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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、メンズノンノモデルの中田圭祐。
1.〈CarService〉のスタジャン

「20代前半の頃は、流行りに左右されることも多かったし、いまでも、トレンドを追いかけるファッション感覚も絶やしたくないと思っています。でもここ数年は、洋服をこだわって着るのも素敵だなって、そういうふうに思えるようになってきました。バックボーンを感じられるものとか、それを選ぶ“裏付け”みたいなものも、大切にしたい」

「たとえば友人がやっているブランドの、年々クオリティーが上がっていく様子を見るとか。長年自分で愛用することで育った服を、さらに大事にしようって気持ちになるとか。8,000円で買った古着のニットを、『それ、オーラリー?』みたいに知り合いに聞かれることがあるとか。そういうことを、より楽しめるようになった気がします」


「カーサービスのこのスタジャンは、24AWシーズンに買ったもの。ブランドのメンバーである橋本奎くんと伊藤トキオくんとは、すごく仲がよくて、とくにトキオくんとは10年来の付き合い。4年前くらいに彼と久しぶりに会ったとき、僕はちょうど車に興味が湧いて探していて、偶然、欲しいと思っていた2台をどちらも彼が持っていたんです」

「それでトキオくんからいろんな話を聞いたり、車屋に一緒に連れて行ってもらったりしながら、最終的にホンダ車を買うことになって。そこから僕のカーライフがはじまりました。それまで、服オタクな友達はたくさんいたんですけど、車の世界が広がって、ファッションと同じようにライフスタイルの一環として楽しむ彼らのコミュニティーにも触れるようになりました」

「スタジアムジャンパーって、もとは大学やチームのユニフォームなので、古着で買って着てみても、その大学やチームの一員ではないぶん、どこか着づらかったんです。それだけに、車好きの一員として、カーサービスのこのスタジャンを着られることには、なんとも言えない喜びみたいなものがあります」
2.〈Onitsuka Tiger〉のスニーカー

「オニツカタイガーの『メキシコ 66』、これはもう名作ですよね。昔から知ってはいたけど、個人的には『数あるランニングシューズのひとつ』くらいにしか思っていませんでした」

「ただ、スタイリストの猪塚(慶太)さんが衣装のコーディネートに使っているのをインスタグラムで見かけて。『カッコいい靴だな。何だろう?……これメキシコじゃん!』って」

「それはちょうど2台目の車を買った時期で。マニュアル車だったんですけど、サーキットに初めて行ってみようとしたとき、ペダル操作のしやすいレーシングシューズが必要だったんです。そのままファッションとしても使える靴がいいなと探していたとき、ちょうどよく見つけたのがその猪塚さんの投稿でした」


「履いてみると、革の質がすごくよくて、弱いところはちゃんとスエードで補強されているから、けっこう荒く使ってもびくともしません。モノトーンのカラーリングもモダンだし。僕のなかでは、ヴァンズのオーセンティックとか、コンバースのオールスターに匹敵するような、完成された1足です」
3.〈Levi’s〉のデニムパンツ

「これは、1955年に発売された501XXを、リーバイスが6、7年前に復刻販売したもの。501®は穿いたこともあったけど、ヴィンテージに詳しかったりするわけではないし、なんとなくの憧れだけがありました。でもオリジナルなんて100万円とかするものもあるから、手は出ないですよね」

「ワンウォッシュしてレングスがちょうど僕に合うように逆算してもらって、お店のひとに選んでもらった1本です。ワンウォッシュの状態からデニムを穿くのは初めてのことでした」


「最初はバックポケットに財布を入れていたんですけど、お金を踏むのは良くないなと思い前ポケットに移動。それでアタリの出方が変わったり。膝の抜けも、古着だと当然ズレるけど、これはちゃんと自分の膝位置になっています」

「長いこと穿いていると、そうした自分だけの表情が生まれて、いまでは、なんか、可愛いヤツです。ちょうどアメカジ世代だった親父にも、『お前それ何だよ? いい色落ちじゃねぇか』みたいに言われて、嬉しかったり。最初の話にもつながりますが、ひとつの服を長く着る楽しさみたいなものを教えてもらった気がします」

「オリジナルじゃないとダメ、っていう考え方もわかるんですけど、新品も、長年かけて穿いていけば、いつかヴィンテージになる。オリジナルのヴィンテージには手を出しづらい20代の若い子たちもそういう経験ができるなら、“ヴィンテージ復刻モデルのヴィンテージ”っていうのも、悪くないですよね」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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