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ブリットポップを牽引した3組のバンドにフォーカス。2025年の今、取り入れるならどんなエッセンスが必要なのだろうか。スタイリスト松川総が考えるアイコン像とは?
Icon 1
Liam Gallagher
ギミックはいらない。
自由に、等身大でいられるスポーティルック

「オアシスのヴォーカル、リアム・ギャラガーってファッションのスタイルに落とし込むのが一番難しい。彼は“1+1=2”の着こなしで十分で、混ぜものは必要ないと考えると思うんです。当時僕が見ていた彼は、ステージに立つときも、ステージを降りてインタビューを受けるときも同じ服装。自分を必要以上に装わない潔さが格好よかったんですよね」(松川さん)。今の時代にリアムの哲学を取り入れるなら、アノラックパーカはシンプルながら素材は上質なシルク混のものをチョイス。シャリ感が心地よいチェックのシャツとプレーンなパンツに合わせて、等身大の着こなしでまとめたい。
パーカ(サンモント)¥50,600/サンルーム シャツ(ナイスネス)¥107,800/イーライト パンツ¥24,200/セダン オールパーパス 靴¥18,700/キーン・ジャパン
あの人の“極私的”oasis愛語り
オアシス・リバイバルの必然性とは

リアムは短めのバングスがトレードマーク。無造作なセットも自由奔放さを裏づける。
90年代半ばに初めてオアシスを見たときは、王道サウンドととんでもなく歌唱力の高いヴォーカルとの組み合わせに驚きました。この8年間、メンズノンノの連載のために街に立って若い子たちのスタイルの変遷を追ってきた僕が、ヘアスタイルからオアシス人気の源を読み解くと、グラマラスなKポップへのカウンターなのでは、と思うんです。今やKポップカルチャーは若者に行き渡り、スタンダードになっています。その反動でブリットポップの王道さに興味を持っているのでは? リアム・ギャラガーってロックスターなんだけど、オールドスクールなスタイルで、パンクでもグランジでもない。今の子って泥くさいのは嫌いだから、リアムのエッジのない感じが好きなんだと推測しています。
ヘアスタイリスト
KANADA
雑誌や数々の広告やショーで活躍するヘアスタイリスト。本誌で「東京 hair DO!!!!」を2024年まで連載。
夢にまで見たライブは一生の宝物

マンチェスターにオアシス復活公演を観に渡英。マンチェスター・シティとのコラボグッズを購入した。
一緒に仕事をしていたディレクターさんとオアシスの話になって。彼は実際にライブを観に行ったこともあるし、ド直撃世代。マンチェスター公演のチケット争奪戦に2人で参戦してみないかと誘われたんです。無事に彼がチケットを入手できて、イギリスに観に行くぞ! と心が決まりました。1年かけて実感していきましたね。ついにステージに彼らが出てきたときは、ひたすら“かっけー!”という言葉しか出てこない。地元公演ということもあって、観客がイントロからサビまですべて合唱していて、リアムの声が聞こえにくいほど! でも、そんなことが気にならないぐらい、みんながうれしそうなんです。もうオアシスって、僕にはサンタクロースみたいな存在だったので、夢を見ているみたいな感覚。5時間ぐらい立ちっぱなしで、足も頭も痺れていたからかもしれませんが。みんなにも伝えたくて、10万円分のお土産を買ったんですけど、ほとんど人にあげちゃった。僕は思い出を持ち帰ってきました!
芸人 かが屋
賀屋壮也
お笑いコンビ「かが屋」のメンバー。オアシスをはじめUKロックのほか、邦ロックへの造詣も深い。
表紙撮影の裏側は緊張の10分間

