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ブリットポップを牽引した3組のバンドにフォーカス。2025年の今、取り入れるならどんなエッセンスが必要なのだろうか。スタイリスト松川総が考えるアイコン像とは?
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Jarvis Cocker
    
スーツをあでやかに着こなし
エレガンスを味方に

「オアシス、ブラー、パルプの3組で一番ファッションの奥行きがあるのはパルプのジャーヴィス・コッカーです。彼らの音楽も大好きで、知的なルックスなのに、テンションのあがる曲もあって、よく聴いていましたね。現代流にジャーヴィスの着こなしをつくるなら、イギリスよりもイタリアやフランスのブランドのより耽美なセットアップがいいと思います。タイトなシルエットで着たいフェンディのスーツは突出してエレガントでフェティッシュ。彼のパフォーマンスからにじみ出る狂気と繊細さはレースのシャツを内に仕込んで表現してみました。実はショッキングピンクのソックスをはいているのですが、ジャーヴィス自身も見えないところまでこだわってそうですよね」(松川総さん)。シックなブラウンのウールクレープ素材。外すことができるラペル部分はシルクの光沢感が美しい。
ジャケット¥473,000・シャツ¥271,700・パンツ¥173,800・靴¥145,200/フェンディ ジャパン メガネ(カトラー&グロス)¥49,500/オプティカルテーラー クレイドル 青山店 その他/スタイリスト私物
新谷洋子は、PULPジャーヴィス・
コッカーを語らずにはいられない!
    
PROFILE
音楽ライター
新谷洋子
ファッション雑誌の編集を経て、フリーランスの音楽ライターに。欧米ロックからKポップまで主に海外ミュージシャンの取材、アルバムのライナーノーツの執筆も担当する。


1995年にイギリスで開催されたグラストンベリー・フェスティバルにて。この年パルプは「Pyramid Stage」のヘッドライナーを務めた。
パルプってブリットポップを語るうえで避けて通れないバンドだけど、誕生したのは1978年。5枚目のアルバム『Different Class』で大ブレイクするまで15年以上もかかっていて、シンセポップ×グラムロックなサウンドもそうだし、他のバンドとは世代も毛色も違うんですよね。

ミュージシャンのエルヴィス・コステロにリスペクトを捧げたポートレート。
例えば故郷は、ロンドンでもマンチェスターでもなくシェフィールドという英国中部の町。そこで15歳のときにバンドを結成したのが、当時のメンバーでは唯一残っているフロントマンのジャーヴィス・コッカーです。労働者階級の出身で、バンドが鳴かず飛ばずの時期は失業保険で食いつなぎ、一時はあのファッション科で有名なアートスクール、セントラル・セント・マーチンズに通って映像制作を勉強したりしながら細々とパルプを存続させ、90年代に入るとブリットポップの風に乗って、いよいよポップスターの座に―。

2019年に急逝したロック界のレジェンド、スコット・ウォーカー。
以来、英国を代表するスタイル・アイコンのひとりとしても必ず名前が挙がるジャーヴィスは、スポーティ&カジュアルが主流のブリットポップ時代に、70年代テイストの細身のスーツをご愛用。素材はツイードやコーデュロイやベロアだったりで、ネクタイは締めたり締めなかったり、太縁のセルフレームのメガネも必須。英国では一般的に“地理の先生”と呼ばれている、教室とか図書館が似合うルックがあるんですけど、まさしくそれです。

ジャーヴィスの着こなしのインスピレーションのひとり、セルジュ・ゲンスブール。
本人も2007年にアクネ ストゥディオズが手がける雑誌『アクネ ペーパー』に登場したとき、「僕はちょこっとエッジィな地理の先生をめざしている」と発言していました。高温多湿な野外の夏フェスだろうと、いつもこの格好でぎこちなく踊りながら歌う姿を奇異に感じるかセクシーと見なすかは人それぞれですが、この2025-26年秋冬のランウェイではスーツやセットアップがトレンドにカムバックしているので、彼をスタイリングのお手本にするのもアリかもしれませんね。

2025-26年秋冬コレクションのランウェイでは、モダンなスーツスタイルが多く発表された。ジャーヴィスのようなシャープな着こなしの見本がずらり。2025年のLVMHプライズを受賞したソウシオオツキより。
シブい低めの声で、時々語りを交えたりする芝居がかった歌い方も独特で、これはたぶん、ジャーヴィスがリスペクトするミュージシャンのスコット・ウォーカーやセルジュ・ゲンスブールの影響だと思います。セルジュっぽさはフェティッシュなムードの歌詞の傾向にも表れているんですけど、彼が描くストーリーはたいていふがいない内容で、ウイットも満々。失笑させたり、切なさでホロリとさせたり、リリシストとしても愛すべき人なんですよね。

異なるテクスチャーの素材を組み合わせ、洗練されたコントラストを楽しめる今季のエルメス。
セント・マーチンズで出会ったお金持ちの女の子にインスパイアされたという傑作ブリットポップ・アンセム「Common People」は、そんなジャーヴィス節の真骨頂。ユーモラスな格差ラブストーリーのようで、英国の階級社会を鋭く風刺しているんです。ノンポリなブリットポップ時代にしばしば社会を論じていたことでも異彩を放つパルプは、アウトサイダーの代弁者だという側面があったんです。「Common People」に劣らぬ名曲「Mis-Shapes」は、自分たちと同じようにマジョリティになじめない人たちに捧げる応援歌。オアシスやブラーに漂う勝ち組のにおいが、彼らには少しもなかった気がします。

シックなスーツの装いもコッキの手にかかれば、クラフト・タッチな1着に。
ちなみに10年間のブランクを経て2023年に活動を再開したパルプは、今年四半世紀ぶりの新作『More』を発表して完全復活! 今年の1月、24年ぶりに実現した来日公演ではうれしいことに、大勢の若いファンが声を張り上げてジャーヴィスと一緒に歌っていました。すっかり白髪が増えた彼は相変わらずシックなスーツを着込んでクネクネ踊っていましたが、古着を買いあさっていた若い頃とは違って、今やサヴィルロウの名店の顧客。2年前に亡くなった、ザ・ビートルズやデヴィッド・ボウイにも愛された伝説的テイラーのエドワード・セクストンの最後の仕事は、ジャーヴィスが最近のツアーで着たスーツの数々のデザインだったそうですよ。

メンズ クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスと、NIGO®が共同で発表したルイ・ヴィトン。ストリートカルチャーとダンディズムが融合したフレッシュなルックがラインナップした。
パルプの魅力を堪能できる
3枚を厳選!
    

『More』
今年の6月に登場したばかり。パルプ節の一番おいしい部分を熟成させ、21世紀仕様に見事アップデート! 24年ぶり8枚目にあたる最新アルバム。

『This Is Hardcore』
ブラーの『blur』と並んで、“ブリットポップの終焉を告げたアルバム”と位置づけられているのがこの1枚。何ともいえない倦怠感が充満しています。

『Different Class』
ユーモラスでスリリングなポップソングがこれでもかと詰め込まれた捨て曲なしの5作目で、パルプは初めて全英1位を獲得。10月末に30周年記念盤も登場します。
Brian Rasic・Kevin Cummins・Gems・jérôme prébois/getty images
Photos:Tatsunari Kawazu Hair&Make-up:Tenju Stylist:So Matsukawa Models:Ryoto Shisaka[MEN’S NON-NO model] Text:Michino Ogura Hiroko Shintani
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