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先日MRIを受けてきた。知人が脳腫瘍を患ってしまい、「自分も診てもらおう」と世紀の大決心をしたからである(知人は治りました)。「大決心って、洋ちゃんそれまた大袈裟な」と笑うであろう。白状しよう。私はビビリだ。熱が出れば「最後の頼みだ」とメンバーにメールをする。そんな私がMRIを受診し、診断結果を聞く。意を決しでもしないと不可能だ。
というわけで、先日脳外科に出向いたわけだが。摩訶不思議な経験だった。まず金属類をすべて外し、MRIの部屋に通される。そこには2㎡ほどのスペースに円筒があった。そしてその穴の中に吸い込まれていく寝台が置かれていた。「オ○ホール…?」、例えが悪いのは承知のうえだが的確なはず。近未来的な空間であるが、絶望的に無機質だ。何より不気味なのが「音」。脳外科に入ったときから鳥のさえずりが聞こえる…と思っていたら正体はコイツだった。「チュングッ、チュングッ」。看護師は私を寝台に寝かしつけ、頭をスポンジのようなもので固定し、ヘルメットを装着(まるで『時計じかけのオレンジ』のアレックスだ)。そして「5分間の撮影が始まります。大きな音が鳴りますが動かないでください」と言った。そして緊張と不安の波長が完璧に合わさったとき、MRIが始動した。
「ガコン、ガコン、ウィ〜ン」⁈
「コンコンコン…ポンポンポン…トントントン…」…?
「ガチャン、ポピュゥーン、ガチャン、ポピュゥーン」…。
「チャンカ♪ チャンカ♪ チャンカ♪」
ちょっと待て。コイツは俺を笑わせようとしているのか? これが5分間も続く? 嘘だろ? 助けてくれ。そんな私の願いは虚しく、完璧なまでに無機質なMRIは容赦なく「めちゃんこ面白い音」を放ち続けた。5分間。私はよく耐えたと思う。撮影は問題なかったと言われたので静かな達成感がわいた。
しかし、診断結果である。正直MRI自体は、「めちゃんこ面白い音」のおかげもあって、つらくはなかったが問題はここだ。待合室で待たされる。泣こうがわめこうが結果はもう出ている。まだ本人に届いていないだけで、この世に産み落とされた事実は覆しようがない。映画を観に行けばよかった。買い物に行けばよかった。と、頭の中で押し問答していたとき、「川上さん」と呼ばれた。先生はマスク姿で表情は隠れていたが、外していたとしてもおそらく何を考えているかわからないタイプの人であった。それで、先生どうでした? 「まず、首ですが」。首? 脳は? 「首は大丈夫でした。若干曲がってますが問題ないです」。なるほど。ん、首「は」? 「それで脳ですがね…」と脳の写真を数枚画面上でスクロールし、じっくりと間をもたせてこう言った。
「問題ナッシング♪」
その後、私は昼間から山形牛A5ランクのサーロイン定食に食らいついた。健康万歳。皆さんも健康診断は怠らずに。
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