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「マンガの奥深さをゼロから描く。
無気力主人公の異色な成長譚」

『ウリッコ』1〜2巻
原作:殺野高菜 漫画:大森かなた(講談社)
ネットカフェで自分を売って違法に生計を立てる主人公・キズミは、日々訪れる客との会話や店内で観賞できる漫画・映画などをヒントに自らも漫画を描き始め―。アプリ『コミックDAYS』にて連載中。
マユリカ・中谷のマンガは、ずっとトモダチ
学生時代に漫画の新人賞に応募したこともあり、漫画家志望のキャラが登場する作品が好きです。特に最近はサスペンス要素が加えられているなど、異色な作品が増えてきているので追いかけてしまいます。
『ウリッコ』はそんな“漫画家漫画”の中でも、ひときわユニークな作品。主人公は歌舞伎町のネットカフェで自分を売って違法に生計を立てているキズミ。知識もお金もない彼女が、ひょんなことから「儲かりたい」という動機で漫画を描き始める。それだけ聞くと人生の逆転を夢見て必死に作品に向き合うストーリーを想像しますが、実際のキズミは「時間潰しのウサばらし」だと淡々としている。その“低体温”さにむしろ令和らしいリアリティを感じますね。
キズミがエンタメをほぼ知らない中で作品をつくるという設定も斬新。ネットカフェで観賞できる漫画や映画をもとに“面白さ”などの概念をゼロから言語化していくのですが、ストーリーを練ることは恐らく多くの人になじみがない行為だから、ある意味ですごく読者目線の作品と言えます。
登場人物の“解像度”の高さも見どころ。特に編集者の干隈の威圧感や、なぜかやたらカレー好きなところに「本当におりそうやな」と思わせる説得力がある。彼の登場シーンでは僕が学生時代、編集者に原稿を読んでもらったときを思い出しましたね。僕の担当は優しい人でしたけど......(笑)。それ以外にも、キズミが歌舞伎町で出会う個性的な人たちも、想像だけではきっと描写できないリアリティがある。原作者の殺野高菜さんの取材力に驚かされます。
僕にとっての漫画は、お笑いより前に他人から「面白い」と言ってもらえた大切な存在。キズミも今後どう評価されて描くことの奥深さに気づくのか楽しみです。

©殺野高菜・大森かなた/講談社
無気力だったキズミは徐々に漫画の世界へのめり込む。

Nakatani
2011年に相方の阪本と、お笑いコンビのマユリカを結成。ポッドキャスト番組『マユリカのうなげろりん!!』が大人気。自らも漫画を描いており、『シャンプーハット』が小学館新人コミック大賞の佳作を受賞。
Text:Koki Yamanashi
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