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世界中のアニメファンが、超ド級のクオリティに驚愕した『ダンダダン』(龍幸伸によるコミック原作)。こんなにも注目と人気を集めた理由を、シリーズ構成・脚本を手がける瀬古浩司の視点を通して追う。
シリーズ構成・脚本 瀬古浩司

Hiroshi Seko
ガイナックスで制作進行や脚本を務めたのち独立。2013年のアニメ『進撃の巨人』で脚本を担当した。近年の代表作は、アニメ『呪術廻戦』シリーズ、『チェンソーマン』シリーズなど。アニメ『ガチアクタ』が放送中。
監督たちのアニメ愛が詰まった
映像を観てぶっ飛びました

ジャンルを超えてさまざまな人気作品の脚本やシリーズ構成を手がけてきた脚本家・瀬古浩司も、『ダンダダン』に邂逅(かいこう)するやいなや、その大胆な発想や豊かなキャラクター像に、一気に引き込まれたと振り返る。
「約3年前、仕事の依頼を受けたときに初めて原作漫画を読みました。もともと超古代文明が好きでオカルトの素養はあったんですが、この作品がすごいと思ったのは宇宙人・幽霊・UMAの三者が実に自然な形で同居していること。そして三者が入り乱れて戦いを繰り広げる。加えて、モモやオカルンなどキャラクターのセリフが生き生きしていて掛け合いがリアル。それらがとんでもない画力と描き込みで表現されている。これが面白くないわけがない」

文字情報である脚本からアニメーションが紡がれたとき、想像を超えるクオリティに圧倒されたという。
「第一期では、事前の打ち合わせで山代監督の中に山ほどあったやりたいことをお聞きして、それをシナリオに入れていく作業が楽しかったです。例えば、第4話をモモとオカルンが“バディ(相棒)”になるようにしたいと聞いて、カニの地縛霊とのチェイスの分量を原作より増やした点。また、第7話ではアクロバティックさらさら(さらさらの髪とアクロバティックな動きで知られる妖怪)の過去パートは大事に描きたいとのことだったので、構成の段階で尺的に余裕をもたせて描写を増やせるようにしておきました。その後、完成した映像を観て、ぶっ飛びましたね(笑)。山代監督が最初から宣言していた『僕はこういうふうにやりたい』ということが、演出にふんだんに詰め込まれていて、驚きを通り越して感動してしまって…。例えば、劇中でふと重要なセリフを発したときに、モモのイヤリングが印象的にキラッと光ったり、何げない会話のシーンでも、一方の表情を鏡に映すことで二人のやりとりに変化を持たせたり、ターボババアがいるトンネルの壁に血の足跡をさりげなく描き込んでみたり、シナリオでは書かない部分を細かい心くばりでじっくりと丁寧に描写されていて。山代監督は“映像をつくる”ということが本当に好きなんだと感じました。僕はもともとアニメの制作進行をやっていたこともあり、本当に大変なことをやっているのがわかるので、正直自分だったら担当したくないなと、ちょっと思っちゃいました(笑)。第二期では、邪視の話もすばらしく、その後に待ち受けている新しい敵との壮大な戦いも楽しみです。多くの方に楽しんでいただけるように、原作を尊重しながらアクションをかなり足したので注目してほしいです」

改めて、山代監督とアベル監督が手がけるアニメ『ダンダダン』の魅力を聞くと。
「サイエンスSARUには、創設メンバーの湯浅(政明)監督が築いてきた映像をつくる際のノウハウや精神が、レガシーとして受け継がれているのだと感じます。山代さんは湯浅さんの作品の副監督を務めていたりもして、愛弟子のような関係かなと思うんです。“映像をつくる”ことへの愛と熱量をこの作品から感じられます」
©龍幸伸/集英社・ダンダダン製作委員会
Photos:Teppei Hoshida
Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y]
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