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「人生で初めてビンタされました」八条院蔵人、映画『水の中で深呼吸』で体験した共演仲間とのもうひとつの青春。

「人生で初めてビンタされました」八条院蔵人、映画『水の中で深呼吸』で体験した共演仲間とのもうひとつの青春。

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本作は主人公である高校生の朝比奈葵を中心に、高校の水泳部での恋模様や人間関係で揺れ動く心情をみずみずしく描いたひと夏の群像劇だ。その中で葵と並び、登場人物をつなぐストーリーの鍵となるのは、2年生水泳部のエース・安藤昌樹。彼を演じる八条院蔵人に、人の心を丁寧に表現した物語と自信が演じた役どころの魅力について聞いた。

不安やもどかしさなど
役と自分の共通点を演技に生かす

八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 1

──本作の物語を読んだときの感想を教えてください。

以前から安井(祥二)監督の作品を拝見させていただいていて思うのは、物語に悪い人が出てこないということ。誰一人憎めないし、誰一人憎まれる人がいないんです。もちろん群像劇は人と人との対話で展開するので、仲間同士で摩擦が起きたり、角を立ててしまう人物が出てきたりしますが、そんなキャラクターも愛せる部分を持っていて、作品を観終わった後に応援したくなっている。『水の中で深呼吸』を読んだときもそう感じました。僕が演じる昌樹は確かに摩擦を生んでしまう人物だけど、台本を読み進めて彼の内面を知るにつれて、「横から手を差し伸べて、一緒に歩んでいきたい」と思うようになりました。

──そんなご自身が“寄り添いたい”と思う役を演じるにあたり、考えたことはありましたか?

どこか寂しさを感じている昌樹が自分に似ている気がしていました。僕自身、学生時代に周りの人と価値観や考え方が違うことにコンプレックスを抱いていました。みんなの気持ちに共感したいけど、心の奥底で本当に思っていることはちょっと違っていて、「なんで僕はみんなと同じじゃないんだろう」って。でもそれを正直に伝えたら、嫌われて孤独になってしまうことが怖かったんです。そういう昔の経験から、昌樹をはじめ、主人公の葵たちが抱える不安やもどかしさなど、自分との共通点を手繰り寄せて、役に寄り添っていました。

八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 2

──ちなみに、周りの人と価値観が違うと感じた出来事って?

僕は昔から人と関わるのが好きで、友達といるときはより友達思いの人として生きようと心がけています。でも人によっては、僕の振る舞いが暑苦しいと感じたことがあったようで。僕にとって居心地がいいことが、その人にとっては違うということを知りました。

4人組で仲よく行動していたら、あるときから必ず誰か一人がちょっと仲間外れになるようになったんです。それに気づいてある一人に「なんでそんなことをするの?」と聞くと、「暇だから」という回答が返ってきました。なんてことはない遊びだったかもしれないけど、僕は寂しい気持ちになりました。いまでもその気持ちは理解できなくてモヤモヤしているのですが…当時は「それなら僕が外れて三人の友達が平和に過ごしてくれればいいな」と思って、空気を読んで自分の居場所を考えるようになりました。

八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 3

──人が好きだからこそ、相手を思って距離感を考えてしまう。個人的に、それは本作の登場人物がもつ優しさに重なります。共演者の皆さんは同世代の方が多かったですが、撮影期間はどのように過ごしていましたか?

プールに入ったのは久々でしたが、どれだけ歳を重ねても誰かとプールに入ると一瞬で楽しい気持ちになるんだと感じました。撮影期間の大半はプールの中で撮影していて、真夏の撮影でも水の中にずっと入っていると体が冷えることもあって、そのたびにみんなで声を掛け合ったり、太陽が出ている日のお昼休憩では、みんなでごはんを早めに食べ終えて近くに写真を撮りに行ったり。共演者が仲良くしてくれたのもありますが、人と人をつなぐプールの力もすごいなって。撮影期間でいい仲間になれたと思っています。

──すてきですね。おっしゃる通り、昌樹は摩擦を生みながらも水泳部のみんなをつなぐ大事な人物です。葵を演じた石川瑠華さんたち共演者との距離感は考えていましたか?

