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僕が考えるJ-POPの定義のひとつとして「複雑なメロディと美しい構成」がある。そこに「楽器の数の多さ」が加わったのはこの曲を聴いてから。前奏はキーボード、ドラム、ギターでコードを刻み、メロディが始まるとサックスのユニゾンでソプラノ、アルト、テナー、そしてトランペット。そこにバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス、ベースが加わり合計で12。田島貴男のラウドぎみなヴォーカルやサビの女性コーラス2名、間奏のビブラフォンの音を足すと16。音の大所帯、スカパラより多いよ…! 何が言いたいのかというと、歌詞や曲の世界観とは別に、楽曲の構造を極めていくとどんなアレンジにも対応できる美しい構成になっていくってこと。
「接吻」はこの後のJ-POPのスタンダードナンバーとなったんだと思うんだ。また、演奏に厚みがあると歌い手は気持ちがよく満足度が高くなる。時はカラオケボックス最盛期だった。この後、楽器を複雑に組み合わせた楽曲が増えていったけど、J-POPって常に「今」だったから、自分のキャリアやプライドがじゃまをして今の音楽として受け入れられないアーティストは淘汰されちゃう。そこへいくと田島さんは時代感にフィットするヴォーカリストでありながら、往年のロックンロールや戦前のブルースなんかもギター1本でカバーしてもみせちゃう、まさに真の音楽家。だから今でも目が離せないんだ。
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