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「僕たちの未来はどうなるんだろう」。暗いニュースを聞くたびに、そんな不安が頭をよぎる今日この頃。社会を変えようと活動する人々は、今どんなことを考えてどんな未来が見えているのだろうか。同じ時代を生きる彼らと共に考えながら自分なりの希望を探してみよう。今回は、東京大学大学院新領域創成科学研究科・阿部将貴さんにお話を伺いました。
阿部将貴さんと話す
楽しんだっていい!
ポジティブな国際協力のこと
東京大学大学院新領域創成科学研究科
阿部将貴さん
PROFILE
1998年生まれ、埼玉県出身。高校2年生のときに訪れたベナンで最先端技術を駆使した支援活動に感銘を受ける。現在は東京大学大学院でドローン研究を行う。
文化も宗教も違うのに
僕たちの幸せの定義を
押しつけるのはなぜ?
インフラがない土地で
最先端の電子マネー!?
――昔から国際問題や途上国支援に関心があったのですか?
「いえ、まったく(笑)。高校生活がとにかくつまらなくて、海外留学を試みるも費用が高すぎて断念。留学に近い経験ができそうだな、と感じて、国際問題について語り合う『高校生国際会議』に参加しました。意識の高い帰国子女ばかりで、最初は会話にまったくついていけなかった(笑)。メンバーや専門家の話を聞いて海外への憧れがいっそう強くなっていた高校1年の終わりに、アフリカに行く先輩メンバーから誘われて、ベナン行きが決まりました」
――初めて行く外国がベナン!
「当時はベナンの存在すら知らず、ネットで調べたらマレーシアのペナン島の情報ばかり出てきたんですよ。リゾートじゃん!ってウキウキしながら向かったら、見渡す限り茶色い土地が広がっていました(笑)。ホームステイ先は立派な邸宅でしたが、ガスも水道もなく、電気は通っているけど1日の大半は停電していました。屋台へ食事しに行くと、もはや闇鍋状態(笑)。会計時に暗くてお金を出すのに苦労していると、現地の人は次々と携帯を差し出し、電子マネーで支払ったんです! 日本でも浸透していない時代だったから、インフラをすっ飛ばして最先端のキャッシュレスが広まるとは何事!? と衝撃を受けました」
――それは驚きますね。
「実はこれ、“カエル跳び現象”と呼ばれ、途上国では珍しくない事例なんです。わかりやすい例が、アフリカで広まっているドローンの配送サービス。ドローンを使うことで道路の整備、車両の購入、人材の育成など、通常の配送サービスを設置するために必要な時間とコストを大幅に削減できるんです。固定観念がいい意味で覆され、調べれば調べるほどワクワクして。テクノロジーを駆使した支援に可能性を感じ、アフリカ再訪を決意しました」
――なかでも応用のきくドローンに着目し、大学ではドローン研究を行うゼミに所属。2年生の夏から、ベナンの大学に1年間留学したとか。
「現地のドローン企業でのインターンも決まり、自信と希望に満ちていましたが……結論から言うと、考えが甘かった。僕が着目したのは採砂場の砂の計測で、ドローンを使えばかなり精密かつ短時間で済むんです。ただしドローンの購入とシステムの導入に50万円ほどかかり、平均月収が約7千円のベナンでは、人件費のほうが圧倒的に安い。導入には至りませんでしたが、諦めていません! 現在も大学院で引き続きドローン研究をしているので、いつかまたアフリカで再挑戦してみせます」
――阿部さんが、途上国支援を続ける理由を教えてください。
「シンプルに楽しいからですね。もちろんゴールとしてアフリカの発展に貢献したいという思いはありますけど、アフリカの人たちに対して、哀れみや同情は一切ありません。1年間の留学で現地の学生と日々意見交換をしましたが、目からウロコな発想に驚くことの連続で。例えば、日本では親が子どもを支えるのが当然だけど、アフリカの多くの国では、将来支えてもらうために子どもを産む側面もあるんです。文化も思想もまったく異なる人々に、日本人が考える幸せの形を押しつけてはいけないな、と再認識しました」
――国際協力に求める変化は?
「アフリカ=かわいそう、というアプローチでの支援に自尊心を踏みにじられた、という声は少なくないんです。そのほうが寄付が集まるので、難しいんですけど。ただ僕を含めて、暗いニュースだけが刺さる人ばかりじゃないとも思うんで。カエル跳び現象や、内争を止めるためにファッションの楽しさを発信するサプールなど、面白い側面がもっとフォーカスされて、楽しそうだから支援したい! というポジティブな支援の輪が広がれば最高ですね!」
アフリカ各国の学生との
意見交換では、目から
ウロコな発想が続出!
「大学2年生のときにベナンを再訪し、1年間の留学を経験。午前中は授業を受けて、午後はドローン企業でインターンとして働いていました。ドローン法規制に関する国際会議に出席させていただくなど、日本だったらありえない経験ができて大興奮しました!」
Photos:Teppei Hoshida Composition & Text:Ayano Nakanishi
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