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【連載】映画監督 今泉力哉の『このシーンたぶんこういうこと』5作目:橋口亮輔「ハッシュ!」

【連載】映画監督 今泉力哉の『このシーンたぶんこういうこと』5作目:橋口亮輔「ハッシュ!」

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映画監督の今泉力哉が、毎回ひとつの映画のワンシーンにフォーカスし、「映画が面白くなる秘密」を解き明かす連載。

作目
橋口亮輔『ハッシュ!』

監督/橋口亮輔 出演/田辺誠一、高橋和也、片岡礼子ほか 発売元:ハピネットファントム・スタジオ 提供:シグロ 販売元:ハピネット・メディアマーケティング DVD¥2,933
©2001 SIGLO

『ぐるりのこと。』や『恋人たち』で知られる橋口亮輔監督が2001年に製作し、第54回カンヌ国際映画祭監督週間に出品されるなどの評価を得た作品。勝裕(田辺誠一)と直也(高橋和也)のゲイカップルは、ある日、子どもを産むために精子提供者を探す朝子(片岡礼子)と出会う。正反対の性格ながらも距離感が徐々に縮まっていく3人。それぞれ家族から非難を受けつつも、自分たちらしい生き方を模索していく。


映画が面白くなる秘密
「登場人物の心情に寄り添う長回し」

映画の「長回し」は奥が深い。

前回は山下敦弘監督『リアリズムの宿』を題材に、固定カメラ(FIX)のワンカット長回しについて話しました。FIXの長回しは観客が画面上のどこを見てもいい状態になり、役者の芝居を集中して見ることができる。また、映画内と観賞者間での時間経過が同じで緊張感が生まれるなどの効果があります。一方で、長回しにはカメラが固定されずに動き続けるものもありますよね。『ロープ』というヒッチコックの映画の疑似ワンカットなどが有名です。

今回取り上げる橋口亮輔監督の『ハッシュ!』にはFIXの長回しも人物を追う長回しも随所にまざっていて、多様な長回しを学ぶには最適な作品です。

その前に橋口亮輔監督の紹介から。自身もゲイであることを公表している橋口さんは、『二十才の微熱』や『渚のシンドバッド』といった作品でゲイの物語を描いてきました。橋口さんの言葉を借りれば、ゲイの話というよりも自分自身のことを描いているだけってことなんですが。当事者しか同性愛を描いちゃダメとは思わないけれど、その作品群からは、橋口さんにしか描けないものが確実にあると思わせられるし、いま観ても新しい映画がすでに90年代にあったことに驚きます。橋口さんの映画はとにかくベースが明るい。笑えるんです。あと登場人物がみんな人格者じゃないんですよね。ダメさも優柔不断さも含めた人間がゴロンといる。そのあたりがとっても好きです。

『ハッシュ!』の主要キャラは、勝裕(田辺誠一)と直也(高橋和也)のカップルと、結婚願望はないけど子どもが欲しいと精子提供者を探している朝子(片岡礼子)の3人。3人は初めから打ち解けるわけではないのですが、お互いの悩みを知りながらその距離を縮めていきます。しかし、それぞれの主張は家族から理解されないことも多く、社会の常識にもまれながら生きることの苦悩もこの映画は描きます。

今回注目するのは、勝裕の兄家族と直也の母が一堂に会する場面。この一連のシーンは、人物を交互に撮る切り返しの後に約8分のFIX長回しがあり、途中、朝子が自分の考えを訴えるときにそこだけアップになって、その後またFIXに戻ります。前回取り上げた「ワンシーンを長回しだけで撮り切る」方法とはまた違う長回しなんです。ここで挟まれた朝子のアップは、ともすると熱量が上がってしまって説教くさくなってしまう可能性もある。ただ、朝子の主張には確実に迷いや不安も見えるからこの選択も生きてくるんです。『ハッシュ!』は前半のテンポのいいカット割りでそれぞれのキャラクターを見せた後に、人物の関係性や役者の芝居を見せることに適した長回しを要所要所で使うことで、独特のテンポを生み出すことに成功しています。そして映画を観ているときには長回しだと気づかないシーンも多い。つまり長回しが目的になっていないんです。それってとても大切なことなんですよね。

次回はダルデンヌ兄弟『イゴールの約束』における“心の動き”について。

 


映画監督 今泉力哉

1981年、福島県生まれ。2010年『たまの映画』で商業監督デビュー。2019年『愛がなんだ』が話題に。その後も『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』『his』『あの頃。』『街の上で』『かそけきサンカヨウ』などを発表。うまくいかない恋愛映画を撮り続ける。最新作は『猫は逃げた』。

Photo:Masahiro Nishimura(for Mr.Imaizumi) Composition:Kohei Hara

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