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コロナ禍に脚光を浴びて以来、世界を魅了するエンタメ作品を数多く輩出しているタイ。タイドラマブームの火付け役となったBLドラマを筆頭に、多様な性と愛の形を描き続けるタイで近年、人気が急上昇しているのがGL(ガールズラブ)ドラマだ。
タイGLの金字塔とも言われる『ギャップ・ザ・シリーズ』(2022年)は、YouTubeでの累計再生数が8億回を突破。今では年間、多くのGL作品が誕生しており、作品のヒットとともに主演ペアがスターダムを駆け上がっている。
GL作品『Pluto』が大ヒット
タイの女優ペア、Namtan&Filmとは
中でも高い支持を得ているペアが、Namtan(ナムターン)&Film(フィルム)。ともにGMMTVに所属する人気俳優であり、共演経験もある二人は、昨年放送されたドラマ『Pluto』で初めて恋人役を演じてダブル主演。双子の姉が妹の恋人を愛してしまうという複雑なストーリーの本作で、Namtanは一人二役で双子の姉妹を、Filmは視力を失う女性の役を熱演し、ペアとしても大ブレイクを果たした。
そんな二人は今年5月、タイフェスティバル東京に出演するために来日。パフォーマンスを終えた直後、わずかな時間を縫ってメンズノンノのフォトシュート&インタビューに応えてくれた!
タイフェス後のふたりをキャッチ!
Namtan&Film インタビュー

NamtanもFilmも、芸能界入りを
目指してはいなかった!
――MEN’S NON-NO初登場ということで、お二人が芸能界に入ったキッカケを教えてください。
Namtan 私はアユタヤの出身で、学生時代はキャビンアテンダントを目指していました。言語を覚えて、いろんな国を訪れることができるところが素敵だな、と思って。私にはサッカー選手の兄(※)がいるのですが、学生の頃から選手として活躍し、勉強とキャリアを両立しながら成長していった兄の影響で、父から「Namtanも学びながら仕事をしてみないか?」と芸能の仕事を勧められました。
自分が芸能界に入るなんて想像もしていませんでしたが、芸能の仕事は誰もができるわけじゃない。価値のある経験ができると感じて挑戦したところ、演技に惹かれて、今に至ります。ちなみに兄はタイの代表選手に選ばれたこともあり、試合などで何度も日本を訪れているんですよ!(※Narubadin Weerawatnodom選手)
Film Filmは中流階級で育ったので、自分が稼いで実家の家計を助けたいと思っていました。学生の時に、携帯電話が壊れてしまったことがあって……GMMTVのコンテストに出場すると賞品として携帯電話がもらえると知り、参加を決意。そのコンテストをキッカケにGMMTVに所属することになって、役者として活動するようになりました。

お互いの印象は、演技が上手い!
ずっと共演を熱望していた
――同じくGMMTVに所属するNamtanさんは、Filmさんの先輩でもあります。お互いに対して、どんな印象を持っていましたか?
Namtan コンテストに参加していたN’Film(※)を見て、彼女はあらゆる才能に長けていると感じましたが、特に演技の能力が飛び抜けていたんです。いつか共演したいと思いながら、初めて叶ったのが『Last Twilight』。だけど、共演シーンが少なくて。撮影現場では会っていたんですけどね。(※N=Nongの略。年下の人や後輩に対して使われる敬称)
Film P’Namtan(※)は演技がとても上手なので、私もずっと、いつか共演したいと思っていました。(※P=Phiiの略。目上の人や先輩に対して使われる敬称)
Namtan きちんと共演できたのは、ダブル主演した『Pluto』。まさかパートナー役を演じるとは思っていなかったので、驚きました!

――『Pluto』でのタブル主演が決まった時のお気持ちを、改めて教えてください。
Film 偉大な先輩であるP’Namtanとダブル主演できることになり、嬉しかったです。この作品は、Filmにとって絶対に素晴らしい経験になる!と確信しました。
Namtan 同じく、すごく嬉しかったです。私たち二人は演技に対してパッションがあり、視聴者に向けていい演技をしたい!という目標を掲げているところが共通しています。そんなN’Filmとだから、同じ方向性を持って演じることができました。