物語の中の関係とは逆に、石川さんやみんなと仲よくなればなるほど、物語に入ったときの距離感や昌樹が心の奥底で抱える寂しさを、よりにじみ出せるのではないかと思いました。


八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 4

──なるほど。現実とのギャップをお芝居に生かしたんですね。八条院さんはかつてダンサーとして、国際大会「American Dance Drill Team National/International」で日本代表として優勝した実績をお持ちです。またサッカーを特技として挙げていますが、スポーツやダンスの経験が、今回の水泳選手役はいきましたか?

そうですね。僕はスポーツやダンスの経験から「その人の体つきはその人の私生活から出る」と考えています。昌樹はこの物語において重要な役どころですし、さらに高校2年生の水泳部エースなので、彼が葵たちに掛ける言葉や振る舞いに意味や説得力を持たせるために、見た目=体をつくる必要がありました。

台本をいただいてから撮影までスケジュールは限られていたのですが、自分なりに元水泳選手の方や水泳をやっていた友達に時間をいただいて、飛び込みの仕方やバタフライといった僕がこれまで習得してこなかった水泳の技を練習しました。実は、昌樹が泳ぐシーンは本編ではないのですが(笑)、スクリーンには映らなくても水泳選手らしさはなにげない行動を通して物語にちゃんと出ると思ったので、水泳部エースとしての時間の過ごすよう心がけていました。

──確かにプールサイドを歩くときの振る舞いやプールの水面から出る健康的な体つきは、本物の水泳選手のように見えました。

劇中で着用する水泳パンツも買いに行ったんです。もちろん衣装さんがご用意してくださっていたんですが、大会に出て活躍している方の水泳パンツには大会承認マークがついているので、僕も昌樹のディテールに取り入れようと準備しました。

プールの水面のように揺れ動く
繊細な感情を丁寧に描いた

八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 5

──この映画で初めて経験したことはありますか?

お芝居ですが、人生で初めてビンタされました。しかも複数人に。「ビンタって痛いんだな」と思いました(笑)。

──(笑)。この物語で重要なシーンのひとつですよね。

昌樹として生きている中で、あのビンタはすごく愛のあるビンタだと思いました。痛いし、恥ずかしいことだけど、昌樹が前に進みのちに成長するためのビンタ。あれも込みで、彼の青春だなと思っています。


八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 6

──青春といえば、主人公の葵と同じ水泳部の1年生たちの日々の交流は見ていて眩しさを感じました。葵、もとい演じる石川さんたちを見ていていかがでしたか?

本当に羨ましかったですね。僕もオリンピックパン(葵たちが学校帰りに立ち寄るパン屋)のベンチで、石川さんたちと一緒にパンを食べたかったですし、田んぼのある美しい景色の中を一緒に歩きたかったです。プールのシーンではほとんどの登場人物といますが、プール以外では昌樹は基本的に誰かと2人でいる場面が多かったんです。もっとみんなでワイワイしたかった(笑)。

また物語の中の関係性もすてきでした。みんなと一緒に努力をできることは、すごく運がいいことだと思っています。仲間と一緒に過ごして汗を流せる時間って当たり前ではなく、かけがえのないもの。人生の中でもある種の1つの大事な行事だと思います。なので、「昌樹ももっとそのシーンを混ぜてほしい」って安井監督には思っていました(笑)。

八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 7

──本作では、そんな青春にある葵たちの、好意や友情で揺れ動く心を繊細に表現しています。八条院さんが昌樹を演じて、そして『水の中で深呼吸』を観て受け取ったものは何ですか?

