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累計発行部数、実に3,000万部以上。藤本タツキ原作の異色コミック『チェンソーマン』。TVアニメ放送を経てシリーズ屈指の人気エピソード「レゼ篇」がついに9月19日より劇場公開される。本作のキーパーソン、レゼとの出会いを発端に紡がれる新たな物語とは? 制作陣の要である𠮷原達矢監督・中園真登副監督の対談を皮切りに、キャストの証言を交えながら、世紀の怪作『チェンソーマン』の魅力に迫ってみたい!
チェンソーマン、新解析
TVシリーズで、かつてないハイクオリティなアニメーション制作の一翼を担った𠮷原達矢と中園真登が、劇場版で監督、副監督としてタッグを組み、『チェンソーマン』の世界をさらに拡張させている。

劇場版『チェンソーマン レゼ篇』より。主人公・デンジ。死後、チェンソーの悪魔・ポチタと契約し、チェンソーマンとして蘇る。公安のデビルハンターとして悪魔と戦う。
「デンジやレゼをはじめ、ある種変人な各キャラクターの裏に隠れたかわいい要素を引き出し、シリアスなシーンとの高低差をつけることで『レゼ篇』の魅力を底上げしています。デンジ役の戸谷(菊之介)さんとレゼ役の上田(麗奈)さんには、当初のお芝居よりピュアさを出すために、『チェンソーマンを演じるときはもっと頭の中を空っぽに』『デンジと話すレゼは陽気な感じで』というニュアンスでお願いしました」(𠮷原)。


作中、デンジが雨宿り中に出会う少女・レゼ。
「デンジとの関係が物語の鍵になるので、レゼは“誰もがまず友達になりたい”と感じられる魅力的なキャラクターを意識して演出しました。レゼの背景を知った後、改めてデンジとの和気あいあいとした序盤を観ると、1回目とはまた違った楽しみ方ができます。観賞後、この2人をもっと好きになっていると思います」(中園)
アニメーター・演出家
𠮷原達矢/Tatsuya Yoshihara
数々の作品でアニメ監督、演出を手がける。近年の作品に総監督を務めた『ブラッククローバー』(2017〜21年)や監督作『杖と剣のウィストリア』(24年)など。TVシリーズ『チェンソーマン』にアクションディレクターとして参加し、第4話、第10話の絵コンテ・演出やアクションシーンの原画などを務めた。
演出家
中園真登/Masato Nakazono
現在は主にMAPPAが制作する作品に関わる。『呪術廻戦』では、TVアニメシリーズで絵コンテ・演出に、劇場版で原画に参加。TVアニメ『チェンソーマン』でチーフ演出・絵コンテを経て、TVアニメ『忘却バッテリー』で初監督を経験。
無音と、音が音になる瞬間との
間を探った
牛尾憲輔(音楽担当)
―作品に奥行きを生み出す重要な要素のひとつに音楽があります。牛尾さんが『チェンソーマン』のTVシリーズの音楽を初めて手がけた際、「原作の持つカオスな感じを音楽に落とし込んだ」という話をされていましたが、今回の「レゼ篇」の音楽はどのようなコンセプトで進めていったのですか?
牛尾 カオティックなムードは『チェンソーマン』の根底に流れているものだと思うので、そこは今回もベースにしています。一方で、「レゼ篇」は『チェンソーマン』でも屈指のエモさがあるというか、感情的で情緒的で叙情的なストーリーなので、今回、音楽をやるにあたっては「劇場映画なので大編成のオーケストラをやりたい」という話をまず最初に𠮷原監督としました。血しぶきが飛び散って、人がどんどん死んでいく。そういう『チェンソーマン』の持つめちゃくちゃな部分はちゃんと大事にしながら、レゼとデンジくんの絶妙な恋愛感情をオーケストラでダイナミックに表現したり、そうかと思えば2人の心情に寄り添ったクローズアップの音楽は小規模なクインテット編成でやったりして、とても面白くて実験的なこともできました。本当に繊細な、それこそ無音と、音が音になる瞬間との間みたいなところまで探っていくことができたので、結果的にエモーショナルな部分を花開かせることができたのではないかと思っています。

公安対魔特異4課に所属するデビルハンター・早川アキ。デンジの先輩。本作では天使の悪魔とタッグを組む。
―テレビと映画ではやはり音づくりにも違いが出てくるのですか?
牛尾 出てきます。テレビはどうしても繊細な音を聴かせるのが難しいです。でも、映画館は低音から高音、小さな音から大きな音まで、たくさんのスピーカーで楽しめますし、いいスピーカーで聴くから、繊細な音が出せます。映画って大きい音を出すイメージがありますよね。デカい音でドカーンと聞こえると、たしかに大迫力でかっこいいですけど、実は小さい音がちゃんと聞こえることがポイントなんです。実際、ここ10年、15年くらいで、映画館を含めた音響環境がすごくよくなっているんですよ。何がよくなっているかというと、専門用語でS/N比(音楽を再生した場合に必要な音楽信号と不要な雑音とのレベルの比を示す値)というのですが、無音のときにサーッという電気のノイズがあんまり聞こえなくなってきているんです。これはライブの現場でもそうで、ノイズが少なくなっているから、小さい声で歌っても大きな音で聴かせられる。囁くように歌っても、爆音でノイズなく聴けるのは音響技術が進化したからで、そういうことが映画でも起きているんです。いい時代になりました(笑)。

本作の敵であるボム。
―「レゼ篇」の音楽で最初にできあがったのはどんな曲だったんですか?
牛尾 公式ティザーPVで使っているピアノ曲ですね。お花畑の中で寝そべっているレゼから始まる映像です。予告編と本編の音楽って全然違うものになったりすることもあるんですけど、このとき作った曲は𠮷原監督もすごく気に入ってくれたので、そのままメロディを使ったり、ティザーでは見送った曲が本編のオーケストラ曲にもなったりしています。

内閣官房長官直属のデビルハンターであるマキマ。デンジ、アキの上司にあたる。本作ではデンジとのレアなデートシーンも披露する!?
―個人的に面白く仕上がったなと思う曲はどれですか?
牛尾 もちろん40人以上での大編成オーケストラの魅力は抗えないですし、腹の底から響くような低音も最高なんですけど、やっぱり小さな音を聴いてほしいなと思います。今はまだ仮タイトルで、あとで曲名を変えるかもしれませんが、「Reze」という曲があって。この曲はすごく繊細な音に挑戦しており、あまり一般的ではない奏法を重ねてやっているので、ぜひ映画館で聴いてほしいです。家とは比べものにならない音響で体感してほしいですね。
音楽家/プロデューサー
牛尾憲輔/Kensuke Ushio
2008年にソロユニットagraphとしてデビュー。リミックス、プロデュースワークをはじめ、CM音楽も多数手がけるほか、電気グルーヴのライブサポートメンバーとしても活動。近年手がけた劇伴音楽は『平家物語』『僕の心のヤバイやつ』『チ。-地球の運動について-』『ダンダダン』など。
劇場版 『チェンソーマン レゼ篇』
悪魔の心臓を持つ少年・デンジは“チェンソーマン”として公安対魔特異4課に所属するデビルハンター。憧れの上司マキマとのデートに浮かれるデンジだったが、雨宿り中に謎の少女レゼと出会う。
監督/𠮷原達矢 脚本/瀬古浩司
原作/藤本タツキ(集英社)
制作/MAPPA 配給/東宝
Interview&Text:Hisamoto Chikaraishi[S/T/D/Y] Masayuki Sawada
© 2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト
©藤本タツキ/集英社
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