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「逃げ恥」「アンナチュラル」脚本家 野木亜紀子[メンズノンノオリジナルインタビュー]

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『重版出来!』『逃げ恥』『アンナチュラル』『獣になれない私たち』『MIU404』など、手がけたテレビドラマはいずれも高く評価され、いまや当代きっての人気脚本家である。つい先日も、脚本を手がけた映画『犬王』がゴールデングローブ賞にノミネートされ、大いに話題を集めた。今いちばん次回作が待たれる注目の脚本家は、いったいどのように作品づくりを行っているのか。創作の秘けつなどについてインタビュー。

野木亜紀子 インタビュー

野木亜紀子さん

SCRIPTWRITER / AKIKO NOGI

1974年、東京都生まれ。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。2010年、第22回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞した『さよならロビンソンクルーソー』で脚本家デビュー。主な作品に、テレビドラマ『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』(ともに16年)、『アンナチュラル』『獣になれない私たち』(ともに18年)、『コタキ兄弟と四苦八苦』『MIU404』(ともに20年)など。映画『図書館戦争』シリーズ(13年・15年)、『俺物語!!』(15年)、『アイアムアヒーロー』(16年)、『罪の声』(20年)、『犬王』(22年)など。最新作となる連続ドラマW『フェンス』が3月19日よりWOWOWにて放送スタート。公開待機作に『カラオケ行こ!』(23年公開)がある。


自分の想像を超えてくるものを観るのがいちばん楽しい

――野木さんが脚本を手がけたアニメーション映画『犬王』(監督:湯浅政明)が、アカデミー賞の前哨戦としても注目されるゴールデングローブ賞にノミネートされ、話題になりました。惜しくも受賞は逃しましたが、ノミネート自体がすごいことです。

やっぱりちょっと上がりましたね。「おっ、マジ?」みたいな。日本の作品で過去にどれくらいノミネートされているんだろうと思ってググったら、ほとんどされてなかったので、びっくりしました。

――『犬王』は昨年5月の公開以来、ロングラン上映が続くなど、熱狂的に支持されています。脚本づくりにおいて意識したことは何ですか?

湯浅さんってあまりストーリーに興味がないタイプだと思うんですよね。ご自身のグルーヴでわーっとやっちゃう。それが圧倒的にものすごいんだけど、最低限のストーリーがないと誰もついていけなくなるので、そのやりとりはしました。私の仕事は、本当に誰でもわかる最低限のストーリーラインを残すことで、あとはもうお任せしますという感じです。実際、ハジけた湯浅節が評価されて、ゴールデングローブ賞のノミネートにもつながったんだと思います。アニメーションというもので、あそこまで心を引っ張れる、持っていける監督ってなかなかいないと思うんですよ。理路整然とした何かではなく、よくわからない、圧倒されて心つかまれるグルーヴ感が並大抵じゃないですよね。

――脚本がもとになって映像ができていくわけですが、脚本家としてのいちばんの喜びって何ですか?

ドラマとか映画もですけど、監督が入って、役者が入って、音楽が入って映像作品になったものは、やっぱり別のものですよね。役者と演出の力で、「こんなところで感動するとは思わなかった」ということが起こりますから。そうやって自分の想像を超えてくるものを観るのがいちばん楽しいですね。そのために映像の脚本を書いているというところがあります。そうじゃなかったら、小説とかでいいわけですよ。私は映像になったものが観たいんです。

――脚本を書いているときは頭の中に映像は浮かんでいるんですよね?

浮かんでいます。だから、完成した映像を観て、「おぉ、そうだよね!」となるときもあれば、「えっ、何でこうなったの?」みたいなときももちろんあります。基本的には口を挟みたくないと思っているんですけど、このままいくとストーリーの整合性が取れなくなってしまうなっていうときは伝えるようにはしています。それこそミステリーだと映像になったときに、新たな穴や矛盾が生まれることがあるんですよ。そういう場合は、「このままだと成立しないから、ここはカットしてほしい」と言ったりすることはあります。


モノをつくるってやっぱり信頼関係

――野木さんのもとには多くの執筆依頼が届いていると思いますが、引き受けるときのポイントって何かあるのですか?

座組みですね。監督とプロデューサーと脚本家がやっぱり大事だと思っていて、そのうち2人がしっかりしていれば何とかなるんですよ。でも、2人ダメだと戦えないので、引き受けるときは自分にとって信用できるプロデューサーだったり、才能ある監督がいるかで判断するようにしています。そういう意味では、新規の方と仕事をする機会は少ないかもしれません。ただ、まったくないわけではなくて、以前、NHKで『フェイクニュース』(18年)というドラマをやったときのプロデューサーは初めての人でした。とにかく熱意のある人で、すごく長文のメールを送ってきて、実際に会って話してみたら、可能性を感じた。それで一緒につくってみることにしたんです。3月19日からWOWOWで『フェンス』というドラマが始まるんですけど、これも同じ人と組んだ作品ですね。

――『フェンス』は待望の野木さんのオリジナル脚本で、とても面白そうな作品ですね。

沖縄を舞台に性的暴行事件の真相を追うというストーリーなんですけど、もしよく知らないプロデューサーから「沖縄で事件ものやりませんか」と言われても絶対引き受けてなかったと思うんですよね。それくらいハードルが高いなと思って。実際、1回断ったんです。でも、引き受けることにしたのは、プロデューサーとの信頼関係ですよね。モノをつくるってやっぱり信頼関係だなと思います。

――脚本を書くうえで、オリジナルと原作ものでは何か大きな違いはあったりするのですか?

