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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。今回はメンズノンノでもおなじみのスタイリスト井田正明さんが、松陰神社前に今年6月にオープンした新しい古着店を紹介してくれた。オーナーはなんと!?
松陰神社前 Comp(コンプ)
今回のお店を訪ねたのは…
【どんな店?】
ファッションPRのオーナーが
時代を超えて愛される服を提案

今回紹介するコンプのオーナーは、【プロが推す東京の古着屋】vol.12に登場してくれたワグインク プレスの石川大樹さん。スタイリストの井田さんは商品のリースでワグインクに通っては、石川さんとおしゃれ談義に花を咲かせる間柄。モードも古着も好きということでウマが合い、コンプ開店の情報もいち早くキャッチしていた。

石川さんが古着を売るようになったきっかけは、2024年3月、代官山蔦屋書店の古着イベントだった。友人に誘われて出店し、集めていたアディダスやアンブロのジャージなどを売って手ごたえを感じる。自身で古着卸業者を開拓し、7月からは週末に富ヶ谷のポップアップスペースでコンスタントに古着の販売を開始。
趣味で始めたつもりが、いつの間にか自宅が古着倉庫のようになり、古着熱も高まって出店を決心する。なかなかいい物件が出てこなかったが、今年3月に世田谷通りに面した現在の物件に出合う。いろいろな難題をクリアして、6月6日にめでたく開店となった。
軸になったのは、書籍『チープ・シック』

石川さんはポップアップを始める少し前に、ずっと気になっていた『チープ・シック』という本を読んだ。「この本は、ブランドやトレンドに振り回されず、自分だけのベーシックを見つけようというのがテーマで、これが自分の軸になりました」(石川)。
1975年にアメリカで上梓されたこの本(日本では1977年に翻訳が刊行)には、ベーシック、クラシック、アンティーク(ヴィンテージ)を軸に、スポーツウェアやワークウェアなどをミックスして、自分らしいスタイルを築いていくためのヒントが示されており、今もファッションのバイブルとして愛されている。

石川さんはコンプを、古着で現代版『チープ・シック』を提案する店と位置付けた。だからコンプに並ぶのは、誰もが知っているブランドの王道アイテムが中心。どの古着もワードローブに取り入れやすく、また、持っていたいと思わせるものばかりだ。
ポロ ラルフ ローレンのシャツがたくさん!

中でも力を入れているのがポロ ラルフ ローレンのシャツ類。石川さん好みのギンガムチェックシャツを中心にチェック柄、無地とバリエーションも多い。「ラルフ ローレンは意外とBD以外のシャツが少ないのでレギュラーカラーや、コットンじゃない素材のように珍しいものは見つけたら買い付けています」(石川)。
ちなみにボタンダウンの襟のボタンと、第1ボタンをあえて外してディスプレイしているのも石川さんのこだわり。井田さんは「優等生なBDシャツをラフに着てほしいという、石川さんの狙いを感じる」とその意図をキャッチしていた。

ほかにも差し色にちょうどいい“元気すぎない”トーンのスポーツウェアや色褪せたスウェット、キャッチィな迷彩柄、オーバーサイズの“ウエストをギュッと絞ってはける”ジーンズ、ダブルニーのワークパンツ…現代のスタンダードアイテムがずらりと並ぶ。
ブランドもアディダス、ザ・ノース・フェイス、カーハート、リーバイスなど「ザ」な定番を持つブランドから、ステューシー、コム デ ギャルソン・オムのようなストリート&デザイナーズブランドまで、石川さんのフィルターを通したラインナップ。
シューズはレディースも充実

コンプはメンズだけでなくレディースも扱い、特にシューズはレディースが優勢。「洋服はベーシックでも靴でエッジをきかせるようなコーディネートが好きなので、革靴をピックアップしているんですが、エッジィな靴はレディースに多く、自然とこんなバランスになっています」(石川)。
もともと石川さんが古着を売り始めたきっかけは「今の古着が高すぎる」と感じたから。国内仕入れでも「自分が消費者として買うとき、いくらぐらいなら買うか?」を基準にしており、どれも買いやすい価格に設定されている。「価格を決めるのは店の努力です」と、PRの仕事を続けることで、“チープ・シック”な価格を実現している。
【スタッフはどんな人?】
ベーシックアイテムを力の
抜けたスタイルでまとう名手
秋田県出身の石川さんは、大学進学を機に上京。当時はコレクションブランドが好きだったが、古着屋の多い町田市でブランドものを掘るうちに古着に目覚める。大学時代から国内外のブランドをPRするワグインクでインターンを始め、そのまま就職。ファッション業界でおしゃれな人々と接するうちに、ベーシックアイテムを自分らしく着こなすスタイルへと変わっていった。

