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Starring 高橋一生&飯豊まりえ
マンガ家と編集者の奇妙な関係
実写版『岸辺露伴は動かない』の見どころは、露伴と担当編集・泉京香の軽妙な掛け合い。作中にて最高のバディを演じる、高橋一生と飯豊まりえが、本特集でも架空のマンガ家と編集者のストーリーを披露。最後まで読めば全く景色が変わる奇妙な物語、新作映画をめぐる特別対談とともに、お楽しみください。
マンガ家は待ち合わせに神経質?
未知の原稿への姿勢は近未来モード。

金の刺繍と純白のフリル、装飾の共鳴。

マンガ家
あのねェー 君 マンガ家との打ち合わせに「6分」も早く着くなんて編集者として礼儀知らずってもんじゃあないのッ?
編集者
早かったですかねぇ~ ウフフ それはそーとォ~先生 最新号の原稿は順調ですかぁ~?
マンガ家
フン 興味深いね… 君にはこれが捗(はかど)ってるように見えるのかい?
高橋 原作の「懺悔室」のエピソードは、初めて岸辺露伴をメインにして発表された作品です。ドラマに映画、これまで全10話やってきて、そろそろ「ここ」を行かないとこの先は語れないんじゃないか? というぐらい避けて通れない道ではありましたね。後は「いつやるのか?」という感じでした。
飯豊 今回またも映画化が決まったと聞いたときはびっくりしました。『岸辺露伴は動かない』はシリーズ作品とはいえ、特にロードマップがあるわけではなく、毎回「これで終わりなのかな」という感じでやってきていたので、また続編がやれると思ってなかったのが正直なところで。でも、映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の撮影でパリに行ったときに教会でリアルな懺悔室を見て、そこはやっぱり想像しちゃいましたね。
高橋 確かに「ニヤつき」はあって、「もしかしたら……」という思いは、一瞬去来しましたね。そうしたら今回本当に実現して、しかもヴェネツィアで全編撮影すると聞いて、ニヤけはサーッと引きました(笑)。
飯豊 これは大変だぞって。
「礼儀知らず」は「マナー知らず」?
正しいティーカップの持ち方くらいは心得ておきたいものだけど…。ボッテガ・ヴェネタのおそろいのボックスシルエットのジャケットスタイルで。マンガ家と編集者は唯一無二のバディ。互いへの信頼と協調が何より大切だ。


編集者
ところで 先生ェ ノド渇きませんか? ミルクティー入れたんですけど…飲みますゥ?
マンガ家
SPECIAL THANKS でも やっとエンジンかかってきたところなんだ 悪いけどそっちに置いといてもらえるかな?
編集者
オットォ 原稿にこぼしちゃったァ――っ……なぁ~んてねッ アハハハハ
マンガ家
君なあ────ッ!
高橋 (実写版『岸辺露伴は動かない』の露伴の担当編集の)泉くんは常に変わらず陽の存在としてそこにいてくれているので、泉くんが登場すると「照明」の質が変わるというか、「ハレーションを起こしちゃうんじゃない?」というような感じで、明かりがちょっと変わるんです。今回の泉くんの登場シーンはすごいですよ。「まぶしいの来た!」という感じで。
飯豊 あれは私も笑っちゃいました。
高橋 歴史あるヴェネツィアの街並みに、明らかに場違いなんだけれど、見ようによってはすごくなじんでいるとも言えて。ピンクの衣装と相まって、現れたときは明度がぐっと上がる感じで、改めてシリーズを通して、泉くんのこの明るさが露伴にとって救いになっているんだなと思いました。
飯豊 撮影現場では自分のシーン以外もいろいろ見学させてもらっていました。暗い中での撮影シーンもある中で、私の出番のときはすべてのライトが出動するんです。お祭りかってぐらいライトが出てきて(笑)。
高橋 本当に。発光しているみたいな感じでした、ずっと。
露伴と泉くんは決して「同意」しない ── 高橋一生
──露伴を演じるにあたって、ドラマ1期では「リアリティ」、2期では「あえてデフォルメ」、3期では「これが露伴か!? と思うくらい振り切った」と発言されていましたが、今作では何か新しい発見や気づきはありましたか?
飯豊 私は、露伴先生は一生さんの中で、もう一体化しているのかなと思っていて。すごくナチュラルで、本当に露伴先生なんです。今回の映画で田宮役を演じた井浦新さんは過去の実写版シリーズを観て、かなり研究して撮影に臨んだそうですが、「驚くぐらいナチュラルですね」とおっしゃっていました。これまでの露伴像から「こうくるだろうな」というのを予測してお芝居の準備をしていたのに、いざ現場に立ったら一生さんがもうそのまま露伴先生だったって。
高橋 たぶん自分と露伴がなじんできたんだと思います。これまでは、前作で課題になっていた部分を解消していくようなことをやってきたけれど、今回はけっこう「手放し」しています。特に「懺悔室」のエピソードは、シェイクスピアでいうところの道化だったり、狂言回しの役割を担っているのが露伴で、そこが面白さだったりするので、意識的にそうしました。もちろん露伴の矜持(きょうじ)が出てくる瞬間はあるのですが、それ以外のところは自然に露伴として対応しているというか、台本に書いてないこともその場の流れに身を任せてやっているんです。
飯豊 やってましたね。
高橋 その瞬間は「大丈夫かな?」と思うんですが、「いや、あれがベストだ」と思えるくらい自動的に振る舞えるようになっていて。不安を感じていないから、自然にやっていればこれまで以上の反応が出るだろうという思いはありました。
──露伴と京香の軽妙な掛け合いはもはや作品づくりに欠かせないものとなっています。バディとして完成されてきた感がありますが、演じるうえで心がけていることは何ですか?
高橋 露伴と泉くんの関係性の妙って、決して「同意することがない」点にあると思います。同意することがないんだけれど、結果的に同じようなところにたどり着いてしまう。そこが面白いところだなと。
飯豊 本当にそうですね。荒木先生が「富豪村」のあとがきで泉くんのことを「ムカつきながら描きました」とおっしゃっていましたけど、泉くんは露伴先生の話を聞いているようで聞いてない。全然かみ合ってないのに、なぜか逆にかみ合っちゃっているみたいなミラクルが起きるんです。
高橋 荒木先生は、泉くんはバディであると同時に、露伴にとっての悪役としての役割も担っていると語っていますが、キャラクターを含め、その作劇センスはやっぱりすばらしいなと思います。ただのデコボコで終わらない。そして、それをちゃんと受け継いで、実写で出力しようとしている脚本の(小林)靖子さんもすごい。
ミラクルが起きてたどり着いちゃう ── 飯豊まりえ
──実写版だけでなく、原作も含めて、露伴と京香のやりとりで印象に残っている場面はどこですか?
高橋 原作を読んでいて、「よし、きた!」と思うのが、泉くんが気を失うところ。そこからがだいたい勝負なんです。
飯豊 何ですか、それ(笑)。
高橋 例えば原作の「富豪村」でいうと、泉くんが気を失った後に「許してやってくれ」と頼む瞬間が来るんですね。やっぱりどうしても守らざるを得ない泉くんという存在があるからこそ、露伴が一瞬ぶれるし、そこから持ち直してからが露伴の真骨頂だなと。実写版では、これまでは人の形をした「人外」と戦うことが多かったのですが、今回は対峙(たいじ)する相手が思いっきり人間なんです。人がとてつもなく業を背負った状態で、それがともすれば怪異に見えるわけなんですけれど、人であることで明らかに「富豪村」のときの山の神とは次元が違うお芝居になる。そこは個人的にも面白い体験でした。
飯豊 私は、今作で言うと、露伴先生と離れて、ある人物と一緒にいろいろなところに行くんですね。違う意味で謎の解明をしていて、そうした場面で「これはテレパシーを使っているのかな?」みたいなミラクルが起きて、どんどん露伴先生のところまでたどり着いてしまうんです。その描き方はやっぱり面白かったですね。
高橋 そう、たどり着いちゃう。でも、今回はそのスピードがちょっとゆったりでしょう。
飯豊 出会うまで時間がありますよね。
高橋 いつもだと泉くんが何かしら話を持ちかけてくるところからドラマが始まるんですけれど、「懺悔室」の原作では泉くんは登場していないんです。原作だと懺悔が終わって、露伴が扉から外の様子をのぞいて、ゾッとして終わるんですが、映画ではそこから泉くんが物語に入ってくるんです。しかも、いつもどおりの泉くんのままで。そこは本当に靖子さんの手腕だと思います。
飯豊 いつもどおり(笑)。なじまないんです。ずっと異物みたいな。
高橋 狭い運河をモーターボートでやって来ますからね(笑)。



© LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
原作版でも天然でたびたび露伴をムッとさせている京香。ただ、彼女なりに編集者としての使命・役割を全うしたうえでの行動である場合も。それにより涙目になったり激高したり、敵に必死に嘆願したり…と、露伴の意外な人間味が浮かび上がる。
天然&マイペースな担当編集に振り回される少女マンガ家の「受難」は続く…?

編集者
先生 原稿ありがとうございましたぁ 今月も大傑作ですゥー 特にヒロインのピンク&ダークな心理描写 最高でした♡ じゃっ! ぼくはこれで失礼しまァーす
マンガ家
おいおいおいおいおいおいおいおい 君 この後 あたしと 次の読み切り46ページの打ち合わせするんじゃあなかったのォ──っ?
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
5月23日ロードショー

特殊能力を持つマンガ家・岸辺露伴は、取材旅行で訪れていたイタリア、ヴェネツィアの教会内にある「懺悔室」である男の「告白」を聞くことになる。それは、25年前の恐ろしい出来事だった―。
出演:高橋一生、飯豊まりえ、玉城ティナ、戸次重幸、大東駿介、井浦 新
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:渡辺一貴 脚本:小林靖子
© 2025『岸辺露伴は動かない 懺悔室』製作委員会
© LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
「編集者」役を演じたのは…
Issey Takahashi
俳優
1980年生まれ、東京都出身。映画やドラマ、舞台などで幅広く活躍。近年の主な出演作に『ブラック・ジャック』(24年/テレビ朝日系)など。『連続ドラマW 1972 渚の螢火』(WOWOW)が今秋放送予定。
「マンガ家」役を演じたのは…
Marie Iitoyo
俳優・モデル
1998年生まれ、千葉県出身。2012年の女優デビュー後、数多くのドラマや映画に出演。小学館『Oggi』専属モデル。近年の主な出演作に、『岸辺露伴は動かない』シリーズ(20〜24年)、『何曜日に生まれたの』(23年)主演、『オクトー〜感情捜査官 心野朱梨〜』シリーズ(22・24年)主演など。
Models:Issey Takahashi Marie Iitoyo Photos:Saki Omi[io] Hair&Make-up:MAI TANAKA[MARVEE](for Mr.Takahashi) AYA(for Ms.Iitoyo) Stylist:Takanori Akiyama[A Inc.](for Mr.Takahashi) Megumi Yoshida(for Ms.Iitoyo) Interview&Text:Masayuki Sawada
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