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60~70年代のテーラードジャケットが素敵すぎた!「コートもカッコいいものばかりです」【プロが推す東京の古着屋㉞YAURAN(ヨウラン)】

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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。前回に引き続き、本記事ではスタイリスト佐藤弘樹さんが世田谷のYAURAN(ヨウラン)を紹介する。

世田谷 YAURAN(ヨウラン)

ヨウランは池尻大橋の古着店・ハグレ出身の稲葉大輔さんが立ち上げた新しい古着店。スタイリストの佐藤さんはハグレ時代に稲葉さんと知り合いヨウランに足を運んだ際、古着のセレクトはもちろん、空間づくりにも強く心を動かされたという。

今回のお店を訪ねたのは…

スタイリスト

佐藤弘樹 さん

埼玉県出身。バンタンデザイン研究所を卒業後、スタイリスト 宇佐美 陽平氏に師事。2022年に独立し、ファッションメディアを中心に活躍。ブランドのビジュアル制作などではスタイリングだけでなくディレクションを担当することも。最近は、長年敬遠していたデニムパンツに目覚め、私服にも変化が。

     

【お店の注目ポイント】
今のファッションと親和性の高い
60~70年代の上質な古着の宝庫

世田谷線世田谷駅から徒歩2分ほどのビルの2階に、2023年9月にオープンしたヨウラン。1960年代から70年代のアメリカ古着にフォーカスしつつ、ひと味違うセレクトでおしゃれ好きに注目される一軒に。メンズ古着を扱いながら、ウィメンズのモード誌からも引っ張りだこの古着店だ。


スタイリストの佐藤さんは、専門学校時代の先輩のポップアップに誘われてヨウランに足を運んだ。そこでハグレ時代に親交のあった店主の稲葉さんと再会。ハグレは感度の高い人たちに愛される池尻大橋の古着店。佐藤さんがアシスタント時代から、公私ともに頼りにしていた存在だ。

ヨウランの独特な空間づくりもさることながら、ハグレ出身らしく良質で、店主の趣向が伝わる古着のセレクトにも感動。そして会話をする中で、同世代であることがわかり親近感が一気に深まった。この日も「ヨウランは広々とした空間に古着がゆったりと並んでいるのがいいですよね」と、言葉をかわすとさっそく古着を見始めた。

ヴィンテージなのにどこかモダン

最初のラックから大胆な編み込み柄のニットを手に取る。

「このニット、いいですね」(佐藤)「これは80~90年代のハンドニットです。いわゆるお母さんが息子のために編んだような」(稲葉)「タグが付いてなかったのでそうかなと思いました。でも今着ても違和感のない、モダンなデザインですよね」(佐藤)。


続いて目に留まったのは淡いベージュ系カラーのレーヨンシャツ。

「このシャツはレーヨン素材でロングポイントというのが珍しいですね」(佐藤)「40年代後半から50年代のレーヨン・ギャバジン素材のシャツで、ウエスタンシャツに近いデザインです」(稲葉)「シャツ好きとしては、こういうヴィンテージのレーヨンシャツがこれだけきれいな状態で店頭に出ているのはすごくうれしい。きれいなシャツは、やっぱりきれいなまま着たいので」(佐藤)。

ダメージ古着の話になると稲葉さんが別のラックからスウェットをピックアップして、ヨウランのセレクト基準について解説してくれた。

「僕も“ボロ”はピックアップするんですが、許せるボロとそうでないボロがあって。このスウェットのようにカジュアルなボロはOKです。でもドレスシャツは、やはりきれいな状態でないという思入れがあって、その線引きが大事だと思います」(稲葉)

佐藤さんも同調する。


対面のカラフルなラックからは、入ってきたときから気になっていたというボーダー柄のジップアップニットをピックアップ。

「いわゆるトラックジャケットをニットでつくったようなアイテムですが、ネックのリブを長めにとっているのが70年代っぽいですね。試着してみてもいいですか?」(佐藤)

実際に袖を通してみると、「サイズ感もめちゃくちゃいいですね。この時代ってタイトなアイテムが多いと思うんですが、このニットは身幅もあって、今の気分に合うサイズ感です」(佐藤)「似合いますね。これはシェトランドウールとアクリルの混紡で、アクリルの発色のよさもありつつ、毛足が長くて見た目はシェトランドニットという。いいとこ取りの一着です」(稲葉)


