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レギュラーモデルとして毎月メンズノンノの誌面を飾りながら、アイドル、俳優としても活躍の場を広げている中島裕翔。NHK総合で放送中のドラマ10『大奥』〈8代・徳川吉宗×水野祐之進編〉に出演し、主演映画『#マンホール』の公開を2月10日に控えた今、メンズノンノのレギュラーモデルとしてではなく、俳優・中島裕翔の魅力を探るインタビューが実現。2つの作品について、さらに演じることへの思いをひもといていくと、いつもメンズノンノのカメラの前に立つときと同じように挑戦を恐れることなく“表現すること”と真摯に向き合う彼らしい姿が見えてきた。 今回も特別な撮りおろしカットとともにお届け。2023年最初の中島裕翔のポートレートとなる、最高にカッコいい1枚を堪能して。
「今まで見たことがない
中島裕翔の顔を世に出したい」。
その思いに全力で応えた映画
『#マンホール』
――まずは、映画『#マンホール』について聞かせてください。公開に先駆けて試写を観たのですが、俳優・中島裕翔の新境地という感じでしたね。
うれしいです!この映画は製作陣の方々が早い段階で僕が主人公の川村俊介を演じると想定して、脚本を当て書きしてくださったんです。自分で言うのはおこがましいけど、最初にその脚本を読んだとき、皆さんがどれだけ僕が今まで見せてこなかった顔を世に出したいと思ってくれているかがすごく伝わってきて、すぐに「この役をやりたい!」と思いました。
――ワンシチュエーションで物語が展開していくオリジナルスリラーということで、ショッキングなシーンやインパクトのあるキャラクターといった、これまでの出演作にあまりなかったピースも多く含まれた映画です。川村を演じることが決まったとき、目標にしたことは?
川村はひとクセもふたクセもあるような役で、マンホールに落ちてからは地上にはい上がるために少しずつ変貌していくんだけど、その変化のあんばいは意識しました。衝撃のラストに向けて見せすぎてもダメだし、でもときどき「なんかこの人怖いな」って思わせなきゃいけないというか……。ちなみに、監督からは「彼女にDVしたことがあるような感じで」っていう演技指導が(笑)。自分なりに想像しながらやってみたけど、僕のファンの人が観たらけっこう引いちゃうのかもしれない。でも、今回みたいなワンシチュエーションで見せていくオリジナル脚本の映画って日本ではなかなか作られていないジャンルだから、映画好きな人にも楽しんでもらえるんじゃないかなってワクワクして、前向きな気持ちでクランクインに臨みました。
――実際に撮影が始まってみたら、大変なこともあった?
もう、大変なことだらけでした!撮影期間中は、毎日マンホール(のセット)に通うのがつらかったです(笑)。でも、一人ひとりのスタッフさんがクリエイティビティにあふれた、いい意味でクレイジーな人ばかりだったから、みんなの映画にかける思いが伝わってきて、「僕はこの人たちにいじめられているんだな」って感じながら芝居して、そういう戸惑いをそのまま表情に出すようにしていました(笑)。一度、予定のシーンを撮り終わっても熊切(和嘉)監督が全然カットをかけないことがあって、あとから理由を聞いたら「芝居に見入っちゃって止められなかった」って言ってくださったんです。そういう芝居ができたのは、間違いなく現場でのスタッフさんたちの集中力のおかげです。
――ひとりの観客としてこの映画を観たとき、どんな感想を持ちましたか?
自分の作品を観るときっていつも、おもしろいかおもしろくないかの判断ができないんです。僕自身の芝居が気になって、ここはもうちょっとこうしておけばよかったなっていう後悔が先行してしまう。だけど、今回はめずらしく最初に観たとき「あ、おもしろい」って思ったんですよね。ワンシチュエーションでほぼ自分しか映らないから、そこの画の持たせ方みたいなものは不安要素だったんですけど、熊切ワールドならではのテンポのよさのおかげで気にならなかった。あとはもう、「このシーン大変だったなぁ」とか思い出しながら観ていました(笑)。
――川村俊介は、誰もがうらやむハイスペックなサラリーマンでありながら、マンホールに転落してしまう不運な男です。自分との共通点をあえて探すなら?
川村に限らずビジネスマンはみんなそうだと思うけど、営業先に行くにしてもミーティングをするにしても、身だしなみをきちんとして口調に気をつけて粗相のないようにするじゃないですか。その完璧さみたいなものは、ある種、表舞台に立つ僕らが求められているものと似ているなって思うんです。ただ、川村の生命力の強さには引きましたけどね(笑)。マンホールに落ちたらいきなり大きなケガをしているし、雨も降ってきてドロドロになるのに、SNSまで駆使して助けを求めて、生きることへの執着心がすごい。そこは、逆に全然共感できなかったかな。僕が同じ状況になったら、早々に打ちのめされていると思う(笑)。
――メンズノンノ読者に向けて、注目してほしいシーンは?
