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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、アルファ ブランドコンサルティングでプレスを務める相原涼介さん。
1.〈OMEGA〉の腕時計

「これは、72年製のオメガ『デ・ヴィル レクタングル』。ついこのあいだ、リューズが抜けちゃったんです。修理に持って行くまでになかに水分が入ってしまわないよう、今日はラップに包んで持ってきました」

「レクタングルというとカルティエの『タンク』が有名ですが、この時計は、おそらく『タンク』の売れ行きに焦ったオメガが直後につくったモデルなんじゃないかって、時計屋さんが言っていました」

「僕も、本当は『タンク』が欲しかったんですよ。いまは持っていますが、当時は高くて手が出なかった。で、たまたま時計屋さんに行ったらこの『デ・ヴィル』があって、ひとと被らなそうだし、むしろこっちのほうがいいんじゃないかと思って選びました」

「『タンク』と比べると、サイズが大きめで、フラットな風防を含め全体的にシャープな印象。オメガといえばミリタリーのバックボーンがあるので、中身も、おそらくカルティエより頑丈なんじゃないかと思います。『それカルティエ?』って聞かれて、『そう見えて、じつはオメガ』っていうのも、ちょっと優越感があるというか。気に入っています」

「わりと、時計はしてきたタイプです。最初は高校受験のとき。時計のないセンター試験会場に着けて行かなきゃってなったときに、ちょっとオシャレもしたくて、親父のヴィンテージ時計を借りて行ったんです。その後試験会場で気づいたんですが、ヴィンテージだから、何時間も着けているとだんだんズレてくるんですよね……。試験には不向きでした(笑)」
2.〈POLO RALPH LAUREN〉のリネンジャケット

「昔から小柄なので、ずっと、早くオトナになりたいと思ってきました。ファッションで自信につなげたくて、腕時計や革靴は、高校の頃からワードローブ。ジャケットもそうです」

「夏でもジャケットを着たいほうで、着ないなって日でも、常に持って出かけます。夏のジャケット素材にはトロピカルウールもありますが、正直涼しくはないし、無理矢理感ありますよね(笑) 。いろいろ試した結果、リネンが一番いいなと思っています」


「ただ、リネン100%だと、ガサガサしていて着心地がよくない。その点、このジャケットはリネンにシルクが混紡されていて、やわらかいんです。シルクノイルっていうシルクの落ち綿が使われているので、独特のネップ感や、吸湿性と放湿性も特徴」

「ジャケットのフラワーホールにピンズをつけるのも、小さなこだわりです。これは一番気に入っているやつ。ちょっとしたユーモアも大切にしていたいんです」

「ファッションの目覚めは映画からの影響も大きいのですが、とくにテーラードジャケットを好きになったのは、クリストファー・ノーランの『インセプション』がきっかけ。モンバサっていう乾燥地帯の街でトム・ハーディが着ていたのが、ちょうどこんなリネンジャケットで、それがめちゃくちゃ格好いいんですよ」
3.〈Screen Test〉のキャップ

「映画といえばウォン・カーウァイが大好きで、インスタで流れてきたこのキャップは即決でした。スクリーンテストというロンドンのブランドがリリースしたキャップで、監督の名前が刺繍でレタリングされています」

「このキャップのデザイナーは、95年に公開された『FALLEN ANGELS』っていう作品がとくに好きらしくて、そこを起点に、94年公開の『Chungking Express』と2000年の『IN THE MOOD OF LOVE』のそれぞれの年号を並べたそうです」

「もちろん僕も3つとも観ていて、香港の、湿って鬱屈とした都会感がツボです。東京の暑い夏も、なんとなくその映画の雰囲気を思い起こさせるものがあって、夏に被りたいキャップですね」


「自分で着る洋服は、できるだけ自分につながりのあるものにしたいと思っています。適当に選びたくないっていう、反骨精神の表れでもあるかもしれません。でもそういう洋服を身につけていると、『それなに?』って日常的に突っ込まれることも自然と多くなって、そういうのもうれしいんですよね」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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