GLドラマを多くの人に届けて
性の多様性の知識を広めたかった
――『Pluto』で、Namtanさんは一人二役を、Filmさんは視力を失う女性を演じています。それぞれにとって、とてもチャレンジングな作品だったのではないでしょうか。
Namtan おっしゃる通り、とてもチャレンジングな作品でした。まず、私たちには、この作品を通じて叶えたいことが2つありました。一つは、GLというジャンルのドラマを出来るだけ幅広い層に届けて、性の多様性についての知識を広めること。そしてもう一つは、目が不自由な女性のキャラクターを通じて、ユニバーサルデザイン(※)の重要性を知ってもらうことです。ユニバーサルデザインはタイではあまり認知されておらず、私自身もこのドラマに携わって初めて知りました。もっとたくさんの人が知るべきだし、このドラマをきっかけに、少しでも社会が変化して欲しいと強く感じたんです。(※すべての人が利用しやすいようにデザインされた製品や環境)
Film 今作の前に『Last Twilight』で視力を失ってしまう男性の友人役を演じ、サポートの仕方を学んだり、目が不自由な人の仕草を観察する機会があり、今作にも生かすことができました。さらに今作の演技のワークショップでは、目が不自由な方に協力していただき、普段どんな生活をしているのか、どんな気持ちでいるのか、詳しくお話を伺う機会もあったんです。そのおかげで、目が見えない人を取り巻く状況や環境をより深く理解することができました。

Namtan N’Filmの演じたMay(Metaweeの愛称)は、ただ目が見えないだけで、何でもできる。例えば、目が見える人でも、暗い場所に行くと何も見えなくなりますよね? それと一緒です。だから、目が見えないから何もできないと思われたくない人や、特別扱いされたくない人もいる。今作では、そういった方々の想いも表現しています。
Film (深くうなずいて)役作りにも、いつも以上に時間をかけました。目が見えるのと見えない状況では、何かに触れた時の感覚一つをとっても異なります。そのため、全ての動作や表情に細心の注意を払って、丁寧に演じました。
Namtan Namtanが演じたのは、双子のAi-oonとOaboom。過去に『Who Are You』というドラマでも双子を演じたことがあるので、技術面ではそれほど難しくなかったです。一方で、視聴者の皆さんに「また双子を演じるの?」と思われてしまう可能性があった。前に演じた双子とは別人になり切るために、今作で演じるキャラクターの理解をしっかり深めることに注力しました。

――喧嘩っ早いけど心優しいAi-oon、祖母を安心させるために優等生を貫くOaboom、正義感の強いMay、愛情表現豊かで明るいJan、愛する人を徹底的に守ろうとするPloyなど、個性豊かな女性が登場する本作。ご自身と性格が最も似ているキャラクターは?
Namtan アユタヤに住んでいた学生時代のNamtanは、Ai-oonに似ていると思います。今は……キャラクターそれぞれに似ている部分があるから、一人には絞れないな。人にはいろんな面があるし、時が経てば性格も変わる気がするから!
Film Filmの性格は、Ai-oonに近いんじゃないかな。何か問題があると一人で抱えてしまうんだけど、本当は誰かに話を聞いてほしいと思っているところが、特に似ていると思います。

――キャラクターそれぞれファッションのテイストも異なりますが、お二人は誰のファッションが好きですか?
Film Ai-oonのような、シンプルかつカジュアルで、動きやすいスタイルが好き!
Namtan Namtanも、Ai-oonのファッションが好きです。ただし、仕事に行くときは、もう少しきちんとした格好をするように心がけています。
Filmは初、Namtanは4度目!
日本ではショッピングを満喫

――お二人は、これまで日本を訪れたことはありますか? 今回の来日に向けて、楽しみにしていたことは?
Film Filmは初めて日本に来ました! 楽しみにしていたのは、やっぱりショッピング。いろいろ買ったけど、特にコスメやスキンケア用品をたくさん購入しました。日本といえば化粧品がとても有名ですよね? 私はSHISEIDOの美容液が大好きで愛用しています。It’s the best!!
Namtan 日本に来るのは、多分4回目だと思います。学生時代に友達と来たこともあるし、前回は家族と富士山を訪れました。楽しみにしているのは、渋谷でストリートブランドの服を買うこと。決まったブランドはなくて、ぶらぶら散策しながらショッピングする予定です。

――今回、タイフェスティバルのステージでパフォーマンスを行い、日本で初めてのファンミーティングも開催されました。日本で初めてステージに立った感想を教えてください。
Film 日本のステージに立てることがすごく嬉しくて、ドキドキしました! 日本のファンはとっても可愛いかった♡ いい雰囲気の中でパフォーマンスできて、最高な気持ちです!
Namtan Namtanは、実はちょっと不安だったんです。日本人はすごく規律正しくマナーがいいから、他の国のファンと比べて声をあまり出さないと聞いていたので、盛り上がるかな?って。でも実際は、すごくたくさん拍手してくれたり、声援を送ってくれたりして、最高にいい雰囲気でした。私たち以外のアーティストのファンもたくさんいて、みんなとっても盛り上がってた! 皆さんと幸せを共有できて、素晴らしい経験になりました。
Namtan&Film/Profile
Photos: Teppei Hoshida
Interpreter: Miwa Takasugi
Composition & Text: Ayano Nakanishi
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