あんまりないです。結局、やることは一緒なので。ただ、原作もののほうが何かと気を使うことがあって疲れるというのはあります(笑)。小説は小説という表現で書かれているから面白いわけで、漫画は漫画という表現で描かれているから面白いんです。すでにベストな形として存在しているものをわざわざ映像作品にしようと思ったら、映像用に改変したり、要素をそぎ落としたりする作業が必ず発生します。原作ものだと作者もいて、ファンもいるので、その世界を壊さないようにしながらいかに映像作品として成立するかを考えてつくる必要があって、そこはすごく気を使いますね。だけど、オリジナルなら何を言われたって自分の責任だし、ゼロからつくっていくので選択肢がたくさんある。その違いはありますね。


宮藤官九郎さんになりたい(笑)

――そもそも野木さんが脚本家をめざそうと思ったきっかけは何だったんですか?

映画監督になりたくて日本映画学校(現・日本映画大学)というところに入って、卒業後はドキュメンタリーの制作会社でAD兼APみたいなことを8年ほどやっていたんですけど、現場は向いてないと気づいて、それで脚本家になろうと思ったんです。

――脚本を書いていて楽しいと思うときってどういうときですか?

楽しいのは、やっぱり完成した作品が面白かったときですね。あと、アイデアをひらめいたときも。「ここ、うまくいってないんだけどな」みたいなところが解決したらめちゃくちゃうれしいです。自分が面白いと思うものになるまで、とにかく諦めずに考え続けることしか道はないんですよ。だから、毎日地をはうようにして頑張っています。ほんと、自分が天才だったらなって思いますね。天才だったら、もっと早くいいアイデアが思い浮かぶだろうし、締め切りにも遅れないんだろうなって(笑)。

――野木さんがそれを言いますか。

いやいや。宮藤官九郎さんとかすごいですもん。ものすごいボリューム書いているし、全然締め切りに遅れないんですって。どういうこと?

――ハハハ!

脚本の仕事以外に、バンドもやって、役者もやって、劇団もやって、ラジオもやって。ほんとに天才ですよ。ちょっとだけでいいから分けてくれないかな。しかも、ものすごくいい人なんです。すごくないですか? もう宮藤官九郎さんになりたいです(笑)。

――それこそメンズノンノ読者の中で脚本家になりたいという人がいたら、どういうアドバイスを送りますか?

やっぱり作品をたくさん観たほうがいいですよね。海外のドラマとか映画とか、優れたものをとにかくたくさん観ることだと思います。私、学生時代に映画館で年間230本とか観ているんですよ。バイト代はすべて映画につぎ込んでいました。その頃に培ったものが確実に今の自分の役に立っているなって思います。ただ、映画オタクなのに脚本が読めないプロデューサーとかいるんですよね。だから、ただ観ればいいというだけではなくて、その作品の何が面白いのか、構造を分析しながら観ることが大切なのかなって。

――最近は倍速で視聴する人も多いみたいですね。

倍速で観たくなるドラマもなくはないから気持ちはわかりますけど、倍速だと話の筋を追っているだけになっちゃうからじっくり考える時間はないですよね。「このシーンにはいったいどういう意味があるのか」「このセリフがどこにかかっているのか」「自分だったらこの部分はこうするのに」とか、倍速で観ていると何も考えられないじゃないですか。そこまでして時短で観て、何か意味あるんだっけという気はしますけどね。


物語の力で他人事を自分事に

――野木さんは、それこそ『逃げ恥』(16年)とかがいい例ですが、広く世間の話題になるような作品を数多く手がけられています。ヒット作を生み出すコツみたいなものはあるんですか?

私もそれ、知りたいです(笑)。けど、結局は届くところにしか届かないなって思います。ほんとに届いてほしいところにはなかなか届かない。それに気づいたのが、『獣になれない私たち』(18年)をやっているときですね。ジェンダー問題、女性問題みたいなことを割と扱っていたんですけど、まぁ、みごとに伝わらない。それもあって、入り口のレンジを広く取らなきゃいけないんだなと思うようになりました。届く人にしか届かないニッチなものもいいとは思うんですけど、私自身、そこはあんまりめざしていなくて。それよりも、ある種のわかりやすさと複雑さみたいなことを両立できる作品をつくっていきたいなと思っています。じゃないと、届かないんですよ。

「わかりやすさと複雑さが
両立した作品をつくりたい」

――沖縄の問題を扱った『フェンス』はまさにそういうつくりですよね。

そうです。沖縄ってとても遠いんですよ。場所的にもそうだし、50年前までアメリカの統治下で、それゆえに基地のことだったり、複雑な問題を抱えていることを本土の人はほとんど知りません。はっきり言って、他人事(ひとごと)です。でも、それをエンターテインメントなドラマにすることで、つまりは入り口を広くすることで多くの人に観てもらえるようになって、結果的に沖縄のことを知るきっかけになったらいいと思うんです。ニュースを観ない人でもドラマや映画は観るみたいなことはあるし、ドラマの物語を介して他人事が自分事、もしくは自分事までいかなくても理解できたり、感じられたりすることってあると思うんですよ。そうやって物語の力で他人事が少しでも近づいたらいいなって。こんなことを言うと堅苦しい話に聞こえそうですが、全然そんなことはなくて、楽しいところもあるドラマになっています。なので、ちょっと観てみようかなっていうくらいで興味を持ってもらえたらうれしいです。WOWOWですけど、無料トライアルもありますので(笑)。

 

Composition & Text:Masayuki Sawada

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