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第3回
予想の斜め上を突き進む、わが猫

【人】穂村 弘
歌人
1962年、北海道生まれ。90年、歌集『シンジケート』でデビュー。評論やエッセイ、絵本などでも活躍。『迷子手帳』など著書多数。

【猫】ひるね(♂)
アメリカンショートヘア
2023.5.18生まれ/1歳11か月
悪戯など“極端”な行為は一切しない、おっとりさん。チャームポイントはミカンみたいな形の顔。

猫を迎えるのはひるねが初めて。他の猫をあまり知りませんが、人間の感覚ではわからないことがいろいろあります。基本ひるねは猫用のおもちゃに反応が鈍く、紙袋やプラスチックのソケットなど人間の実用品で遊びたがります。お気に入りの宝物には決まった“儀式”もあるみたい。うちには猫の水飲み場が3か所あるんですが、宝物を見つけたらそれぞれの水に沈めて回ります。ワンちゃんは宝物を犬小屋や陣地に隠すと聞きますが、そんな感じなのか? 本当の意味はわからないけど、熱心に儀式を行う姿が琴線に触れる。つくづく猫って、人間と違う世界を見て動いているんだなと。

逆に猫からすれば、人間もわからない存在なんでしょう。猫も個体差があるはずですが、ひるねは常にごはんを欲しがるタイプ。私が作業しているとチョイチョイ触られ「ついてこい」と言われ、好物のごはんを入れている冷蔵庫まで連れていかれ、私を見てあむあむあむと口を動かす。「ごはんが欲しいんだ」と言うわけです。太りすぎはよくないので毎回あげるわけにはいかない。でも食事制限の概念などないひるねは、ごはんが欲しいのが私に伝わればくれるはずだという一心で、いつも“あむあむ”。太っても問題ないならあげたいんだけど…。「こいつはわかってない」と私は思われているので、時々ごはんをあげるとびっくりした目で見られます。そんなズレを感じつつも面白がる日々。

猫好きな友人がよく言うんです。「だって獣だよ?」って。それは私にもリアルな実感としてあります。一方で物書きの感覚としては、猫は何を見ているのか、なぜ急に走り出すのか、(種が違うにしても)なぜ犬とこんなに違うのか…その類いの疑問は解明されないとわかっていても、やっぱり興味は尽きません。猫がゆっくり瞬きしたら“好きだ”のサインって本当なのかな。
今月のにゃんメモ:

この間、部屋で寝ているとひるねに口の中を踏まれた。口を開けて寝ていたつもりはないのだが、いったいどうやって踏んだんだろう。聞いたところでひるねは答えてくれない。
Logo design:Taisei Yoshida Text:Nana Hotta
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