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最近は、AIが勝手におススメしてくれる配信作品の中からチョイスして家で観ることが多いのですが、その中にこの作品が入っていました。自分では観た気でいたのですが、よく考えると内容が思い出せないなーと思って改めて観てみたらすごくいい映画でした!


『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』
ブルーレイ: 2,075 円/DVD: 1,572 円 (税込み) ※2025年9月時点
発売・販売元: 株式会社ハピネット・メディアマーケティング
(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.
さえない男子、試行錯誤の“タイムトラベル”で彼女の心を掴む!
主人公の結婚式など、覚えていたシーンもありましたが、全体に「こんなにもタイムトラベルしてたっけ!?」と記憶以上にファンタジー設定で驚きました。でもそれを「我が家には秘密がある」と主人公のティムがナレーションで説明してくれるストレートな始まり方がすごくよかったです。そして純粋に「いい映画だなぁ」と感動しました。

お父さんから知らされたその秘密というのは「うちの家系は男性に限って21歳になるとタイムトラベルが出来るようになる」ということ。しかもその方法というのが、メッチャ簡単で(笑)! クローゼットやトイレなど誰にも見られない狭い空間に入って、手をギュッと握って力を入れたら、頭に思い浮かべた日に戻れるって、すごいお手軽なんです。

でもお父さんは「タイムトラベルが出来てよかったのは、たくさん本を読めたこと」って言っていて、地味だなって(笑)。彼らは何度もタイムトラベルをするんだけど、決してお金のために過去に戻ったりしないという、その純粋さがまずよかったです。
ティムは“タイムトラベル”の技を、ひとめぼれした女性メアリーと仲よくなるために使うんだけど、せっかく彼女とうまくいきかけた時に、知人のために軽い気持ちでさらにタイムトラベルをしたことで、メアリーと出会ってなかったことになってしまう。そこでティムは、メアリーと出会い直すために“技”を駆使して奮闘します。

ティムは、メアリーが好きだというモデル、ケイト・モスの写真展に通い続け、遂にメアリーが現れて話しかけるのですが、彼女からしたら初対面なのに親し気に話しかけられてちょっと怖い(笑)。そこでテイムは何度も“出会い直し”を繰り返して、ようやく上手く出会うことが出来るんです。少しでもメアリーに好かれたくて、小さな失敗をするたびに「もう1回やり直し」て微調整していく。それが全然観飽きなくて、ワクワクするんですよ。最初は失敗ばかりで笑えて楽しいし、「次はどうするんだろうな?」って。

ティムとメアリーが初めて出会ったのが“暗闇バーでのブラインドデート”っていうのも、ちょっと面白かったですね。相手の姿が見えない合コンみたいな感じというか、真っ暗闇の中で話をして気が合うかどうか決めるんです。出会いを求めて行ったティムと友達が女性たちと話をする、暗闇でその会話だけが聞こえるシーンも、なんか面白かったです。外に出たら相手はどんな人なんだろうって、ちょっとしたドキドキもありました。
家族、友人、自分のために駆使していた“能力”を封印した理由とは
ティムは、「よりよい」選択のために細かくタイムトラベルで「やり直し」をして、やがてメアリーと結婚して子供が生まれる――という、幸せな生活を送ります。そんなピュアな恋愛を軸にしながらも、僕は同時に描かれていく“家族”の物語の方に、より深く感動しました。最大の感動ポイントは、ティムが大切なものを守るためにタイムトラベルを「しない」決断をすることです。
僕ら普通の人にとったらタイムトラベルなんて出来ないので、1日は1度きりですが、それまではティムは何度も何度も戻ることが出来ていましたよね。でも、ある理由から、もう2度と過去に戻れなくなるんです。それが分かった時の彼の決断に、もう本当に僕、泣きました!
自分のお父さんが亡くなったあとでもティムは何度も過去に戻ってお父さんに「会えて」いる。だけど、ティムが「今日が最後だ」と決めた時、目の前のティムがタイムトラベルで戻って来たとわかっているお父さんは「そういうことか」と事情を察するんです。
その時二人は卓球をしているんだけど、最後に二人でタイムトラベルして手を握った時に、お父さんがチラッと息子を見るんですよ。その仕草というか、その眼差しにもすごい愛情を感じました。そこから二人で「お父さんが一番戻りたい時」に戻り、幼いティムと海で遊ぶシーンになるのですが、これはかなり食らいました。少年のティムがお父さんと手を繋いで歩いていく姿に本当に泣きました!

