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おしゃれプロが推しの古着屋を紹介する連載。前回に引き続き本記事でも、スタイリスト八木啓紀さんが頼りにしている学芸大学の「リンボー」を紹介。
学芸大学 LIMBO(リンボー)
「リンボー」は原宿の人気古着店出身の安部博志さんが立ち上げた古着店。安部さんは八木さんの専門学校時代の同級生ということもあって、気心知れた間柄。もちろん古着のセレクトのセンスにも一目置いている。
今回のお店を訪ねたのは…
【お店の注目ポイント】
雰囲気の合うアイテムが1ラックに
陳列されコーディネートが組みやすい!
古着屋の多い学芸大学エリアのはずれ、住宅街の一角に2024年1月にオープンしたリンボー。八木さんは安部さんから連絡をもらい開店祝いにも駆けつけた。「価格が手ごろで、今の時代に合った古着が見つかる店です。雰囲気がゆるいこともあり落ち着くので、つい長居してしまうんですよね」(八木)

入口すぐのカウターがマネージャーの安部さんとスタッフの小坂太一さんの定位置。行くとふたりに軽く挨拶して、そのときどきのお目当ての古着を見て回る。プライベートで足を運ぶこともあれば、仕事がらみのリサーチで訪れることも多く、アベちゃん、タイチ君と呼ぶ間柄。

入口側から壁に沿って見ていくのが八木さんの定例コース。「古着の中でもTシャツは好きで、最近は企業モノに注目しています。新品では絶対売ってないような、ヘンな古着にも弱いです」(八木)。
最初のラックから赤いプリントTシャツを手に取り「リンボーはTシャツのセレクトがいいんですよね。個人的にバックプリントが好きで、こういうフェード感のある色に目が留まります」(八木)。この日の私服からもわかるようにプライベートはモノトーン派だが、スタイリングには色をきかせることが多いとか。

次のラックで気になるパジャマパンツを発見。「かわいいけど、これは?」(八木)「パジャマパンツは好きでよく買い付けている。ウエストを絞って革靴とか合わせてもらったから素敵かなと」(安部)。
そんなやり取りの後、同じラックから花柄プリントシャツをピックアップして、八木さんがコーディネートを組むと「まさに同じ組み合わせで、先日ストーリーに上げました!」と小坂さんが感動した様子。「この組み合わせで白シャツとか腰に巻きたいね」(八木)「そのシャツはポケットの柄合わせがてしっかりされていていいんだよね」(安部)。会話が続く。

どこかアイビーなニュアンスの古着が目に付くリンボー。「こういうハンパ丈って面白いね」とマドラスチェックの七分袖ジップブルゾンを八木さんが手に取ると「夏はパンツもハンパ丈推し」と安部さん。提案されたアイテムをチェックしながら回遊していく。

オープンから通っているという八木さんだが、リンボーが実在のファッション感度の高い人物をオマージュして、ラックごとに古着を並べているということを知らなかった。「それでラックごとにスタイリングが組みやすいんだ」と感心していると「でも9割の人が別々のラックから古着をピックアップして買っていくけれどね」と安部さん。

「ボーリングシャツだ」と八木さんがイエローのシャツを取り出す。「僕ら世代には懐かしいよね。これは70年代くらのもので、綿ポリ素材」と安部さんが私見を交えて解説。「比翼になっているのが珍しい」とディテールをチェックする八木さん。

「これも面白い。半袖のジャージ?」(八木)「あまり売れないんだけど(笑)」(安部)「SACRED HEARTS? デザインはライフガードっぽいね」(八木)「SACRED HEARTSは調べたらキリスト教系の学校のことでした。学校のユニフォームかなと」(小坂)。
実は八木さん、現在抱えている広告案件で「カラフルにしてほしい」というリクエストがあったと告白。「だから、これも使えるかも? と、ついカラーものに目が行っちゃうんですよね(笑)」(八木)。仕事モードに突入していた。

