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「初めてのヴィンテージは、リーバイス®501®のビッグE」デニムに人生を捧げる男、ベルベルジン代表 藤原裕インタビュー

「初めてのヴィンテージは、リーバイス®501®のビッグE」デニムに人生を捧げる男、ベルベルジン代表 藤原裕インタビュー

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今年で25周年を迎えた原宿の老舗ヴィンテージショップ「BerBerJin(ベルベルジン)」の名物ディレクターである。またの名を「デニムに人生を捧(ささ)げる男」。ヴィンテージへの愛情と造詣の深さは他に並ぶ者がなく、その圧倒的な知識と信頼度は業界随一を誇る。現在は、デニムのスペシャリストとして各種メディアに登場し、話題のブランド「New Manual」のディレクションを手がけるなど、活躍の場は多岐にわたる。近年のヴィンテージブームの大立役者であり、デニム人気を支えるこの人にインタビュー。

 

藤原 裕さん

藤原 裕さん

BERBERJIN DIRECTOR / YUTAKA FUJIHARA

1977年、高知県生まれ。原宿のヴィンテージショップ「BerBerJin」のディレクター。その知識を生かしてヴィンテージデニムアドバイザーの肩書を持ち、商品プロデュースのほかに、YouTubeチャンネルでの配信やファッションメディアでの連載も人気。2022年春より「New Manual」のブランドディレクターに就任。著書に『日本人が見出したヴィンテージの価値 教養としてのデニム』、リーバイス®の501XXをまとめた『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』などがある。

 


初めてのヴィンテージは、リーバイス®501®のビッグE

――ヴィンテージデニム界でその名を知らぬ者はいない藤原さんですが、そもそもファッションに興味を持ち始めたのはいつ頃なんですか?

たしか中学1年か2年のときにリーバイス®501®のブラックジーンズを買ったことがあって、それがファッションというものを意識した最初だったと思います。ヴィンテージに興味を持つようになったのは高校に入ってからですね。サッカー部の1個上の先輩に、ヴィンテージのジーンズとかナイキのスニーカーをたくさん持っている、ものすごくおしゃれな人がいて。その先輩の影響で古着屋さんを回り始めるようになって、そこからヴィンテージの世界にハマっていきました。初めて買ったヴィンテージは、リーバイス®501®のビッグEです。高校2年のときでした。

――BerBerJinで働くようになったのは、どういう流れだったんですか?

高校卒業後は上京して、最初は早稲田にある印刷会社で働いていました。仕事が終わると古着屋を回って、週末はフリマ巡りという感じで、給料はほぼすべて古着につぎ込んでいましたね。ただ、このままでは自分が腐ってしまうと思って、1年ぐらいでそこは辞めて。やっぱり古着屋で働きたいなと思ったんですけど、なかなか希望どおりにはいかなくて、しばらくはプータローみたいな感じで、原宿のキャットストリートで路上フリマとかしていました。あるとき、そこで知り合った人から「いい古着屋ができたよ」と言われて連れていってもらったのが、当時竹下通りの1本裏に入った原宿十貨店というビルにオープンしたばかりのBerBerJinだったんです。BerBerJinのオープンは1998年3月で、僕が行ったのは4月の終わり頃。それからしょっちゅう通うようになって、1周年のパーティにも呼んでもらって、そのタイミングで「働かせてください」ってお願いしたら、「移転するからもう少し待って」と言われ、今の場所に移転するタイミングで正式にメンバーとして働くことになりました。

 


17年前に買い逃したLeeのワンポケットのジージャン

――近年、ヴィンテージブームといわれるような状況が続いています。どういう理由があるんですか?

これは僕の見方ですが、ヴィンテージに関しては、第1次ブームというのが1995年から97年頃にあって、第2次ブームが2010年の前半ぐらいにあって、今は第3次ブームだと考えています。その中でも今が一番過熱していて、値段も一番高いです。1,000万円の値段がつくものがありますし、それが売れますからね。

――すごいですね!

もともとヴィンテージの文化は日本人がつくったもので、それが世界共通になっていきました。だけど、アメリカとかに行っても、日本みたいにこんなにセレクトされている古着屋はまずありません。だから、海外のヴィンテージコレクターがやってきて買っていくという流れがあったわけですが、そこにコロナ禍が起きて、いろいろな制限が課せられていく中で新たな投資先としてヴィンテージに注目が集まり、さらに高騰していった感じですね。この状況はあと5年ぐらいは続くと思います。まだ日本の国内にいいヴィンテージは残っていますし、海外からも入ってきているので。ただ、その先はどれだけいいヴィンテージが残っていくかですよね。デッドストックのジーンズがこれから増えることなんてないですから。

――藤原さんはヴィンテージデニムアドバイザーという肩書も使っています。何がきっかけだったんですか?

2015年にリーバイス®の501®の本(『THE 501®XX A COLLECTION OF VINTAGE JEANS』)を作らせていただいたことがあって、それがきっかけで海外の方から評価していただいたり、インスタのフォロワー数もけっこう増えたんです。こんなふうに自分の持っている知識をもっと生かせたらいいなと思っていたら、たまたま僕の地元の高知で「JOHN MUNG DENIM PROJECT(ジョン万デニムプロジェクト)」というのをやるから手伝ってほしいと言われ、自分の役割をわかりやすくするためにヴィンテージデニムアドバイザーという肩書をつけたのが始まりです。そのほかに今は「YANUK」「CITEN」「New Manual」というブランドでもデニム作りに携わっているんですけど、BerBerJinだけではなく、別のところで仕事をさせていただける時間がありがたいことに増えてきましたね。

――誰よりもヴィンテージを見ているし、そこに対する信頼ですよね。

希少なヴィンテージを誰よりも見てきた自信はあるというのはよく言っているんですけど、それだけじゃなく、僕の場合、実際に着ているんです。どれだけ高額でも、入ってきたものは必ず試着しています。やっぱり着てみないとサイジングとか微妙な形状はわからないじゃないですか。僕は、袖を通した瞬間に「これは46だな」とか「48だな」というのがわかるし、それだけ体感している自信はあります。

藤原 裕さん ベルベジン

「希少なヴィンテージを 
誰よりも見てきた自信はある」

――これを手に入れたら、もうOKというアイテムってあるんですか?

