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服好きたちの私物のなかでも、とくに思い入れの強い「人生のベストバイ」を教えてもらう連載。ひとつには絞りきれないって? なら、3つ教えてください!
人生のベストバイ、3つ教えて!

今回の服好きゲストは、フリーランスディレクターの石黒晴輝さん。
1.〈DAISO〉の麦わら帽子

「大学時代、たしかフェスに行こうとしていて、街でも被れる麦わら帽子を探していました。ダイソーで偶然見つけた100円の麦わら帽子がちょうどよくて、それから8年以上使っています」

「帽子メーカーだと平気で1万円以上して、当時の僕にとっては高い買い物だった。それに、正直、何でもよかったんです。去年ダイソーでまた同じのを見つけて、ストック買いしました」

「値段が高いもの、クオリティーの良いものが、自分にとっていいものとは限らないと思っています。いまは27歳ですが、僕がやたらメゾンの洋服ばかりを身につけても、身の丈に合わない感じがする。いいものに甘えて、慣れてしまいたくないんです」

「いつもダイソーでは、日用品を買ったついでに、靴下やベルトとかそういうコーナーを覗いてみるんです。去年ヘッドフォン代わりにイヤーマフを買ったり、最近は帽子に後付けできるアゴ紐を買ったり、あとウーフォスもどきみたいなサンダルも持っていたりします。ドン・キホーテも、同じようにして楽しむ場所ですね」

「だれもファッション目線で見ていないものを、気づかれないようにオシャレに見せたい、みたいな気持ちもつねにあります。正統派ファッション路線では、知識も経験も豊富なベテランの先輩方に絶対敵わないので、そうやってかわしているだけなんですけどね(笑)」
2.〈Cristaseya〉のワークジャケット

「去年から本当によく着ているアウターです。インスタで着用写真を載せたこともあって、問い合わせが断トツに多いアイテム。たぶん、それだけ自分のイメージを形成している1着なんだと思います」

「もともとカーハートのワークジャケットをよく着ていましたが、やっぱり同じワークジャケットでも、クリスタセヤであることにすごく意味を感じます。ふだんの格好が結構カジュアルなので、そこにワークジャケットを合わせるのは自然なんですけど、それがこのブランドなら、決して野暮ったくならないですし」



「ダイソーの麦わら帽子に比べるまでもないですが、僕にとっては高いお買い物でした。でも、ダイソーの麦わら帽もこのジャケットも同じくらい自分にとっていいものだし、同じ目線で、なにも考えずデイリーに使えるもの。高いからすごく大事に扱おうとか、安いから適当に使おうとか、無いんです。どちらも“ただの一軍”みたいな感じ」
3.〈Cotopaxi〉のリュックサック

「数ヶ月前、京都のロフトマンさんでポップアップをやらせていただきました。このコトパクシのリュックサックは、そのときにお店で買ったもの。配色をはじめいろんな要素が、なんかすごく自分っぽいなと思って、久しぶりに買ったリュックです」


「ほかのアウトドアブランドの廃材のみを使ってつくられる1点モノで、配色の組み合わせはぜんぶ職人任せ。しかも、ステッチや、バックルの“オス”“メス”までもが配色違いで、その感性に驚きました」

「オンラインストアもあるのですが、1点モノのそれぞれがすべて写真に撮って掲載されています。つくっているものはサステナブルなのに、作業はぜんぜんサステナブルじゃなくて、その意味のわからなさにヤラレて、いちばん好きなアウトドアブランドになりました」

「こうした色モノをナチュラルに使えるのも、自分のキャラかなと思います。何を着ても色を拾えるし、今日みたいなコーディネートも全然しちゃいますし。ダイソーの麦わら帽子を買ったときみたいに、やっぱり、すごく“何でもいい”し、できるだけファッション文脈以外からもファッションのヒントを探したいんです」

「だから、僕がつくっているバイエーのTシャツやスウェットも、ユナイテッドアスレやニューハッタンといった“有りボディ”をあえて使っています。『糸が〜』とか『縫製が〜』とかいった“つくり”に詳しくなくても楽しめるように。だれもが知っているボディを使っていて可愛いのであれば、それで十分じゃないかと思うんです」
Photos: Shintaro Yoshimatsu Composition&Text: Masahiro Kosaka[CORNELL]
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