店奧のコーナーにはキャップや靴など小物が陳列されている。気になるキャップを試着して、最初は普通にかぶったものの、逆かぶりしたら「こっちのほうがしっくりくる」(八木)。スタッフにも賛同され思わず笑顔に。

再び服を見始め「ビジネスマンっぽいラック」(八木)とラックのテーマになっている人物像を想像する八木さんに「純粋に古着を見てもらえれば(苦)」と安部さん。今度は2枚シャツを取り出し重ね着させると、中央のラックに並ぶ気になるショーツと合わせてバランスを見る。再び仕事モード。

その直後、今度はオールドネイビーのハンパ丈パンツに遭遇し「オールドネイビー、個人的に好きです」(八木)「オールドネイビー、いいよね」(安部)「ある古着屋でオールドネイビーのベストを買ったら、後日、シュプリームのデザインチームから『あれ、まだある?』と問い合わせがあったって」(八木)「へー、自国じゃないところでサンプリングしているんだ」(安部)。同級生会話が続く。

プレッピー的なポロシャツを見つけ「これも古着っぽくていいけど、どうやって着たらカッコよくなるんだろう?」(八木)と自問。すると小坂さんが「さっきのオールドネイビーのハンパ丈パンツとかどうですか? ちょっとポップな感じになるんで、革靴を合わせて締めてもらったらカッコよくなるんじゃないんですか?」とコーディネート提案をしてくれた。「確かに」と八木さんも納得。

最後にチェックしたラックには隠し玉が。「かわいい」と取り出したのはヴィンテージのドリズラーブルゾン。「これめちゃくちゃ汚れてたんだけど、洗ったらいい感になるかと思って買い付けて。実際洗ってみたらよくなりました」(安部)。
試着してみるとサイズもぴったり。安部さんもかなり気に入った様子。こうして和気あいあいと、充実の回遊が終了した。
スタイリスト八木さんが
「リンボー」でピックアップした
古着5選
たびたび仕事モードに突入していた八木さんだが、選んだ古着は「自分が着たい」と思ったモノ。ヴィンテージから新古品と年代は幅広く、リンボーの「買いやすい価格」も伝わるセレクトになった。
1_バックプリントTシャツ

1970~80年代に活躍したカナダ出身のプログレッシブロックバンド、ラッシュのバンドT。「Tシャツのセレクトは僕にとって、その古着屋のテイストを知るバロメーター。リンボーにはいいグラフィックTが多くて信頼できます。バンTと知らずに選びましたが、Tシャツはいつもパッと見で、雰囲気がいいものをピックアップしています」(八木)。
1987年のアルバムジャケットのグラフィックを前後にプリントしている。ヴィヴィッドカラーもこのぐらいフェードしていると取り入れやすい。
2_オーセンティックなチェックシャツ

カーキ系のブラウンとグリーンのチェック柄開襟シャツ。「オーセンティックな開襟シャツです。襟の形のきれいさと落ち着いた配色に惹かれました。開襟シャツはレイヤードがしやすいので、スタイリングでもよく使います」(八木)。

古着でよく見かけるケントフィールドのシャツ。GENUINE PIMA COTTONと織ネームにあるように上質なピマコットンを使用していて、風合いもいい。
3_ペリーエリスのシャツ

アメリカのデザイナーブランド、ペリーエリスはマーク・ジェイコブスやトム・フォードが在籍していたことでも有名。「リンボーでときどき出くわす、古着ならではのデザイナーブランドのひとつがペリーエリス。渋いグリーン系の色とデザイナーズものならではのテロンとした素材感で色気があります」(八木)。
4_ライラック色のスウェットショーツ

