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【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.17】クリスマスに“幸せ”について考える『天使のくれた時間』

【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.17】クリスマスに“幸せ”について考える『天使のくれた時間』

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鈴鹿央士 連載 鈴鹿央士の偏愛映画喫茶 
発表

 約3年前、近くのレンタルビデオ屋さんで、キラキラ輝いているようなジャケット写真(現在は新バージョンに変更)と、『天使のくれた時間』というタイトルを見て、“なんかステキだな”と思って借りた作品です。そのキラキラした場面は、実はラストシーンなんです。僕、けっこうジャケ買いするタイプで、最近よく聴くレコードもジャケ買いするのですが、そういう直感による“出逢い”ってありますよね。たまに見た目に騙されちゃうこともありますが(笑)、それもまたよいというか。結果、この作品は、今年のクリスマスにまた一人で観たいな、と思えるような出逢いになりました。

鈴鹿央士 おすすめ 映画

『天使のくれた時間』
発売中¥1,257(税込) 発売・販売元:ギャガ
©️Beacon Communications LLC

 3年前と言えば2019年。『蜜蜂と遠雷』が公開され、その年の今頃(12月)は報知映画賞の授賞式がありました。まだ本格的にお芝居もやっていなかったし、当時は同じ事務所の男3人で暮らしていました。本作を借りたレンタルビデオ屋も今はもうなく、逆に当時は主流でなかった配信で今は映画を観ていて……。本当に3年で色んなことが変わるんだな、と思いますね。


   

“もしも”で考える二つの人生

 本作は、とっても素敵なラブストーリーです。映画の冒頭、空港で、恋人のケイト(ティア・レオーニ)を残して、ジャック(ニコラス・ケイジ)が単身ロンドンへ研修のために旅立とうとするシーンから始まります。それからいきなり13年後の2000年に話が飛んで、ジャックは大手金融会社の社長として、ニューヨークの超高層ビルのペントハウスに住み、フェラーリを乗り回しています。でもそこにケイトはいない。ほとんど何の説明もないのですが、ケイトとは離れ離れになっていて、ジャックはひとりバリバリ成功してるんだなってことがわかります。ケイト不在の“ニコラス・ケイジ物語”として(笑)、「え、どうなっていくんだろう!?」とまず惹きつけられました。

 クリスマスイブの晩、ジャックはスーパーのレジのもめごとをポケットマネーを出して仲裁します。もめていた黒人男性、キャッシュにアドバイスまでするのですが、そんなジャックの親切心に同居する「(施す者としての)傲慢さ」を感じとったキャッシュから、“これから起きることは、お前のせいだぞ”という意味深なセリフが飛び出し、起きたら……。

 目が覚めると、まさに “あの時、もしケイトと結婚していたら”という“もしも”の世界に繋がっています。“え、何これ!?”って、自分もジャックと同じように混乱した感覚に陥りました。懐かしいケイトがそこに居て、子供も2人いて、ケイトの両親まで出て来て……。どうなっているのか全然わからないまま、ジャックはマンハッタンの高層ビルに行くのですが、顔なじみのはずのドアマンに「お前は誰だ」という顔をされ中に入れてもらえません。パラレルワールド的な世界になっているんだ、うわぁ~、ってなりました。

 しかも“俺のフェラーリはどこだ!?”と聞いて、“これがお前のフェラーリだ”って笑って示された車がミニバンだったり (笑)。でも、長女の幼いアニーちゃんだけが子供の勘で、“これはパパじゃない”ってすぐに見抜きます。「僕は宇宙人なんだ」とごまかしたジャックを、周りに疑われないようにとアニーが助けてくれる。 “オムツはそこにあるわよ”とか、次はどこへ行けばいいのか、とか。3、4歳なのかな。ジャックのことを宇宙人だと思い込んでいる、あの年代の子どもたちの柔軟さが、本当に可愛いなって思いました。

 でも、セレブなエリートとして暮らしてきたジャックには、子どもの世話に追われる庶民的な生活が受け入れられない。ケイトのお父さんが経営している車のタイヤ販売会社での仕事に満足できず、もっと上りつめたいと虎視眈々とチャンスを狙っています。たまたま元の世界で勤めていた会社の会長がタイヤ交換に来て、すかさず自分を売り込んだジャックはついに元の会社に引き抜かれることに。


 能力が認められ、元の世界と同じペントハウスを貸与されることになったジャックは、意気揚々とケイトをマンハッタンに連れて行くのですが、反応は「はあ?!」って (笑)。子どもたちを育てる環境じゃないと反対され、相談しないで決めようとしたことでケンカになってしまいます。男として“これが成功だ”と思い込んでいる強引さとか傲慢さとか…。家族のためでもあるんだけどうまく行かない。自分の成功を優先する人生か、家族を優先する人生かーー。

「自分だったら…」と考え始めると、堂々めぐりが止まらない

どっちも手に入れようと欲ばりになると上手くいかないのかな。“家族との幸せ”と“仕事での成功”、2つ同時には手に入らないのかな、人生って難しいな、とか色々考えてしまいました。