そして二人は色んな話をして、実はお父さんは1日を2回ずつやっていた、ということが分かったりして(笑)、別の作品では見たことがないような、本作ならではの独特なSFファンタジーの設定でした。でも、それによって大切なことを見つけるというのがいいんです。
1日を1度きりしか生きられない僕たちにこそ刺さる“気づき”がある!
例えばコーヒーショップで自分が不愛想だと店員さんも不愛想だけど、それに気づいてやり直せば相手も笑顔になってくれる。そうしたら1日が全く違う気分で過ごせるんですよね。メッチャ考えさせられました。こっちが変われば相手も変わる。優しく生きよう、生きたいなって思いました。そんな風に僕らの生活にも落とし込んでくれるのもいいんです。
しかも、それで終わりかと思ったら、ティムは「お父さんが考えていた以上の使い方を身につけたよ」と、本来の自分の幸せな生活に戻っていく。たまらなくいい終わり方だなと思いました。
ちょっとネタバレになってしまうのですが、どうしてタイムトラベルできなくなるかというと、ティムに子どもが産まれるからなんです。タイムトラベルで違う人生をやり直したら、子どもも違う子どもになってしまう。もちろんそれは困るわけで「もう絶対に、この子じゃなくちゃ」となったら、運命を変えてしまう危険を冒せなくなる、ということなんです。
ある意味、自分の親か子どもかを選択しなければならないわけだけれど、それも人生を深く考えさせられてすごく上手い設定だなと思いました。人生には悲しいことも色々と起きるけれど、いつか離れてしまっても消えない親としての絶対的な愛情、何ものにも代えがたい愛情というのが本作全体のハッピーな土台になっているのかな、と思います。
個性的で欠点まで魅力的なキュートな“脇役”から目が離せない
僕が本作でちょっと好きだったのは、脇キャラ。例えばティムの叔父さんや、ローリーというティムの友だちの存在。特に叔父さんはちょっと抜け過ぎているけれど(笑)、それが癒しになっているんです。もちろんティムのお父さんはとてもダンディーで、家族思いで楽しくて素敵でした。スタイルも声もすごくいい。でも、やっぱり僕は、こういう映画で“緩衝材的な役回り”を担ってくれるようなキャラクターがとっても好きなんですよね。

ティム自身も主人公っぽくない主人公というか、結構いいキャラしてますが(笑)。イギリスのコーンウォールという自然に囲まれた中で伸び伸び育ちました、っていう感じがしました。すごく優しくて愛されキャラで、ちょっとドン臭いところもあるけれど、だから応援したくなるし、微笑ましいんですよね。
繰り返すタイムトラベルの中で見せる“小さな違い”の演技がすごい!
みなさん、本当に楽しそうに伸び伸びとお芝居していて、すごいなと思いました。しかも、お芝居がすごく細かいんですよ。例えば、過去に戻ってやり直そうとする理由が毎回あります。そういう理由をちゃんと見せつつ、本来の時点に戻ってからの行動などが、とても細かくちゃんと作られているんです。とても細かいけれど、伸び伸び楽しそうにやっていて、すごくハッピー感がありました。僕らはやり直せないけれど、「失敗してもいいんだよ」と言われているような、とても優しい映画ですね。
だからこの映画は構えずに、誰とでも、一人でも、気軽に観て欲しいです。いつ、どんな時に観ても、きっと前向きに気持ちにさせてくれると思います。

僕の記憶にも残っていた結婚式のシーンがとってもよかった。ガーデン結婚式だというのに、嵐のようになって雨も風もすごいことになるんですよ(笑)。参列しているみんなも、最初は困惑したりイラっとする人もいるんだけれど、それが案外いいかもなって観ながら思って。

もちろん美しく晴れた日の方がいいと誰もが思うけれど、ああいうドタバタな中で、みんなで「わあ」っと走って。あんな記憶って、いつまでも残りそうな気がするんです。テントからみんなで走っていく姿が、ジミー・フォンタナの「Il Mondo」という曲が流れる中でスローモーションのように映されていくのですが、それがすごく面白かったです。うん、僕はあの結婚式をやり直さずに、あのまま大雨の結婚式でも笑っていた記憶のままで留めて欲しいですね。


『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(2013年/イギリス/124分)
イギリス南西部コーンウォールに住む青年ティム(ドーナル・グリーソン)は21歳の誕生日、この家系の男性たちはタイムトラベル能力があることを父親から聞かされる。やがてロンドンに出て運命の女性メアリー(レイチェル・マクアダムス)に出会ったティムだったが、タイムトラベルが引き起こした不運で、彼女との出会いがなかったことになってしまう。ティムはタイムトラベルを繰り返しながら、遂にメアリーの愛を得ることに成功するが。父親役にビル・ナイ。監督は『ラブ・アクチュアリー』のリチャード・カーティス。




今、初めての舞台に挑戦しています。とにかく、見ることやること全てが初めのことばかりで、また新しい世界に来たみたいな感覚です。分からなくて当たり前、出来なくて当たり前だと自分に言い聞かせながら稽古に臨んでいます。そんな時も、ティムだったらタイムトラベルが使えるのになって思ったり(笑)。例えば舞台上では一度喋り始めたら絶対に喋り続けなきゃいけないけれど、きっと「巻き戻したい!」と思うことがあるだろうなって。でも素敵すぎる共演者の方々に見守られて、日々頑張っているので、是非、楽しみにしてください。
「Bunkamura Production 2025 DISCOVER WORLD THEATRE vol.15『リア王』NINAGAWA MEMORIAL」 10月9日~11月3日まで東京・THEATER MILANO-Za、11月8日~16日まで大阪・SkyシアターMBSで上演予定。
Text:Chizuko Orita
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