マンホールの中はずっと暗いんだけど、ちょっと明るくなるシーンがあって、そのときに川村のスーツがこんなに汚れていたんだっていうことにビックリするはず(笑)。衣装は、汚れがどれだけ目立つかっていうところに重きを置いて選んだんです。だから、シャツは白いし、ネクタイも明るめの色。だけど、川村のどこかまだ“いい感じに見られたい”っていう気持ちがジャケットの下に着たままのベストに表れているというか。普通だったら、ベストは脱いだほうが絶対にマンホールから脱出しやすいのにね。ファッションが好きなメンズノンノ読者にとってはそういう部分も見どころになると思うし、あとはやっぱりSNSを使って助かろうとするシーンかな。匿名性ゆえにSNS上に無責任な言葉たちがどんどんあふれ出して、それに川村自身も流されていく。ソーシャルメディアは、決して便利なだけじゃなくて、危険もはらんでいる。そんな警鐘にもなるかなと思っています。
『大奥』は現代に通じるところが
多いドラマ。
だからこそ、今の自分が
感じていることを大切に
――続いて、現在放送中のドラマ『大奥』について伺います。この記事が公開になるときには第一回の出演を終えたところですが、原作コミックを最初に読んだときの印象は?
男女の役割が逆転しているという意味ではファンタジーなんだけど、きちんと史実に基づいていて、整合性がとれている。だから、歴史好きな人はもちろん、マンガが好きな人も楽しめる作品だなと思いました。
――演じているのは、幼なじみとの結婚をあきらめ、大奥に入ることを決意する貧乏な旗本の息子・水野祐之進です。役になりきるうえで意識していることは?
大奥とはどういうもので、その背景で歴史上どんなことが起きていたのかを調べていくと、『大奥』という作品に対して物わかりがよくなってしまうんです。でも、水野は大奥に翻弄(ほんろう)されていく役どころ。監督からも「目の前で起きることを受け入れなくていい」とおっしゃっていただいたので、一つひとつの出来事に対して表情をコロコロ変えたり、新鮮に驚いたりしながら、正義感が強くて江戸っ子気質を持った水野の信念を貫き通すようにしています。水野という役を演じてみて気づいたのが、自分は今ちょうど端境期にいるんだということ。『#マンホール』の川村のような割と大人っぽい役もできる一方で、水野みたいなまだ何も持っていない若者の役にも振れる年齢なんだなって思ったんですよね。『大奥』では久々に振り回される新人みたいな役をやっているから最初はちょっと戸惑いもあったけど(笑)、自分がもともと持たれているであろうパブリックイメージを取り戻そうという意識で演じています。
――2016年にも『信長燃ゆ』で森蘭丸を演じられていましたが、時代劇と現代劇に対峙(たいじ)する際の違いは?
『大奥』は時代劇のイメージが強いと思うんだけど、劇中で「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」っていう謎の病が日本中に広がっていくところ、誰もが先の見えない不安を抱えているところは、新型コロナの感染が拡大している今の世界に通じる部分があると思うんです。そんな中で、水野のような青年が自分にできることを探しながら毎日を必死に生きている。時代劇だからしゃべり方や所作は当然違うけど、制作陣の方たちとも「現代の若者に通じるものを見せていけたら」っていう話をさせてもらって、時代劇だからこうしなきゃというよりは自分自身が今感じていることを大事に演じています。
――共演者の中には事務所の先輩である風間俊介さんもいらっしゃいます。
風間くんは2012年に放送された『理想の息子』っていうドラマにゲスト出演してくれたんですけど、当時はそんなにしっかり共演できたわけではなくて。だから今回、立ち回りがすばらしくて頭のいい先輩のもとで学べたことがすごくうれしいんです。風間くんほどのキャリアになると、僕のもどかしい部分に口を出したくなるはずなんですよ。でも、何も言わず自由にやらせてくれているところが、先輩の心意気としてカッコいいなって思います。おかげで、僕も準備してきたものをそのまま風間くんにぶつけることができて、風間くんもそれに対して返してくれる。だからなのか、2人のシーンがある日は、収録がめちゃめちゃ巻くんですよ! スタッフさんたちに「巻きたいときはこの2人を呼んでください」って冗談で言っています(笑)。
洋服が持つパワーって、すごい。
衣装から役のヒントをもらっています
――2022年はドラマ『純愛ディソナンス』『しずかちゃんとパパ』に出演し、まったく異なる役に挑んだ一年だったと思います。振り返ってみて、感じることは?
