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8月の終わり、夏休みをとって、8月号の本誌でも紹介した
越後妻有の『大地の芸術祭』に行ってきました。
『大地の芸術祭』はトリエンナーレ=3年に一度開催される大規模なアートフェス。
行ってみたい、とずっと思っていました。ようやくこの夏実現しました。
越後湯沢からレンタカーを借りて、まずはアート巡りの拠点ともいえる十日町を目指しました。
十日町にある現代美術館「キナーレ」は芸術祭のメイン会場のひとつ。
暑くてふーふーいいながら、キナーレからスタート。
美術館のゲートに近づくと、見えてくるのがボルタンスキーの「No Man’s Land」。
9トンもの古着を中庭に積み上げ、それを巨大なクレーンがつかんでは落とす、という
スケールの大きい作品に度胆を抜かれます。
館内にもさまざまな作品が。
視覚的効果がおもしろい、カールステン・ヘラーの「Rolling Cylinder,2012」
芸術祭を楽しむのにマストバイなのが、「パスポート」。3500円ですべての作品が見られます。
各作品を観たあとはスタンプを。全部で300以上の作品があるので、2日間ではコンプリートはとても無理。
でもスタンプラリー、やりたくなるんですよね。
作業服のおじさんが車で一人で廻っていたり、おばさんが家族とにぎやかに観てたり、
地元の方もちらほらと、でも熱心に見て回ってたのが印象的、かつ微笑ましかったです。
開催地域中、町中のいろんな場所に作品が点在するため、目印は必須。
黄色い看板を目指して、ダラダラ汗を流しながら、てくてくと歩くのもまた楽し。
直島もそうでしたが、この大地の芸術祭も、地域と密着した企画作りがおもしろい。
美術館やギャラリーのなかで観る作品とは違うおもしろさ、力強さがあります。
それはなんでだろう、とずっと考えていたのですが。
山の中、神社の境内、棚田のあいだ、廃校、古民家、さまざま場所が選ばれているのですが
自然や古い建物の圧倒的な美しさや存在感、そのリアリティにたいしアートが挑む、
その真剣勝負が観る者を感動させるんだなあと思いました。
アートとは本来、社会と密接に関わっているもの。
いろんな作品を観ながらそれを再認識しました。
私にとって一番印象深かった作品は、廃校をまるごと舞台にしたアート。
ここは、小学校の分校だったそう。こじんまりした木造の校舎を一目見たときに「好き!」と思ってしまいました。
中に入ると小さな体育館いっぱいに、ガラスのキャニスターを並べたアート作品が。(上の写真)
小さな教室のなかには、それぞれ作品があるのですが、本棚、ピアノ、机、椅子など
たぶん子どもたちがまだいたころのまま残っていると思われるものがところどころにあって、
ありきたりな表現だけどそこだけ時が止まっているようで、キュンとなってしまいました。
もう一カ所、こちらも廃校ですが、もう少しスケールは大きく、
そして躍動感溢れる作品が廃校となってしまった学校自体の存在価値を高めているような、
とてもポジティブで楽しい気持ちになれる、「絵本と木の実の美術館」。
最後の写真はカフェ。これまた、ノルタルジックな内装が可愛い。
これら以外にも「廃校プロジェクト」がいくつかありましたが、少子化に加え、
2004年の中越地震が理由で廃校にせざるを得なかったところも多いそうです。
そう聞くとちょっと寂しくて複雑な気持ち。
しかし、どの学校を見ても自分のかつての母校のような、懐かしい気持ちになったのは年をとったからでしょうか。
学校だけでなく、人が住まなくなった古民家もアート作品として蘇っていました。
場所によっては、泊まれるアートとして、宿としても運営されている家があったのがおもしろかったです。
実際のインテリアにしても素敵そう。障子に描かれた絵と透ける風景が溶け合って美しい。小澤さよ子さんの作品。
これはちょっと怖かった。塩田千春さんの「家の記憶」
越後妻有『大地の芸術祭』は9月17日まで。
観光して、きれいな景色を見て、おいしいものを食べ、温泉に入り、そこにもれなくアートがついてくる、
そんな感じでとても楽しめますので、どこか行きたいと思ってる人には本当におすすめ。
しかし、6つの広大なエリアから構成されているので、私のように短期間の場合は絶対回りきれません。
いくつか地域を絞って、効率よく回るのがいいと思います。作品観るのにけっこう時間かかるし。
そしてできたらレンタカーがおすすめです。
私は比較的駐車場も空いていたと思われる平日に行ったので、休日の様子はわからないのですが、
自分のペースで予定を組み立てて動けるし、山奥の作品なんかも観に行けるので、レンタカーいいですよ。
今回は2日間だったけど、3年後はもうちょっと余裕を持った日程でまたトライしたいです。
アートって本当に自分にとって必要なんだなあ。
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012
期間:2012年7月29日(日)~9月17日(月)
http://www.echigo-tsumari.jp/
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