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【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6】キスシーンがステキ過ぎる、ウォン・カーウァイ監督作『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

【鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6】キスシーンがステキ過ぎる、ウォン・カーウァイ監督作『マイ・ブルーベリー・ナイツ』

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発表

 今年、最初に紹介するのは、ウォン・カーウァイ監督の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』です。この映画はあまりにキスシーンがステキすぎて、それを語りたいがために選んだとも言えます(笑)。


 この作品に惹かれたのは、ウォン・カーウァイ監督作であり、さらにノラ・ジョーンズの主演作品ということ。ノラ・ジョーンズの音楽は、昔からずっと好きなんですが、ピアノのスローでゆったりした感じとか、曲調が朝に聴いても、夜キャンドルをつけて聴いても、すごく合うんです。そんな彼女が主演を務めている本作は、ドギつい場面も時々あるものの、全体的な色がやっぱりノラ・ジョーンズの世界観だなぁ、と感じました。

『『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(‘07)/私物

すべてがおしゃれなウォン・カーウァイ

 ウォン・カーウァイの作品は、『ブエノスアイレス』から入り、『花様年華』、そして本作のあと『欲望の翼』を観ました。すべて映像や世界観が本当にオシャレ。『花様年華』のチャイナドレスの美しさ、『欲望の翼』のベッドシーンで、すごく古い型の扇風機がカタカタ回っている感じとか、さりげないセリフから何からすべてがよくて。ライティングや色味も含め、ずっとその世界を観ていたくなります。『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は15年前、『欲望の翼』は30年以上前の作品だけど、今観てもすごくカッコイイ。時代を超えて古ぼけない感じが、スゴイですよね。以前、好きなアーティストさんがライブで「生き物はみな死ぬけれど、音楽は魂が残り続ける」と言っていましたが、映像作品も本当にそうだなぁ、と思いました。

 僕が観たウォン・カーウァイの作品は、青や赤や緑といった色彩がとても印象的。友達から「彼の作品は常に人間の目を引く、その3色を意識的に画角に入れている」と聞いていたので、観ながら「あ、赤だ!」「青だ」「緑だ」と、つい探してしまいますね。

色彩鮮やかな映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の場面写真。鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6
My Blueberry Nights (2007) Directed by Wong Kar Wai Shown: Norah Jones

写真:Photofest/アフロ

失恋で始まる出会いと旅

 ノラ・ジョーンズが演じるのは失恋したばかりのエリザベス。彼女が立ち寄るカフェがあって、売れ残りのブルーベリー・パイを食べながら、カフェオーナーと話をするんです。そのカフェには、誰かが落とした、あるいは置いていった、たくさんの鍵を溜めたガラスのポットがあります。そのひとつひとつに物語があって、それをオーナーがエリザベスに語って聞かせるのですが、まず、そのエピソードが印象的で“スゴッ”と思いました。オーナー自身の物語もその中にあるし、エリザベスも、元カレの家の鍵をそのポットに預けていくんです。

 「あぁ、こんなカフェに行きたいな、一つ経由して帰れる場所があるといいなぁ」と羨ましくなりながら観ていました。こういう世界が確実にありそうとか、自分の人生にも起こりそうとか、自分の世界と繋がっている感が絶妙で、誰もが入り込みやすい映画だと思います。


主演のノラ・ジョーンズと語るジュード・ロウ。映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の場面写真。鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6
My Blueberry Nights (2007) Directed by Wong Kar Wai Shown: Jude Law, Norah Jones

写真:Photofest/アフロ

 エリザベスは、失恋を吹っ切るために旅に出るのですが、自分の居る場所を変えたい、という願望や欲望、僕もすごく分かります。特に失恋したわけではないけれど、生きている場所を変えたい、新しい人に出会いたい、一度リセットしてみたい、という願望はありますね。そうすれば、自分の気持ちも新しくなるから。

 エリザベスはニューヨークから、まずメンフィスに行き、バーで働くのですが、そこで出会う刑事のエピソードがまたすごくよくて……。別れた奥さんが忘れられなくてすさんでいる。彼は真っ直ぐに奥さんのことを愛していて、結果、お酒に溺れて潰れてしまうんだけど、それもすごく人間だなぁって思いました。

本気で恋をしたら、そんな簡単に忘れられるものじゃないと、僕も思う

 失恋すると、周りは“早く忘れて次に行きなよ”と簡単に言いますが、自分のことになると、人間、そんな簡単に割り切れるものじゃない。僕も高校生のとき、「もう恋愛なんかしない!」と言ったことがありますが(笑)、この刑事は、「もう恋愛なんかしない!」の究極のパターンなんだろうな、と思いました。

それぞれの別れと喪失、そして再生

 その後、エリザベスはラスベガスへ行って、ナタリー・ポートマンが演じる賭博師に出会います。でも、彼女には病気になって死にかけているお父さんがいて……。この作品は、みんなが誰かを失い、それでもまた歩き出す。場所が変わると、人も、場の雰囲気やわちゃわちゃ感も変わっていく。その変化もまた、興味深かったです。

 旅の途中で度々エリザベスは手紙を書いていますが、NYのカフェオーナーに宛てたものだと分かって来ます。手紙ってすごくいいものですよね。先日、僕も誕生日に、ファンの方や、ドラマでお世話になった方からなど、たくさんお手紙をいただいたのですが、それがとても嬉しくて。なので、今年からラインで新年の挨拶を送ることを止めました。昔に戻った方がいいわけではないけれど、手紙といういい文化は残していきたいと思ったんです。