なにげに僕、ジージャンのほうが好きで、リーバイス®に関してはファースト、セカンド、サードという定番は持っていますし、納得いくものはほとんどすべて手に入れているんですけど、17年前にLeeのワンポケットのジージャンを買い逃したことがあって、それが今でも心残りですね。そのジージャンが手に入ったら満足ですかね。とはいえ、こういう業界で働いている以上、終わりというのはなくて、常に買い物はし続けないといけないなって思います。さすがにレアアイテムは簡単に見つからないですけど、ひと目ぼれみたいな感じで今でも月に何着かは買っていますね。うちのスタッフにも「買い物をしない人はお客さまに何も伝えられない」ということはよく言っています。無理して買う必要はないけれど、うわべだけの情報には説得力がないですから。

――ちなみに、Leeのジージャンはどうして買い逃してしまったんですか?

真っ紺紺で42という大きいサイズで、試着したらもうぴったりだったんです。社長に「これ、欲しいです」と伝えたら、「いくらつけるの?」と聞かれて、「120万円ですかね」と答えたら、「だよな」って。そこで60万円とか言ってくれないかなと期待したんですけど、そんなわけもなく…。120万円は当時の僕の年齢じゃ買える金額ではなかったので、最終的に顧客さまが買っていきました。今は400万~500万円ぐらいすると思います。だから、もう買えないですよね。でも、もし古着の神様がいて、同じものが120万円で出てきたら、何としてでも絶対に手に入れると思います(笑)。

――古着の世界ってそういう巡り合わせがあるんですか?

巡り合わせはあると思います。自分が欲しいと思っていたものってわりかし手に入っているんですよね。実は今着ているこのLeeのカバーオールも、第2次世界大戦中の大戦モデルといわれるものなんですけど、斜めの位置にポケットがついているんですよ。この斜めの2ポケがもうまったく出なくなってしまって。欲しいなと思っていたら、先月ぽろっと手に入ったんです。この間の25周年のイベントのときに着ようかなと思っていたんですが、リーバイス®の本社の人たちが来ていたので、ちょっとLeeは着られないなと思ってやめました(笑)。

 


実際に現物を見て、とにかく試着をする

――買えなかった後悔ではなく、手放してしまって後悔しているものって何かありますか?

ありますね。僕は「Tバック」と呼んでいるんですけど、リーバイス®の大きいヴィンテージのジージャンに見られる仕様で、生地の取り都合によって背中のハギがT字に見えるものがあるんです。僕が初めて買ったときは、誰もこんなサイズ買わないよって感じで3万円だったのが、今はとんでもなく値段が上がっています。そのTバックを10枚集めるのが僕の目標で、頑張って集めて6着までいったんですけど、「売ってくれ」「売ってくれ」の声がすごくて。売るつもりはまったくなかったのに、ものすごくお世話になっている人から「それいいな。売ってよ」と言われて、何度も言われるから泣く泣く手放すことにしたんです。そのときは60万円で売って、今はたぶん250万円ぐらいになっていますね。それも含めて、後悔しています(笑)。

――ヴィンテージに興味を持った読者がこれから掘っていこうと思ったら、どういうことをすればいいですか?

今の若い人たちって、古着をファッションとして取り入れて楽しんでいる感じがすごくあるので、そこからヴィンテージに興味を持つ人は多いと思います。僕の年代のヴィンテージといえばやっぱり70年代以前のものになりますけど、今の若い人たちにとっては90年代も十分にヴィンテージです。最近は90年代ファッションがブームというのもあるので、もし90年代のものに興味を持ったなら、そこからもう少しだけ掘り下げていくと、それが生まれた背景やつながりとかを知ることができて、どんどん面白くなっていくと思います。あとは実際に現物を見ることですね。さっきも話しましたように、とにかく試着をすることです。着ることで「これは絶対に手に入れたい」という気持ちにもなるし、逆にすごく欲しかったけど、着てみたら似合わなかったということもあって、そうなれば諦めもつくじゃないですか。

――ほんと、そうですね。

ヴィンテージは試着できないと思っている人は多いですけど、きちんと扱っているお店であれば問題ないですし、洋服なのでやっぱり試着をしないとわかりません。古いものをちょっと見てみるという意識を持って、いろいろなお店に行って自分なりに覚えていけばいいと思います。うんちくが聞きたいんだったら、僕に聞いてくれたらいくらでも教えますよ。

――そんな気軽に話しかけていいんですか!?

もちろんですよ。僕も若い頃、いろいろな古着屋さんに行きましたけど、「いらっしゃいませ」もなく、店員さんがすぱーっと店の中でタバコを吸っているようなお店はけっこうありました。怖いから、「試着していいですか」のひと言がなかなか言えなくて。今はそんな古着屋さんはないと思うので、お店の人と話して、試着させてもらって、たくさんいいものに触れたほうがいいと思います。僕は学校の勉強は苦手でしたけど、それこそ古着の年代だったり、うんちくだったりはいくらでも語れます。そういう知識が少し加わると洋服を買う楽しみは増えますし、結果的に自分の価値観も上がる。いろいろなお店に行って、どんどん試着してみてください。

 

Photos:Teppei Hoshida Composition & Text:Masayuki Sawada

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