オール・イン・モーションはアメリカのアスレジャーブランド。「ちょっとオーラリー風のライラック色でスウェットというところがツボです。動きやすいアイテムは好物ですが、ソックス&革靴のように少しかっちりした要素を入れて着こなしたいです」(八木)
「コロナ禍の2020年に始動した新しいブランドで、これはスリフトショップで買い付けた新古品です。このブランドは個人的に注目していて、アメリカで、コレはと思うものを見つければ仕入れています」(安部)。
5_オールドネイビーのハンパ丈パンツ

ギャップ・グループが展開する低価格ブランドとして1994年に誕生したオールドネイビー。日本での展開は終了しているが、アメリカでは今も人気を集める。「ギャップよりも攻めたデザインが好みです。このハンパ丈パンツには90’sなムードを感じて、見つけた瞬間、スタイリングのアイデアがいろいろと浮かびました」(八木)。
【古着でコーディネート】
ハンパ丈パンツはロングブーツとの
コーディネートでエッジをきかせる
好きなブランドということはもちろん、今の服にはないようなデザインという部分でも八木さんのアンテナに触れたハンパ丈パンツ。リンボーの推しアイテムでもある。「今日履いてきたヴィンテージのシアーズのブーツとも相性がよさそう」ということで、コーディネートのメインアイテムに選んだ。

回遊終盤に見つけたコンパクトなドリズラージャケットが「ハンパ丈に合いそう」とコーディネートするとしっくり合った。インナーは私服の白Tでもよかったが、「グラフィックTはポジティブなメッセージのあるものを着たいよね」と安部さんが解説してくれたDFEの人種差別反対のグラフィックTを合わせた。
「ドリズラーにハンパ丈パンツは野暮ったく見えがちですが、ヴィンテージのブーツのようなエッジのきいたアイテムを合わせるとファッション感が出ます。カジュアルに振らず、革靴でドレスアップ要素を入れるのが成功の鍵だと思います。グラフィックTシャツはモノトーンを選んで全体のテンションは変えず、古着ならではコーディネートにまとめました」(八木)

八木さんはこの日はいていたストーンマスターのパンツの上にハンパ丈を重ねていた。「パンツレイヤードにしても面白いと思います。レイヤードは個性がアピールできるので、スタイリングでもよくやっています。同系色でまとめれば、さりげないアクセントになります」(八木)。ちょっとしたことで印象が変わる着こなしテクを披露してくれた。
取材を終えて
駅から離れた立地もあって人通りも少なく、のんびりとしたムードが心地よいリンボー。「リンボー独特の古着の陳列方法をきょう知ったのは収穫でした! いつ来ても気になるものがあれこれ多くて楽しいお店です。今日は今取り組んでいる仕事に使いたいものがいろいろ見つかったし、アイデアもふくらみました」(八木)。
住宅街にあるからこそ「無理せず自分たちのペースで楽しみながらできている」と安部さん。店先のベンチが近所の人たちの憩いの場になっていて、ご近所の常連が多いというのもリンボーらしいエピソード。ほどよい距離感で古着の魅力を伝えてくれる小坂さんの接客も素晴らしく、駅からちょっと歩いても行く価値は大きい!
【動画公開中】
ほかにも魅力的な古着がザクザク!
和気あいあいとしたトークは動画で!
気になる古着を見つけると反射的にコーディネートを組んでしまうスタイリスト気質な八木さんと、同級生ならではのフランクな姿勢で接客する安部さん。そして絶妙なタイミングでふたりに絡んでくる小坂さん。リンボーの「ゆるく」て「親しみやすい」雰囲気が伝わってくる動画は必見!
SHOP DATA
住所:東京都世田谷区下馬6-18-8-105
営業時間:平日15:00~22:00・土日祝日14:00~21:00
不定休(インスタグラムを要チェック)
Instagram:https://www.instagram.com/limbo_tokyo/
HP:https://limbo.katalok.ooo/ja

Photos : Kaho Yanagi
Movie : Yumi Yamasaki
Movie Edit : Yuki Hayashi
Composition & Text : Hisami Kotakemori
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