2005年12月号のメンズノンノ。ジョン・レノンが好きなリアムに同じポーズをとってもらった。
2005年12月号のメンズノンノのカバーに登場したリアム・ギャラガーを撮影しました。当時、オアシスファンだった編集者の熱意が叶い、誌面に登場してくれることになりましたが、表紙を飾るには用意した洋服を着てもらうことが条件。スタイリストがラック2本分の洋服を準備してきてくれましたが、現場で本人はもしかしたら着ないかもしれないと緊張が走ります。リアムが熱烈なマンチェスター・シティのファンだと調べていたので、会って早々にその話をすると打ち解けていきました。撮影していくうちに、一瞬の隙があり肩からジャケットをかけたのがこの奇跡の1枚だったんですよね。
フォトグラファー
荒井俊哉
国内外のファッション雑誌や広告で活躍するフォトグラファー。無類の音楽好きとして知られる。
嘘がないありのままの人間性に惹かれる

兄のノエル派という平川さんは、デニムスタイルが中心の気負いのないスタイルも好きなのだそう。
アート性の高いパフォーマンスと叙情的なサウンドで心をつかむバンドKhaki。ツインヴォーカルを務める中塩博斗さんと平川直人さんもオアシスに興味を持ったメンズノンノ世代だ。「オアシスを見て感じたのは、背伸びをしない格好のよさ。前の世代への反動だったのか、等身大で居続けようとしているところに意志を感じます。難しいことをやっていたとしても最終的にはポップであろうという姿勢に影響を受けました」(中塩)。「周りの大人の言うことは素直に聞けないけど、ノエルが言ってることはなぜかすとんと納得できる。嘘のない人間性のある人が作る歌だから、どんな人が聴いてもうれしいし、楽しい気分になるんだなと考えさせられます」(平川)
ミュージシャン Khaki
中塩博斗&平川直人
気鋭のオルタナティブ・ロックバンドのメンバー。中塩さんと平川さんはギター&ヴォーカルを担当。
ワーキングクラスの反骨心をいつも胸に

トレードマークともいえるモッズコートでステージに立つリアム。その飾らない佇まいは今も健在。
オアシスは自分のあり方に最も影響を与えた存在です。何かに対しての怒りや、どうしようもなく腹が立つという感情は否定しなくていいし、むしろそれがエンジンになる。でも、とにかく暗いことを言いたくないという彼らの姿勢に憧れています。意外とそういうマインドの人っていないんですよね。現代のスタンダードとなったヒップホップカルチャーと異なり、オアシスは拝金主義的なところがないのもいい。スターになり莫大なお金が入ってきて、「地元に新しい家を買ったら」と言ったら母親がいらないと。「じゃあ、門を新しくするよ」と返したエピソードがあるぐらい。服装もアノラックやジャージでしたし、いつも反体制的で自由でいたいというメンタリティが込められていたのではないでしょうか。
『STUDY』編集長
長畑宏明
カルチャーやファッションなど多彩なテーマで刊行するインディペンデント雑誌『STUDY』を手がける。
音楽とサッカーとビールで学ぶ異文化

[右]アルバムのロケ地で記念撮影したときの写真。[左]オアシス再結成を記念してBENEで行ったイベントの様子。
デヴィッド・ベッカムがインタビューでザ・ストーン・ローゼズの名前を挙げていて、その後ブリットポップのオアシスやブラーを知りました。イギリスの一般家庭では自分が暮らす街のフットボールクラブを応援することがごく自然なので、ミュージシャンたちもクラブを応援していますよね。オアシスは特にマンチェスター・シティ贔屓で有名。でも、リアムの曲「Once」のPVではライバルチームのマンチェスター・ユナイテッドのレジェンド選手が出演したこともあって、複雑な関係を超えて新しい文化を創出した瞬間を目にした気がしました。
BENE/4BFC コ・ファウンダー
モリタトシキ
UKのヴィンテージ・フットボール・グッズを取りそろえるBENE、4BFCのコ・ファウンダー。
Michel Linssen・Koh Hasebe/Shinko Music・Pete Still/getty images
Photos:Tatsunari Kawazu Hair&Make-up:Tenju Stylist:So Matsukawa Models:Yudai Toyoda [MEN’S NON-NO model] Text:Michino Ogura
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