2022年に関して言うと、運にもご縁にも恵まれて、今まで自分がやってこなかった役、やりたいと思っていた役に出会えたなっていう印象です。その中でどれだけ結果を残せたかはわからないけど、後輩たちに背中を見られる立場になってきて、現場で得たものをしっかり下に伝えていかなきゃっていう気持ちが芽生えた年でもありました。
――メンズノンノらしい質問になりますが、役柄と衣装の関係については、どう考えていますか。
衣装が持っているパワーは、すごい!普段着る洋服だって、色や素材によって気分が変わるじゃないですか。それと同じで、朝、撮影現場に入ったときはボーッとしていても、衣装に袖を通すと、役になりきるための力をもらえる。僕は、そういうタイプ。役に近づくうえで、自分自身が持っているものや役作りでできることは限られていて、衣装とメイクと髪型がかなりのパーセンテージを占めていると思うんです。だから、衣装部やヘアメイクさんには頭が上がらない。常に助けられているし、感謝しています。
――最後に、2023年の抱負とメンズノンノ読者へのメッセージをお願いします!
2022年はHey! Sɑy! JUMPとして15周年というひとつの節目を迎えて、たくさんの方に祝っていただいたので、来たる20周年に向かって今年グループとして何ができるのか、ワクワクしています。俳優としては、30歳になる年だし、ここからどうシフトしていくか、みたいなことは考えていて。2022年の間にそのための種は少しまけたんじゃないかなって思うから、同じ路線でさらなるチャレンジをするのもいいし、食わず嫌いせずにいろいろな役や作品に挑戦していきたいです。そして、ファッションの分野でも自分が見せられるものはまだまだあるはずなので、これからも変わらずに携わることができたらうれしい。メンズノンノでも、カバーをやらせてもらったり、話題になるようなWEBの記事をやってもらったりと、たくさん僕のことを盛り上げてもらってすごくうれしかったので、これからももっと頑張りたいです。レギュラーモデルに新しく仲間入りした後輩のみっちー(道枝駿佑)の応援も、よろしくお願いします!
スタイリング秘話 from中島裕翔
ワーク感に武骨さがあるけど、どこか上品なスタイリングで気に入っています。ヘアや肌もつくり込みすぎていない感じが絶妙!いい一年が始まりそうな、すごくすてきな1枚になりました。僕自身、レイヤードが気分なので、今年は重ね着できるようなカーディガンやシャツを集めたいなと思います。
古着のジャケット¥38,500・古着のニット¥59,400/サファリ 1号店 オーバーオール(ヘリル)¥58,300/にしのや ヴィンテージの時計¥360,800/江口時計店 メガネ(エーシーカーニー)¥44,000/エンケル
中島裕翔(なかじま ゆうと)
1993年8月10日生まれ、東京都出身。2017年6月号よりメンズノンノのレギュラーモデルを務める。2021年11月にデビュー15周年目を迎えたHey! Sɑy! JUMPのメンバーとして活動し、俳優としても数々の話題作に出演。
Model:Yuto Nakajima Photo:Genki Nishikawa[MILD] Hair:KANADA[LAKE TAJO] Make-up:Yuri Miyamoto Stylist:So Matsukawa Interview & Text:Yukiko Yoshikawa
映画『#マンホール』
営業成績No.1のハイスぺ男・川村俊介(中島裕翔)は、社長令嬢との結婚式前夜、サプライズパーティの帰りにマンホールの穴に落ちてしまう。外部に助けを求められるツールは、スマホのみ。そこで、SNS上で“マンホール女”のアカウントを立ち上げ、ネット民たちを操って場所の特定と救出を求めることに。結婚式までのタイムリミットが迫る中、どん底からはい上がれるのか⁉ 第73回ベルリン国際映画祭正式招待作品にも決定。
●2月10日(金)より、全国ロードショー
©2023 Gaga Corporation/J Storm Inc.
ドラマ10『大奥』
江戸幕府3代将軍・徳川家光の時代、若い男子のみが感染し数日で死に至る「赤面疱瘡」と呼ばれる恐ろしい病が日本中に広がっていた。対処法も治療法も発見されず、男子の人口は女子の4分の1にまで激減。江戸城では将軍職は女子へと引き継がれ、大奥は将軍の威光の証であるがごとく希少な男子を囲い、俗に美男三千人と称される男の世界が築かれていく。
●毎週火曜午後10時より、NHK総合で放送中
©NHK
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