圧巻のテーラードジャケット

佐藤さんはもともと70年代の古着が好きで、稲葉さんも60~70年代の古着をメインにピックアップしているということで意気投合することも多い。「50年代だとデザインの自由度が低いんですが、60~70年代はモノも多いし、80年代ほど多様化していないところがちょうどいいんですよね」と稲葉さん。

佐藤さんがテーラードジャケットの充実ぶりに言及すると、「テーラードは好きで、サマーテーラードも含めて1年中置くようにしています。秋冬は2ラックを割いています」(稲葉)。ラックの中から気になるチェックのジャケットを試着してみる。

「凹凸のある生地がかわいいですね。形も肩が張りすぎているわけでなく、ウエストが絞られすぎているわけでもなく、すごく着やすいです」(佐藤)「僕自身、メンズトラッドが好きなので、ドレッシーになりすぎず、カジュアルに着られる60~70年代のテーラードジャケットを集めています」(稲葉)。

このジャケットもこの日の佐藤さんのスタイルにしっくりなじんでいた。


もう1点、佐藤さんが手に取ったのはパープルのベルベット素材のジャケット。「こういうジャケットは古着ならではという感じがします」(佐藤)「アリゾナの州都、フェニックスで買い付けたものでイタリア製の上質な生地を使ったテーラーメイドです。今季はパープルがとても気になって、やたらとパープルを買い付けていました(笑)」(稲葉)。

この日稲葉さんが履いていたビルケンシュトックのザルツブルグもパープルだった。

短丈もロングも欲しいコートを発見

窓側の一段上がったところはコートのコーナー。「コートもカッコいいものばかりです」と、オンブレチェックのコートを手にする。「それは60年代のウールのオンブレチェックです。同じオンブレチェックでもこれがレーヨンのシャツだったりすると、10万円以上とか、とんでもない値段がついてしまいます」(稲葉)「ですよね…。このコートはありそうでない感じが素敵です」(佐藤)

羽織るとキャスケットとの相性も見事で、クラシックながらも今の空気をまとったスタイリングが完成した。ちなみに試着するアイテムがどれも佐藤さんのジャストサイズなのは、「僕がフィッティングして買い付けしているから、僕の体型に近い佐藤さんは全部サイズが合ってしまうんですね(笑)」と稲葉さんが教えてくれた。


同じラックからもう1点、淡いベージュのツイードのコートを「これも気になったんです」と試着。「ウールのコートは60年代以前のものしか買わないようにしています。60年代までの生地が圧倒的にいいんです。このツイードも、よく見るとオレンジのネップ(色糸)が入っていて、これがあることでクラシックになりすぎない表情になるんですよ」と稲葉さんが解説してくれる。

「見るからに佇まいがいい。めちゃくちゃ好きです。コートは大好きで、いろいろ持ってはいるんですが、ここまで明るいトーンのロングコートは持っておらず…。シルエットもすごくいいですし」と、第1ボタンを留めて襟を立てたり、開けてテーラードスタイルにしたり着こなしの可能性を探る佐藤さん。最後に「万能ですね!」と満面の笑みを浮かべた。

スタイリスト佐藤さんが
「ヨウラン」で選んだ古着5選

店内を回る中で気になるアイテムは一点一点、稲葉さんの解説を聞きながら理解を深め、スイタリングもあれこれ想定して吟味していった佐藤さん。回遊中に手に取ったアイテムが気になる5点として並んだ。

1_ロングポイントレーヨンシャツ

50’s レーヨンシャツ¥25,300

まずは、コンディションのよさに感動したレーヨンシャツ。「ロングポイントだったので70’sのものかと思いきや、50’sの古着という意外性。レーヨンシャツは好きで自分でもいろいろ持っていますが、この年代だとほぼ開襟なので、これは希少です。ウエスタンのディテールもかわいいです」(佐藤)。


ロングポイントの形がクラシックで独特。襟元のネームタグにロープのフォントが使われているのもウエスタンシャツならでは。

2_ウールチェックシャツ

70’s ウールチェックシャツ¥22,000

モダンな配色が目を引いたウールチェックシャツ。「ブラウン×イエローという配色が上品でいいなと思いました。このタイプのシャツに多い赤系チェックのようないなたさがなく、年代を感じさせないリラックス感のあるフィットを選んでいる点も好印象」(佐藤)。


