▼ WPの本文 ▼

「いつか子どもに読ませたい!?
愛と命を描く傑作ファンタジー」

『ケントゥリア』1〜5巻
暗森 透(集英社)
自由を求めて奴隷船に乗った少年・ユリアンと、船上で出会った赤ちゃん・ディアナによる物語。作者・暗森透はこの作品が初連載。『少年ジャンプ+』にて毎週月曜日に更新される。単行本は5巻まで発売中。
マユリカ・中谷のマンガは、ずっとトモダチ
相方の阪本に子どもが生まれたんです。初めて抱っこさせてもらったときは「こんな幸せな気持ちになるのか」と感動しました。もし僕にも子どもができたらどうしよう? なんて想像したりして。“家族”といえば思い出す漫画が『ケントゥリア』。
親に捨てられた密航者の少年・ユリアンが、とある出来事をきっかけに100人分の力と命を手に入れる物語です。ストーリーは熾烈な戦いを描くダークファンタジーですが、随所に“家族愛”が描かれます。例えば、序盤でユリアンはディアナという赤ちゃんと旅をするのですが、その中で彼に愛情が芽生えていく様子にグッとくる。道中で兵士の女性・アンヴァルや彼女が育てる子ども・ティティと出会い、家族のように暮らすシーンも温かい気持ちになります。
この作品で注目したいのは、描写の“引き算”と“足し算”の巧みさです。まず驚いたのが、第1話で時代や舞台を詳しく説明しないところ。登場人物の服装や彼らがいる帆船、台詞に登場する「奴隷」などの単語だけで世界観が理解できるんです。ファンタジーものは設定の説明にページを割きがちなのに、思い切って省略してしまうところが見事です。その一方でじっくり描かれるのが、登場人物の人となり。例えば、アンヴァルが親と過ごした思い出が挟まれることで、彼女がティティやユリアン、ディアナに抱く愛情に説得力が生まれる。その分、兵士として戦う残酷な現実も際立つんです。100人分の命があるのに、ユリアンが戦闘の中で簡単に死を選ばないところも、作者の暗森透先生の美学を感じます。
圧倒的な画力と構成力で命や愛の尊さを描く『ケントゥリア』。いつか僕の子どもが大きくなったら読ませてあげたいです。ってまだ彼女もいないですが……(笑)。

©暗森透/集英社
ユリアン(右)が船で出会った女性・ミラ(左)と過ごすシーン。

Nakatani
2011年に相方の阪本と、お笑いコンビのマユリカを結成。ポッドキャスト番組『マユリカのうなげろりん!!』が大人気。自らも漫画を描いており、『シャンプーハット』が小学館新人コミック大賞の佳作を受賞。
Text:Koki Yamanashi
▲ WPの本文 ▲