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第9回
「部屋についての部屋」という
展示会タイトルに込められた意味とは?
\ここに注目!!/
東京都写真美術館
「アレック・ソス部屋についての部屋」
写真に向き合い続けたアレック・ソスの30年が凝縮! 「部屋についての部屋」が語るものを感じに行こう!
アレック・ソス《Anna, Kentfield, California》〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より 2017年 東京都写真美術館蔵 ©Alec Soth
写真家アレック・ソスの
独自企画は必見!
世界初公開の作品も
「写真」の展示と聞いて、皆さんはどのような「写真」を思い浮かべますか? iPhoneでさっと撮る画像とは異なる「作品」として私が写真をとらえるようになるきっかけは、ファッションの写真でした。ファッションブランドのキャンペーンビジュアル、雑誌に掲載されている写真などです。年代や国籍、そしてパーソナリティによっても、撮影した人物の視点がそのまま反映される写真の世界は面白く、ファッション写真を通じて一枚の写真の中にも文脈が存在するということを知ったことも、私自身が能動的に写真を見るようになった理由だと思います。
今回は、来年1月19日まで東京都写真美術館にて開催中の、写真家のアレック・ソスによる「部屋」をテーマにした大規模個展を紹介します。アレック・ソスは国際的な写真家集団、マグナム・フォトの正会員であり、生まれ育ったアメリカ中西部などを題材とした作品で、世界的に高い評価を受けてきた写真家です。2022年に「神奈川県立近代美術館 葉山」にて日本の美術館で初の個展を果たしたばかりなので、もしかしたら読者の皆さんも一度は作品を目にしたことがあるかもしれません。
私は、彼の作品をハイブランドのファッション写真を入り口に知りました。有名なところでは、ボッテガ・ヴェネタの2024年S/S、グッチの2020年S/Sなどがあります。ですが実は、彼のライフワーク的な作品として有名なのは、ロードトリップのスタイルによる、風景やポートレート写真です。アメリカ国内を車で旅する中で、出会った風景や人々を大判カメラで撮影したものです。先述の葉山での個展では、そうした作品群が中心に並びましたが、今回は「部屋」にフォーカスした約60点の作品が6つのセクションで展示されます。世界各地のさまざまな人々を訪ね、その人が日々を過ごす部屋の中で、ポートレートや個人的な持ち物を撮影したシリーズ〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉を起点に再編。東京都写真美術館による独自企画である本展では、同作品の他にも〈Sleeping by the Mississippi〉や〈Niagara〉など、初期のカラー作品から、ソスが影響を受けた写真家たちのポートレートや、ローカルなコミュニティにおける人々の交流を写したシリーズまで網羅的に紹介されます。過去のインタビューで彼がロードトリップに惹かれた理由として「愛とか憧れといった感情を模索することが許されているジャンルだから」と話していますが、本展で展示されるポートレートからもそうした感情がにじみ出ているように感じます。
また、2022年から2024年にかけてアメリカの美術学校を舞台に撮影された最新作シリーズ〈Advice for Young Artists〉も世界初公開! 直訳すると「若いアーティストへのアドバイス」というタイトルですが、果たしてそのままの意味なのか、ぜひ体感してみてください。
30年に及んで生み出された作品群はどれも生で見ないと、彼と被写体との距離感や部屋に立ち込める雰囲気というのはわからないはず。本展タイトルの「A Room of Rooms/部屋についての部屋」の意味を会場で考えたいなと思います。
アレック・ソス《Two Towels》〈Niagara〉より 2004年 作家蔵 ©Alec Soth
「アレック・ソス部屋についての部屋」
東京都写真美術館にて2025年1月19日(日)まで開催中。目黒区三田1の13の3 2F展示室 営業時間:10:00〜18:00(木・金曜は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで 月曜休館(祝日の場合は翌日休み)
倉田佳子
大学卒業後、独学で編集・執筆業を始める。その後、5年間会社員と副業で編集・執筆業を並行し、2022年に独立。国内外のブランドやメディア、アーティストと仕事をする。
Instagram:@yoshiko_kurata
Title logo:Midori Kawano
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