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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。今回はスタイリスト三浦翔平さんが、わざわざ足を運びたくなる町田の古着店、トレディーチを紹介してくれた。「手の感触」を信じて生地ファーストで買い付けるアメリカ古着の専門店の、ひと味違うセレクトに魅了される!
町田 TREDICI(トレディーチ)
今回のお店を訪ねたのは…
【どんな店?】
年間100日アメリカに滞在して集める
生地にこだわった古着に感動

古着好きにおなじみの町田市は、街を挙げて古着店を応援していることでも有名。トレディーチはそんな町田に2009年10月にオープンした。小田急線の町田駅から徒歩5分ほどの雑居ビルの3階に位置する。「やきとん 酒場 やまと屋」が1階にあり、入口には目印のウッドの立て看板が。

オーナーの飯酒盃(いさはい)謙二さんは千葉県出身。柏の古着店で研鑽を積み、独立して学生街の町田に出店を決めた。「自分自身が学生時代に住んでいたことがあり、ここなら自分が思い描くアメリカ古着のお店が実現できる」と感じたのがその理由だそうだ。

階段を上るとガラス窓のある扉があり、そこを開けるとウッドの壁や棚をアクセントにした、あたたかみのある空間が広がる。店舗は10坪ほどとコンパクトだが、梁を活かした天井や照明のせいか、開放的で居心地がいい。
オーナーの飯酒盃さんは年に3~4回渡米して、年間100日ほど滞在して古着を買い付ける。そのときどきの自分のファッションに対する興味と、古着に触れて生地を確かめて、心にグッと響くものだけを選ぶ。
店内には1930年代から1990年代までの古着が、テイスト別、ジャンル別に並び、その大半は天然素材。化繊のものは少ない。

店に入るとまず目に飛び込んでくるのが入口付近のアート&ミュージアムT。この日はピカソとゴッホの名画Tシャツが壁にかかっていた。
「古着のアートTシャツはオープン当初から扱っています。最近はピックアップする店も増え、価格が高騰して名画と呼ばれるものが手に入りにくくなりました」と飯酒盃さん。人気が高いゴッホやピカソは高額だが、ラックや棚には買いやすく、またセンスのいいグラフィックTシャツが豊富に並ぶ。

店の奥、レジ側の壁には50’sムードの開襟シャツやベースボールシャツなどがズラリ。中には古着市場でピーターパンシャツとして人気を集める珍しいデザインも。
オーナーの飯酒盃さんは2000年代のモード全盛に青春時代を過ごしたが、古着を見るようになってからクラシックなものが好きになり、中でも1965年に発行された写真集『TAKE IVY』に惹かれた。ロゴなどがない当時のスタイルをひとつの軸として、トレディーチもブランドにこだわらないセレクトが店の特徴になった。

スタイリストの三浦さんは仙台にいた大学時代にSNSでトレディーチを知り、上京したときには必ず来店していた。当時はエッジのきいた服装が好きで、珍しい柄モノが豊富なトレディーチは必見だった。今も窓側のラックにはさまざまな柄モノを集めた、目を引く一角がある。

古着好きの間で話題に上がることの多いGOOUCH(グーチ)ば最近、90年代のデッドストックを含む状態のいい古着をかなりの数買い付けたそうだ。アートなプリントシャツが有名だが、珍しいTシャツスタイルのクルーネックトップスも散見。このほかにもフリルシャツ、グルカパンツなどさまざまなアイテムが見つかる。

そしてトレディーチが力を入れているのが上質な生地のスラックス。夏場はシルクや麻といった清涼感のある素材のショーツもそろえており、レジ前のラックに並ぶ。すべてデッドストックというのが見事。
中でも推しは洗えるローゲージシルクのショーツ。経年変化にも味わいがありお買い得だ。

