢が少なくて、クローゼットの中は黒か白ばかりです。今後は明るい色にも挑戦したいな、と思っています。

――台湾は、日本で大きな人気を誇る旅行先です。メンズノンノ読者におすすめしたい、台湾のイチ押しスポット&アイテムを教えてください。
ジン・ユン 台南にある、「鬍鬚忠牛肉湯」というお店です。台南の名物料理、牛肉湯(牛肉スープ)はもちろん、炒め物などのメニューも全て絶品! (日本語で)素晴らしい!
ライデン・リン 「飲冰室茶集」というパックのお茶シリーズ。台湾のローカルブランドのもので、ほとんどのコンビニで売っているんじゃないかな。いろんなお茶があるけれど、僕的にはこのシリーズが一番おいしい! 同じセブンイレブンでも、国によって売っているものが違うので、台湾でもぜひ行ってみてください。

▶リン・ジアヨウさん&エドウィン・リンさんのインタビューは、5月18日(日)15時に公開予定。お楽しみに!
どこで観られる?
『看見愛』作品情報

裕福な一族の三代目として生まれたヤン・ズーシアン(ライデン・リン)。家業のビジネスの交渉をするために台湾を訪れるが、何者かに襲われて怪我をする。家業を継ぎたくないズーシアンは、そんな状況を利用して、自身の監視役を務める秘書のチョン・フォンジエ(リン・ジアヨウ)から逃れようと画策。耳が聞こえない青年ジアン・シャオポン(ジン・ユン)を介護者として雇い、シャオポンの不注意を狙って家を抜け出そうとする。

ワガママな御曹司のズーシアンを嫌いながらも、親を安心させるために仕事を引き受けるシャオポン。衝突を重ねながら、それぞれが胸に秘める苦悩を知り、二人はお互いに心を開き始める。一方で、ズーシアンを殺そうとした人物を探し回るフォンジエは、ワン・シンジア(エドウィン・リン)の襲撃を受ける。シンジアが自分をズーシアンだと勘違いしていると知り、フォンジエはズーシアンになりすまして、シンジアに接近する……。Rakuten TV、ビデオマーケットにて配信中。
『看見愛』作品情報
■出演/金雲(ジン・ユン)、林宇(ライデン・リン)、林家佑(リン・ジアヨウ)、林詠傑(エドウィン・リン)、陳柏文(ナット・チェン)
■監督・チーフプロデューサー/宋鎵琳(アニタ・ソン)
■脚本・プロデューサー/ 林珮瑜(リン・ペイユー)
2024年/台湾/25分×13話 原題:看見愛
■Rakuten TV 販売ページ
https://tv.rakuten.co.jp/content/490870/
■ビデオマーケット作品ページ
https://www.videomarket.jp/title/41503J
Photos : SAKAI DE JUN Hair & Make-up : Eiken Ou Stylist : Takumi Urisaka Composition & Text : Ayano Nakanishi
【衣装クレジット】ジン・ユンさん着用分
ジャケット(マーカ)¥59,400/パーキング シャツ¥35,200/エンジニアド ガーメンツ Tシャツ¥14,960/エイチ ビューティー&ユース パンツ¥69,300/ダイリク ブレスレット(ニードルズ)¥64,900/ネペンテス その他/スタイリスト私物
ライデン・リンさん着用分
ジャケット(トーガ ビリリース)¥75,900/トーガ 原宿店 ロングスリーブTシャツ(マーモット キャピタル)¥9,900/エンケル ジーンズ¥55,000/リフォメッド 靴(ナイキ スポーツウェア)¥17,050/ナイキ カスタマーサービス
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