この日も上質な素材のニットにオーバーサイズのジーンズをさらりと合わせて、足元はサンダルというリラックス感のあるスタイル。ニットの裾からのぞかせたポロ ラルフ ローレンのブルーのポケTが絶妙だ。石川さんがバイブルにしている『チープ・シック』に通じる着こなし。
「『チープ・シック』はただ安ければいいという内容ではなく、上質なものを長く着ることもひとつの方法だとはっきり書かれています。アルパカのニットのようなシンプルで上質なものと、古着のTシャツやジーンズ、ベーシックなものを組み合わせて、自分なりに解釈したニュースタンダードを提案したいと思います」(石川)
松陰神社前 Comp(コンプ)の
おすすめ古着5選
国や年代、ジャンルにはこだわらないが、ニュースタンダードという軸があるコンプ。その中でも「古着好きに響く、少し珍しいアイテムを中心に選びました」。どのアイテムにも石川さんの美学が息づいている。
1_ポロ ラルフ ローレンのシャツ

コンプが力を入れているポロ ラルフ ローレンのシャツ。「これはレーヨン・ウールという素材が珍しく、形もレギュラーカラーで両胸にポケットがあるあまり見ないデザイン。コットンとはまた違ったクタリ感が魅力です」(石川)

襟元の織りネームには「85% RAYON 15%WOOL」の文字が。ラルフ ローレンらしいグリーン、ネイビー、レッドのチェック柄にも心が躍る。
2_カーハートのサンタフェジャケット

石川さんがダブルニーパンツを愛用していることでもおなじみのカーハート。ショート丈アウターのトレンドで、デトロイトジャケット以上にヒートアップしているのがこちら。
「フロントのヨークとリブ仕様が特徴のサンタフェジャケットは、最近、相場が上がっている古着のひとつ。コンプでは、このぐらいが適正価格ではないかと思って出しています」(石川)。濃いブラウンの色みも今っぽく、合わせやすい一着。
3_マリテ+フランソワ・ジルボーの
オーバーサイズジーンズ

オーバーサイズのジーンズもコンプらしいアイテムのひとつ。「これはマリテ+フランソワ・ジルボーのハンパ丈ジーンズです。最近、ハンパ丈が気分と言う人も増えてきているのでピックアップしました。ウエストをギュッと絞ってはけるオーバーサイズです」(石川)
1980年代にイタリアン・カジュアルブームを牽引したマリテ+フランソワ・ジルボー。2013年にブランドはクローズしたが、2019年に韓国ベースで復活。ポケットのカッティングやストライプ柄がジルボーらしい。
4_ザ・ノース・フェイスのヤッケ

ザ・ノース・フェイスのヤッケはフードがないのがユニーク。「現行のヤッケとは違って、スタンドカラーをスピンドルで絞るデザインが今っぽいと思いました」(石川)。石川さんの私服にも通じるブルー×ブラックの配色もモダンだ。
5_コム デ ギャルソン・オムのカバーオール

デザイナーズブランドの中でも石川さんがいちばん好きなコム デ ギャルソン・オム。「古着屋ではありますが、デザイナーズのアーカイブも追いかけています。中でもワークやミリタリーをベースにしたアイテムが多いコム デ ギャルソン・オムは、個人的にも思い入れが強いブランドです」(石川)。
このジャケットも古着のカバーオールをベースにしつつ、素材やディテールがコム デ ギャルソン・オムらしく洗練されている。
次回はスタイリスト井田さんが気になったアイテムやコーディネートを紹介!
SHOP DATA
住所:東京都世田谷区若林3-17-1
営業時間:※営業時間は日によって変わります。詳細はインスタグラムをチェック。
不定休
Instagram:https://www.instagram.com/comp_used_clothing/

Photos:Kaho Yanagi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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