トレディーチに並ぶ洋服や靴はすべて古着だが、革小物は専業ブランド「NL(ニール)」の新品をラインナップしている。
「古いパンツはベルトループの細いものも多く、自分もこのブランドを愛用していたので、ベルトをメインに、アクセサリーやバッグも置かせてもらっています」(飯酒盃)。すべて納得のいく商品構成なのだ。
【スタッフはどんな人?】
マネージャー木本さんは
洋服の楽しみ方を教えてくれる
頼れる兄貴的存在
トレディーチのマネージャーを務めるのは、スタイリスト三浦さんが通い始めた10年前にスタッフとして加わった木本祥太さん。親しみやすさがあふれるキャラクターで、「地元の兄さん」といった雰囲気。この日の着こなしからもわかる通り、ファッションを思いっきり楽しんでいる。

木本さんは大学生の頃からバイト代をほとんど古着に費やしていた服好きで、卒業後はセレクトショップで働いていた経歴の持ち主。やがて「現行の服にはない唯一無二の古着」に魅せられ、トレディーチのスタッフに。
「服好きはもちろん、洋服にあまり興味のない人にも古着の楽しみ方を伝えられたときや、トレディーチに来てよかったと思ってもらえたときが最高にしあわせです」(木本)。現在は木本さんと若手スタッフ・村上幸利さんの二人で店を切り盛りしている。
町田 TREDICI(トレディーチ)の
おすすめアイテム5選
レアなヴィンテージアイテムも多く、50~60年代の古着もきれいな状態で並んでいるのがトレディーチの魅力。実は古着のクリーニングは、オーナーの飯酒盃さんが洗い方を研究して、自分たちの手で丁寧に行っているのだとか。またリペアの専任スタッフが必要に応じて補修して、どの古着も気持ちよく着られるように仕上げている。
そんな古着愛にあふれるトレディーチのおすすめはこちら。
1_切り替えストライプシャツ

フロントの切り替え部分にポケットがあしらわれたストライプシャツ。「上2つがダミーで、3つめのスリットがポケットになった遊び心のあるシャツです。夏に使いやすい薄手のコットン生地で、背面のセンターに配されたオレンジパートはパッチワークではなく織りという、凝ったデザイン」(木本)。
2_ピーターパンシャツ

前身頃の襟元を水平に開くように仕立てたプルオーバースタイルのシャツ。古着屋界隈では“ピーターパンシャツ”の通称で、人気を集めている。「50~60年代に見られるデザインで、ファッションとして面白いなと思ってピックアップしています。数も多くはありませんので、人とかぶらない半袖シャツです」(木本)

ボタンを開けると襟元が大きく開いて着脱ができるプルオーバー仕様。ラフになりがちな夏カジュアルを上品に見せてくれる一着。ストライプのシャツ生地を横使いしているのもそそられるポイントだ。
3_チェックプルオーバー

衿や袖口が配色で裾はゴム入りと50’sを象徴するプルオーバー。「チェック柄の生地感もよく、一枚で主役になります。襟元にボタン留めのスリットが入っているのでレイヤードも楽しめます」(木本)。ボクシーなシルエットは、今のファッションにも合わせやすい。
4_プリント入りサイクリング風シャツ

台車に傘に木…不思議な組み合わせのプリントに見入ってしまう。「ハーフジップでリブニットの襟が付いた、デザイン的にはサイクリングシャツ風のカットソーです。針抜き素材という点もユニークで、総柄ですが一色なので使いやすいと思います」(木本)。

「針抜き」とは文字通り、編み機の針を抜いて編んだカットソー素材で、表面にストライプ状のラインが現われるのが特徴。生地がヨコ方向に伸びる特性があり、下着などにもよく使われる。スポーティなデザインに対して、メルヘンチックな柄が面白い。
5_インドの織り生地パンツ

ヒッピー的でもあり、一周回ってモードにも見えるフラワーパターンが新鮮。「インド綿100%の織り生地を使ったフレアパンツです。ここまでのクオリティのものはなかなかありません」(木本)。今のファッションブランドが打ち出す、70’sスタイルの元ネタのような古着。カジュアルになりがちな夏コーデを脱したい人はぜひトライしてほしい。
次回はスタイリスト三浦さんが
気になったアイテムやコーディネートを紹介!
SHOP DATA
住所:東京都町田市中町1-18-2 WOODBELL 3-B GoogleMap
営業時間:12:00~20:00 不定休
Instagram:https://www.instagram.com/tredici.13/

Photos:Kaho Yanagi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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