僕個人が感じた話になりますが、コロナを経て喜びなどの感情を共有するときに、握手をしたりハイタッチをしたりハグをしたりすることがなくなっているように感じています。むしろ人と触れ合うことに違和感を抱き、コミュニケーションに慎重になっているのではと。この作品では、例えば葵と昌樹が手をつなぐという一見単純な行動に、奥行きのある気持ちが乗っているというような描写がたくさんあるんです。僕も、まるでプールの水面のように揺れ動く心情を丁寧に表現したいと意識しました。

そんなシーンを観て、人と人が関わり合っていく中で生まれる温かさを、より多くの人と共有できたらいいなと思って。簡単なことじゃないと思うけど、簡単なことだとも思うんです。僕も人に優しくできる人でありたいと思うと同時に、きっと昌樹もそう思うようになっているんだろうなと感じながら演じていました。


八条院蔵人 映画『水の中で深呼吸』 8

──最後に、八条院さんが思う俳優の魅力や演技を続けるモチベーションを教えてください。

僕は小学生のころからよく映画を観に行っていて、上京して俳優を志すまでは、ドラマや映画に登場する人物が、現実世界にリアルに存在すると思っていたんです。いま思うと恥ずかしい話ですが、木村拓哉さんがアイスホッケー選手やパイロットを演じる作品を観て、「この人は何でもできる人なんだ」と信じていました。『マトリックス』でキアヌ・リーブスさんが演じるネオや、『ハリー・ポッター』でダニエル・ラドクリフさん演じるハリーが生きている世界も、どこかに存在するものだと。

──純粋な気持ちで映像作品に浸っていたんですね。

そうですね。そしてご縁があって東京に来ることになって、最初にお芝居のレッスンをした時に、「蔵人、これが芝居だよ。あなたが小さい頃からいろいろな世界を与えてくれた映像の中の出来事はフィクションで、一人の俳優がさまざまな人物を演じているんだよ」と教えていただいて「えっ、どういうことですか?」と。僕としてはすごく驚いたのですが、木村拓哉さんや多くの俳優が僕に見せてくれた世界や感動は本物で、掛け替えのない思い出として残っています。もし自分のように、俳優の演技やそこから生まれる物語から何かを受け取って、心が動く人がいるのなら、僕は自分の体と五感を通して作品を創造したいと考えています。それが俳優の魅力であり、続ける動機になっています。

八条院蔵人|KURODO HACHIJOIN

1999年6月28日生まれ。京都府出身。主な出演作に、ドラマ『大奥2』(2023)、映画『砕け散るところを見せてあげる』(2021)、『水の中で深呼吸』(2025)、舞台NODA・MAP『正三角形関係』(2024)がある。ダンスを特技とし、国際大会「American Dance Drill Team National/International」に日本代表として出場し優勝。2021〜22年にかけて、ドラマ『仮面ライダーリバイス』のレギュラーキャストを務めた。

公式Instagram:https://www.instagram.com/hachijoin_claud.official
公式X:https://www.instagram.com/hachijoin_claud.official

『水の中で深呼吸』

監督:安井祥二
出演:石川瑠華、中島瑠菜、倉田萌衣、佐々木悠華、松宮倫、八条院蔵人、しゅはまはるみほか
●7月25日より、公開
©2025 biyori inc., basil inc.

水泳部に所属する、高校1年生の葵(石川瑠華)。理不尽な上級生からの嫌がらせに耐えながら、黙々と練習に打ち込む日々を送っている。そんな葵には、誰にも言えない、もうひとつの悩みがあった。同級生の水泳部員・日菜(中島瑠菜)に惹かれる気持ちを持て余していたのだ。この胸の高鳴りは、友情なのか、それとも…。また、どんなときも自分を励ましてくれる、幼馴染で同じ水泳部の昌樹(八条院蔵人)に救われながら、葵は昌樹に対しても友情以上の感情が芽生え始めていることに気づき、戸惑いを隠せないでいた。

公式HP:https://mizunonaka-movie.jp/

Model:Kurodo Hachijoin Photos:Teppei Hoshida Hair & Make-up:Tomoko Tominaga Stylist:Takashi Shimaoka   Azuka Kitamura[Office Shimari] Interview & Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]

力石恒元

力石恒元

エディター

ファッションからインタビューテーマまで幅広く執筆。音楽、映画、カルチャー、ガジェットなどに精通。

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