3_ジップアップニット

70’s ジップアップボーダーニット¥22,000

トラックジャケットのような雰囲気のジップアップニット。「70年代のトラックジャケットだとタイトなシルエットが多いんですが、これはザ・70’sなつくりながら、今っぽいサイズ感が魅力的です。アイボリー×ライトブルーの配色も美しく、冬のコーディネートに華やかさを添えてくれます」(佐藤)。

4_オンブレチェックコート

60’s ペニーズのオンブレチェックコート¥39,600

モノトーン配色の奥行を感じるオンブレチェックコート。「オンブレチェックのシャツはよくありますが、ウールのコートはなかなか出会わないものです。チェックが大振りでもいなたさがなく、身幅もたっぷりとしていて、ボクシーなシルエットが今のスタイルに取り入れやすい」(佐藤)。


5_ツイードロングコート

50’s ツイードロングコート¥66,000

オレンジのネップがモダンさを添えるテーラードスタイルのロングコート。「これは今欲しい、ドンズバのコートでした。ほぼ同じ形のブラウンのコートを持っていますが、ちょうどこのぐらいの明るいトーンが着たいと思っていたので。古着ならではのよさもありながら、今のムードをまとえるカラーリングです」(佐藤)。

稲葉さんによれば「60年代まではゆっくりと時間をかける織機を使っていたので、風合いのいい上質な生地が多い」のだとか。70年代になると化繊生地が普及して大量生産が主流になり、いい生地が減っていく。「ウールコートは60年代以前のもの」とこだわる理由は、そこにある。

【古着でコーディネート】
明るいカラーリングを活かして
ロングコートを軽やかに着こなす

試着した中でもこの日一番テンションの高かった、ツイードのロングコートでスタイリングを組んだ佐藤さん。「きょうの私服にもすごく合ったので、私服を活かしました」(佐藤)。


50’s ツイードロングコート¥66,000・60’s アーガイルモヘアニット¥44,000

「最近は太めのワイドパンツを穿くことが増えて、ロングコートからズトンとしたパンツが見えるバランスがいいなと、私服のファウンド(FOUND/アメリカのデニムブランド)のアイボリーのジーンズを活かしました。スラックスも合うと思いますが、足元に少したまるぐらいのジーンズで抜け感をつくるのが気分です」(佐藤)

インナーには回遊の中で見つけたモヘアのアーガイルニットをプラスした。「ベージュと同系色のブラウンがちょうどいい締め色になると思って、インナーに加えました。コートを脱いでも、着こなしのトーンがそろったコーディネートになったと思います」(佐藤)。

重くなりがちな冬のコートスタイルを、あえて淡いトーンでまとめることでエレガントに演出している。インナーにダークトーン、キャスケットやショートブーツは黒で、引き締まった印象に。

取材を終えて

「先入観を持たずに服を見てほしい」という店主・稲葉さんの言葉通り、タグの情報ではなく、感覚的に自分がいいと思った古着をピックアップした佐藤さん。「60~70年代のヴィンテージの中から、クオリティのよさだけでなく、今の時代になじむサイズ感やカラーリングを選んでいるところがさすがだなと思いました。どの古着にも新鮮な視点があるので、古着の可能性を広げたい人はぜひ来てみてください!」(佐藤)。

アメリカ西海岸を中心に買い付けをしながら、古着王道のワーク、ミリタリー、アウトドアウェアは選ばないというヨウラン。本当に上質なものとは何かを教えてくれる、希少な古着店だ。佐藤さんと同じように、ぜひ稲葉さんと会話しながら、古着選びを楽しんでほしい。

    

【動画公開中】
佐藤さんと稲葉さんの
息の合った会話に引き込まれる!

60~70年代の古着が好きというベースラインが似ていて、お互いに知見が広いということもあって、一点一点掘り下げながら古着を見ていくふたり。この時代がどうして魅力的で素晴らしい古着が多いのか? 本質的な服の見方が学べる動画は、必見!


    

SHOP DATA

住所:東京都世田谷区世田谷1-15-11 大語ビル2F
営業時間:13:00〜20:00
不定休 
Instagram:https://www.instagram.com/_yauran_/

Photos : Kaho Yanagi
Movie : Yumi Yamasaki
Movie Edit : Yuki Hayashi
Composition & Text : Hisami Kotakemori

小竹森久美

小竹森久美

エディター

「僕らの永久定番ファイル」や「コレクション速報」などファッションテーマを幅広く執筆。

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