おしゃれなのに自然でさりげない存在感

 主演のノラ・ジョーンズは、音楽畑の人なのに、普通に「その世界に存在している」ように見えて、ズルいなって思うくらいでした。もちろんその自然さは、カメラワークや編集など、いろんなものから総合してできたものだとは思いますが、本当にそこで生活している姿が切り取られているだけ、という感覚なんです。僕が演じる側として、いつも悩みながらやっているからこそ「カチンコが鳴って始まった感覚」がまったくしないことが本当にスゴイ、と思いました。それに、やっぱり声も良くて、聞くと落ち着くんですよね。

 カフェオーナーを演じるジュード・ロウは、実は知らない俳優さんだったんですが、ずっとカッコいいな、と思いながら観ていました。例えばガチャッとドアを開ける瞬間、耳と肩で電話を挟んで喋りながら仕事を続けている仕草とか。うわ、これはもう惚れるわ、と思って(笑)。煙草を吸う仕草も――冬の煙草の煙が、またいいんですよね。この時代だからかもしれませんが、みなさん滅茶苦茶、煙草を吸っています(笑)。

究極のラストシーンについて

 最後に、“キスシーン”について。これはもう、スゴ過ぎる(笑)。普通、この角度でキスしようなんて思いませんって!!  食べたブルーベリー・パイの欠片がエリザベスの唇についているし。つまり、確実にこのキスの味、甘いですよね。それが伝わって来るのがすごいなぁ。そして次のカットでは、こんな角度から撮るのか、と驚く。この一連の場面も、赤・青・緑と鮮やかな色が現れ、関係ない別カットが挿入されたりして、オシャレ過ぎます。僕にはそれが、ちょっとグザヴィエ・ドラン感があるなぁとも思いました。

印象的なラストシーン。映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の場面写真。鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6
·Original Title: MY BLUEBERRY NIGHTS ·English Title: MY BLUEBERRY NIGHTS ·Film Director: KAR WAI WONG ·Year: 2007

写真:Album/アフロ

 ただ、こんな恋の始まりは、僕の人生にはないかなぁ(笑)。オシャレ過ぎちゃって、僕には出来ないだろうな、って。

 映画を観ると、好きだった人を思い出すかもしれないけれど、それも時々はいいと思うんですよね。すべてのエピソードがハッピーではないけれど、なぜか前向きな気持ちになれるんです。加えてノラ・ジョーンズの歌声! この映画きっかけで、ノラ・ジョーンズにハマってくれたらいいな、とも思います。
 休みの日の夜とか、何を観ようか迷ったときの選択肢の一つにしたい。ずっと観ていられる、全く見飽きない、何度でも観たくなる世界観。ネオンをはじめ光と影が美しいし、人生や世界の切り取り方がステキ。「世界ってキレイなんだなぁ」って思わせてくれる作品でした。あれ、今、すごくいいこと言ったかな(笑)⁉


 画角も色彩も、映像全般が、もう僕のツボでした。特にNYのエピソードでは、カフェの外からガラス越しで店内を映す際も、ちょっと反射して人の顔が映っていたり、ネオンの映り込みがキレイだったり。カメラが動いていくと、赤から青の世界に入って行くような、色彩設計も細かくなされていて。同時に人物の前後がわざとボヤッと映し出されるような、ピントの掛け方など、すべてがオシャンティー(笑)。店内の防犯カメラの使い方も上手くて、時々防犯カメラ映像に切り替わったりするのがまたカッコよくて。瞬間的にコマ送りにしたり、スローを掛けたり、ちょっとした変化や違和感を差し込んで来る映像がとにかく凝ってます。

主演のノラ・ジョーンズと語るレイチェル・ワイズ。映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の場面写真。鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6
MY BLUEBERRY NIGHTS, Rachel Weisz, Norah Jones, 2007. ©Weinstein Company/courtesy Everett Collection

写真:Everett Collection/アフロ

 エリザベスと刑事の元妻が外のベンチで話す場面では、顔の表情が見やすい正面から撮ることはなく、ずっと斜め横から映し続ける。“あぁ、映画だなぁ”って思いました。見やすく、分かりやすく撮るのではなく、逆に見えにくいことで2人の会話シーンの、その向こうにあるものに対して想像力を膨らませてくれる。ドラマでは細かくカットを割って、カメラが全当たりというか、真正面から表情を捉えることが多いので、この角度をズラしたことによる表情の陰影の濃さにも、とても惹かれました。


一世を風靡した映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』の場面写真。鈴鹿央士の偏愛映画喫茶vol.6
·Original Title: MY BLUEBERRY NIGHTS ·English Title: MY BLUEBERRY NIGHTS ·Film Director: KAR WAI WONG ·Year: 2007

『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(‘07)
『恋する惑星』『天使の涙』などで一世を風靡したウォン・カーウァイが、歌手のノラ・ジョーンズを主演に据えて撮った初の英語作品。NYの街角にあるカフェに、失恋したばかりのエリザベス(ノラ・ジョーンズ)が現れる。そのうち、カフェオーナーのジェレミー(ジュード・ロウ)と話をしながら売れ残ったブルーベリー・パイを食べるのが彼女の日課に。次第に2人の距離は縮まっていくが、元カレが新しい恋人と居るのを目撃したエリザベスは、元カレへの思いを断ち切るため、アメリカ横断の旅に出る――。その他の共演にナタリー・ポートマン、レイチェウ・ワイズ、デヴィッド・ストラザーン。


現在撮影中のドラマも、終盤に差しかかって来ました。どういう形で皆さんに届けられるかはまだ分かりませんが、残りの撮影、最後まで頑張ります。その間、「MEN’S NON-NO」の撮影にあまり行けなかったのですが、その次の号からまた参加しますので、それがとても楽しみです! プライベートでは、映画『ドント・ルック・アップ』を観ました。メチャクチャ面白くて、これはもう、おススメです。今はNetflixの韓国ドラマ『その年、私たちは』にハマってます。

Text:Chizuko Orita

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