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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって？ なら、3つ教えてください！
人生のベストバイ、3つ教えて！
今回の服好きゲストは、美容師であり、中目黒のサロン「CASI」のオーナーを務める並木一樹さん。
1.〈Cartier〉の腕時計
「30歳になるとき、その節目に買ったカルティエの『タンクソロ』。その当時の現行モデルですが、いまは廃盤になってしまったようで、だからもう新品を買えないという意味では、ちょっと特別なモデルと言えるかもしれません」
「この直線的なスクエアデザインが気に入っています。後継機にあたるモデルや、ヴィンテージの『タンク』は、一般的に丸みを帯びたデザインなので、そうした意味でもこれは結構レア。名作なんじゃないかと思っています」
「ソリッドな建築や、美術館のような静謐な空間が好きで、お店の内装もそれを意識してつくりました。この小さな時計のなかにも、そうしたエッセンスが詰まっている気がします」
「もうひとつ気に入っている特徴が、革とメタルのいいとこ取りをしたような機能的なベルトデザインです。仕事中も基本的に時計は着けていて、シャンプーのときだけ外すのですが、そのユニークな機構のおかげで、とてもラクに着け外しできるんです」
「最近は、ボロボロになってしまった牛革のベルトを、新しくアリゲーターに替えました。高級感が増して、よりオトナっぽくアップデートされた気がします。40代に入っても使い続けられそうです」
2.〈COMOLI〉のデニムジャケット
「コモリはずっと好きなブランドです。たしか、デビューから2、3シーズンあと、黒のベルテッドデニムを買ったのが最初でした」
「デザイナーの小森さんは、将来古着屋に並べられているイメージをもって洋服をつくっていると聞いたがことがあります。だからデザインが効きすぎてないベーシックなアイテムが多くて、でも、ほかとはちょっと違うんですよね。どの洋服からもこだわりが感じられます」
「これは24AWのアイテムで、ワークジャケットがベースになったデニムジャケット。裏地にはふっくらしたコットンが張ってあって保温性もほんのりあるので、しっかりアウターとして着られます」
「気に入っているのは、レザーで切り替えられた襟。その質感は無骨なんですけど、でも丸みのあるパターンのおかげでやわらかい印象です。そういう女性っぽいエッセンスがほのかに感じられるアイテムが、すごく好きなんです」
3.〈Lesca〉のサングラス
「最近、軽井沢に旅行したとき、友人がやっているメゾンママニエというセレクトショップに立ち寄って、そこで出合ったのがこのレスカの『クラウンパント』です。レスカの眼鏡は、ずっと何か欲しいなと思いつつ、これまでいいのを見つけられなかったんです」
「これはアップサイクリングというシリーズのもので、昔のフレーム素材といまの技術を掛け合わせて造っているそうです」
「なにより気に入っているのは、べっ甲とグリーンが合わさったこの配色です。見る角度によって印象が変わるのも面白いですし、夏にはグリーンの爽やかさが、冬にはべっ甲の落ち着きが際立って、年中、顔まわりのアクセントになるのがいい。本当に絶妙なデザインだなと思います」
「メゾンママニエにはその後も遊びに行って、ウティのグリーンのシャツや、エルメスのグリーンの『カレ』を買いました。そういえばグリーンばかりですね（笑） 軽井沢の土地からそういうインスピレーションを受けているのかも」
「地方のショップでいいものに出合うことが、最近は結構多いんです。若い頃は買い物といえば都内でしたが、旅先で買ったものは、思い出やエピソードまでのっかってくるから特別。いいものに出合うと、つい、『運命かも』って感じてしまうんですよね」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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