 どちらかを選べと言われたら、やっぱりすぐには選べないな。本当に難しいと思います。迷わず家族の方を選びたいけれど、そう簡単には……。

 また2つの世界の対比が鮮やかで。仕事で成功している世界でのジャックは、一人で遊びながらリッチに暮らしていて、一方でケイトと結婚して子供もいる世界では、結婚13年も経っているけれど熱々で…。後者の世界では、ジャックは13年前に飛行機に乗らなかったのかと思ったら、ちゃんと乗っていたんですよね。飛行機には乗ったけれど、実は翌日、ロンドンから戻って来たことが後から分かるんです。それもまたいいな、って。

 ケイトがジャックに、“お爺さん、お婆さんになって、髪の毛が灰色になって、お互いシワシワになって、そこへ孫たちが遊びに来て……。家でそうやって過ごしたかった”って言うんですね。すごい愛だなぁ、すごい濃いなって思いました。ケイトの家族思いの姿が、すごく染みるんです。愛する人と一緒に過ごすということが、どれだけ素敵なことなのか!と感じます。


    

温かなストーリーの中にある重要な問い

 僕にも結婚願望はありますし、地元の友達でも、既に結婚して子供がいる人もいます。ただ僕が思うのは、結婚ってゴールみたいな気がするけれど、決してゴールではないんですよね。ケイトが言ったように、“シワシワになって髪の毛も白くなっても一緒に過ごす”のに憧れるので、そんな人と出会いたいな、と思っています。

 ジャックの前に度々あらわれる“キャッシュ”という男は、タイトルからすると天使の設定だと思いますが、あんまり天使っぽくないんです。どちらかを選べとジャックに迫って、ちょっと彼を試してる感がありますね。

自分にとっての「大切なもの」を改めて考えるきっかけをくれる

“もしあの時、別の選択をしていたら”と考えることは、僕にも多々あります。僕はスカウトされ、この世界で働くことになったけれど、もし名刺を渡されたあの時、全く興味がないと断っていたら今は何してるんだろう、とか。メンズノンノのオーディションを受けてなかったら、とか。しかもお芝居って考え出すと無限なので、これでいいのか、もしあの時……ってずっと考え続けてしまいます。常に選択しながら生きてると感じながらやっています。それが、面白いですね。

この作品は、空港で別れるところから始まり、最後はケイトがパリに旅立つところ――2人の立場が逆になっている――で終わる。作りのバランスがいいというか、上手い作品だと思いました。しかも終わり方が、単に2人がまたくっつくとか、そういう安易なオチじゃなく、ただ空港で話しているシーンで終わる、というのがいい。2人が家族だったときのきらめきの時間を丁寧に描き、それを心ゆくまで見せてくれたからこそ、この先2人がどう物語を綴っていくのか、すごく考えてしまう。そんな終わり方がステキでした。

劇中、“きらめきは一瞬だけ”というセリフがあるのですが、一瞬をどう捉えるかで人生、色々変わって来ますよね。仕事で成功した世界のきらめきと、ケイトと家族として過ごす人生のきらめき。それも一瞬でしかないと言われると、確かに人生って長いようで一瞬かも、と感じて、その一瞬をどう過ごすか、すごく考えさせられました。人生100年時代とか言われますが、地球や宇宙の歴史からすると100年なんて言うても一瞬。だからこそ大切に生きなきゃな、って。


ちょっとざらついたキレイすぎない映像や、光や影の入り方など、世界観もすごく好きでした。流れてる時間が、とても好みの映画で。今年も僕はクリスマスを一人で過ごすと思うので(笑)、また『天使がくれた時間』を観て過ごそうかな。クリスマスが舞台ですが、冬に観る映画として、すごくピッタリな作品です。誰かと一緒に観るのも素敵だと思うし、一人で観ても色々染みると思いますよ!

鈴鹿央士 映画 個人的なツボ

ケイトに言われて犬の散歩に行って帰って来たシーンです。ジャックは「俺の犬じゃない」とか言うんですが、ケイトに「赤ん坊に散歩は出来ないでしょ」とか言われたときに、低い笑い声が聞こえるんですよ! それが、ケイトの声かもしれないんだけれども、男性のスタッフがつい笑ってしまった声が入ったようにも感じられるんです。その後も、「今世紀中にはウンコしろよ!」みたいなセリフがあって、メチャクチャ面白いんですよ。そのシーンを何度か観ているうちに、“あれ、誰の笑い声?”ってメチャクチャ気になるようになっちゃって。変な気になり方なんですが、このシーンが今回のツボなんです(笑)。

(2000年/アメリカ映画)
ブレット・ラトナー監督が、『素晴らしき哉、人生!』をモチーフに、人生の選択をテーマに描いたラブ・ファンタジー映画。1987年、ロンドンへ研修に向かうジャック(ニコラス・ケイジ)は、空港で恋人のケイト(ティア・レオーニ)から「嫌な予感がするから行かないで」と引き留められるが、「2人の幸せのため」と飛行機に乗り込む。13年後、ニューヨークのウォール街で大成功したジャックは、優雅な独身生活を謳歌していた。クリスマスイブの晩、ひとり仕事帰りに立ち寄った店で、黒人青年キャッシュ(ドン・チードル)から、換金できない宝くじを買い取ったジャックは、“これから起きることは自分が招いたことだ”と謎の予言をされる。

冬の寒さが到来したなぁと、寒さを感じられることに幸せを感じたりしているこの頃です。皆さんは暖かくして、ゆっくり年末を過ごせることを願っています。
僕も好きな音楽を、最近は「mabanua」さんを聴いたりしてます。では、『silent』も最終回もよろしくお願いします!


Text:Chizuko Orita

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